12 プロボウラーははこ

 びゅうう、と、冷たい風が吹いた。


 ごう、とうなりを上げて氷の塊がたたきつけてくる。


 シマニャンはもう少しで翻りそうになるのをすんでのところでとどまった。みかりんは巨大バナナをその陰に移動させ、風をよけた。


 ―人間ごときが、小癪な


 魔人まぁじん凍るこぉるは言った。感情も抑揚も感じられない声。


「人間を侮るからこういうことになるにゃ」


 シマニャンが返した。


「お前は、北に帰るにゃ」


 ―黙れ!


 ごう、と細かい氷が舞った。シマニャンはそれをよけて上空に上がった。


 と。


 どうん。


 大砲の弾が魔人まぁじん凍るこぉるの脇をかすった。


 城の砲台からだった。


 魔人まぁじん凍るこぉるの目が鋭く光った。


「おのれ!」


 城の方向に指をさす。たくさんのつらら状の鋭い氷が城の方へと飛んでいった。


「ニワ!! ユーディ!!」


 チアリーダーあきこの悲鳴に、ぶんりんが不敵に笑った。


「あいつならこれをよけるくらい朝飯前だ。見たことある」


 そのときだ。


「もう、我慢なりません!」


 パッパラパッパッパー。


 ラッパの音がした。


 魔人まぁじん凍るこぉるの前に立つのはプロボウラーははこ。


「ははこ!」

「無謀だ!」


 かずりんとぶんりんの声が重なった。


「あなたに、わたくしたちを侮辱する権利はなくってよ!」


 魔人まぁじん凍るこぉるを強い視線でにらむ。風をよけながら、みかりんが斜め後方にバナナを移動させた。


―黙れ!


 魔人まぁじん凍るこぉるは両腕を振りかぶり、一気に下した。つららがははこめがけて飛ぶ。


「させるか!」


 ツキモリの両指から炎が吹き、ははこに届く寸前で溶けた。


 そこでチアリーダーあきこもプロボウラーははこにならんだ。そして、凍える口を開いた。


「がんばれ」

 ちゃちゃちゃ。

「イケイケ」

 ちゃちゃちゃ。

「勝てるぞ」

 ちゃちゃちゃ。

「がんばれ、ははこ!」


―黙れ!


 再びつららが飛び、それをツキモリの炎が溶かす。


―こざかしい!


 魔人まぁじん凍るこぉるが今度はツキモリ向けて氷を放った。


「させるかあっ!」


 みかりんが起用にバナナを操り、氷の攻撃をよけた。


「ははこ!」


 チアリーダーあきこの声。プロボウラーははこは小さく頷いた。


「ここで一句。


渾身こんしんの 一撃いちげきなりや ふきばし


わたしの渾身の一撃。喰らいなさい。吹き飛べ!」



そして左足を前に大きく踏み出し、ボールを持った右手を後ろに引いた。


―死ねえええっ!


 魔人まぁじん凍るこぉるが体を「く」の字に曲げて全身から氷を放った。


「負けるかあああアッ!」


 ツキモリの指が火を吹いた。それがボールを包み、燃え上がった。


 ははこの手を離れたボールはまっすぐに魔人まぁじん凍るこぉるの腹へと突っ込んだ。


―あうっ!


 魔人まぁじん凍るこぉるは悲痛な声を上げ、そのまま雪嵐の中に倒れた。


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