第22話 花束

ドアの前にいたわたしは、病室を出て来た眞白さんと目が合った。


「聞いてた?」

「いいえ。中の声は聞こえないですから」

「実習、何時に終わる?」

「多分、6時前くらいには終わります」

「今度は約束守るから。一番最初に会ったコンビニのところで待ってていい?」

「時間、遅れるかもしれませんよ?」

「いいよ、待ってる。すっぽかしてもいいし」

「行きますよ」

「うん、じゃあまた後で」


眞白さんは少し行きかけて、戻って来ると


「ごめん、これ、捨てといて」


そう言って、持っていた花束をわたしに渡して、エレベーターの方に向かって歩いて行った。


この病棟で何度も見た後ろ姿だった。

ほんの少ししかいない時がほとんどだったけれど、それでも、今日はなぜだか一番辛そうに見えた。




志保理さんのための花束。


行き場のない花束(おもい)は、あまりにも綺麗で残酷だった……

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