第24話 ---眞白side--- 一瞬

--眞白の思い---


高3の夏、いつものように2人で帰っていた。

いつも通る道だった。

すぐそばは車が絶えない道路だったけれど、歩道を歩いていたし、ガードレールもあった。


最初は並んで歩いてて、でも志保理のカバンについてた小さなぬいぐるみが落ちた。

それでそれを拾うために志保理は立ち止まった。

オレはそれを見たけど、すぐに追いついて来るだろうと思ってそのまま歩いていた。


その時、オレのすぐ後ろに、トラックが突っ込んできた。


志保理めがけて。



一瞬で全てが変わってしまった。



トラックは居眠り運転だった。

運転してたやつは過重労働で数日あまり寝てなかったと裁判で証言して、弁護士は非は会社にあるとかなんとか言っていた。


誰が悪いとか、誰に責任があるとか、そんなことより、目を覚まさない志保理を、昔みたいにいつも笑ってる志保理を返して欲しかった。


でもその望みはかなわなかった。


後になって、「あの時もう1分でも早く病院に搬送されていたら」って聞いた。

たったの1分が志保理の全てを奪ったなんて信じたくなかった。


オレがあの時、志保理を待っていたら、先にトラックにぶつかったのはオレだったのに。


オレだったら良かったのに。


そうしたら志保理は今も笑っていたかもしれない。



もう、今更何を言っても遅いけど。



それでも、ずっと志保理が目を覚ますことを信じていた。


また、オレに笑いかけてくれる日が来ると……

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