11 揺るがぬ想い
びゅうう。
激しい風が吹いた。
寒さが厳しさを増している。
その大きな雪嵐のかたまりが迫ってくるのを見て、下で構えていた兵士たちが悲鳴を上げた。
「撃て! ……撃てええええっ!」
ニワの号令に銃の引き金を引く。
けれども発射された弾は何かに当たることなく虚しく宙に放たれるだけだ。
城に近づくにつれ、嵐は大きくなり、中央にある人影がはっきりとした輪郭を持って現れた。
それは、全身を凍りに包み、大きな二本の角を持つ魔人の姿だった。
その姿を見たとたん、兵士たちは腰を抜かし、またある者はその場に凍り付いてしまうのだった。
「ユーディ、政務室へ」
ニワの言葉に、ユーディは答えた。
「まだです。わたしはまだ、何もしていない。ただ隠れているのだけは我慢なりません」
するとニワは表情を緩めた。
「大砲を取りに行くのだ。……銃よりはマシであろう」
ふたりは政務室へ急いだ。
前回のように、飾られている絵の中心を拳で殴った。
ウイーンという音とともに壁が開き、大砲が現れた。
「こんな大きなものが動かせるのですか?」
「全自動だ」
ニワは、ポケットから小さなリモートコントローラーを出して小さなスイッチを押した。再びウイーンという音がして、大砲が下の板ごと砲台の方へと移動していく。
そして、
「ここでお別れだ」
「ニワ宰相」
「お前はここに残るのだ」
もう一度ボタンを押す。
今まで大砲があった部分の床が動いた。その、一メートル四方の穴には階段がついていた。
「そこから地下へ行け。宮殿の書庫へとつながっている。階段の脇にスイッチがあるから、中に入ったらそのボタンを押せ。明かりがともり、天井はふさがれる。そこまでは
「わたしは行きません」
「ユーディ」
ニワはその美しい笑顔でユーディを見た。
「これは、命令だ」
「できません」
「できないというのなら、無理にでも従わせるまでだ」
ユーディの腕を取ったその時だった。
抱きしめられていた。
あっ、と思った時には唇をふさがれていた。
逃れようとするけれど、ユーディのその細いけれどもたくましい腕に押さえられ身動きが取れない。
先に顔を離したのはユーディの方だった。
その美しい目でニワを捕える。
「あなたを愛しています」
「しかしおまえは……」
「血筋が何だというのです。愛する人を一人、守り抜くこともできないでどうして国を守ることなどができるでしょう」
ユーディはまっすぐニワを見つめた。
「あなたを、守らせてください」
「しかし……」
「わたしが死んだら、その時にふさわしい者が国を治めればいい。国を導くことができるのは血の力ではない。人の力だ。そしてこの国には、その力ある者がちゃんと育っている。あなたがたが、育ててきたのでしょう?」
ニワは唇をかんだ。
ユーディはニワの手をつかんだ。
「さあ、行きましょう」
ニワもつられて歩きだす。
もう、抗うことはできなかった。
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