第6話 特別

午前中、天野のショッピングモールに行き買い物を済ませた後、午後になって東奈消防署に向かった。


東奈消防署の前で、誰に声をかけたらいいのか分からず、きょろきょろしていると、前を走っていた隊員の人が気づいてくれた。


「何かご用ですか?」

「あの、坂下さんいらっしゃいますか?」

「坂下は今日非番でいないんですけど、何かお伝えしましょうか?」

「でしたら、眞白さんはいらっしゃいますか?」

「眞白でしたらいますが、今出動していまして……待たれますか?」

「いえ、じゃあ、申し訳ないのですが、これを眞白さんに渡していただけないでしょうか。この前お借りした……」

「あ、帰って来た」



丁度、遠くから赤い車が、こちらへ向けて戻って来るのが見えた。



車が消防署の前に止まると、中からオレンジの活動服を着た眞白さんが降りて来た。



鮮やかな、オレンジ色。



眞白さんは、救助隊の人だった。



「眞白は救助隊の中でも、高度救助隊の所属ですよ」


隊員の人が小さな声で教えてくれた。



救助隊の中でも限られた人しかなれない、特別なオレンジ。



「ああ、未来ちゃんだ」


わたしに気が付いた眞白さんが笑いかけてくれた。



名前を、覚えていてくれていた。

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