4 嫌な予感
ユーディは全身からフェロモンをまき散らしながらアサリーの屋敷を後にした。
暮れかかる空を見上げながら残忍にほほ笑む。
今日こそは、ニワ宰相を虜に……。
そのダイナマイトボディを思い出すだけで全身からフェロモンが漂い、背景にかぐわしいピンクのバラの花さえ飛ぶ。
風がユーディの頬をなでた。
油断していたのだろう。
「びえっくし」
とたんに背景にしょっていたバラが消えた。ユーディは改めて辺りを見回した。
「なんてことだ。このわたしが、加トちゃんのようなくしゃみをしてしまうなんて」
悩まし気に見せるその表情さえ、今日は一段と麗しい。
「びえっくし」
「このくしゃみをどうにかせねば」と深刻に考えつつ、ぶるっと大きく身震いをした。肩を縮こませたそのときだった。
「ユーディ」
通りの向こうから軍服姿のニワが大股で歩いてきた。
「宰相」
「またアサリーのところへ行っていたのか」
そのイライラした口調にジェラシーがにじんでいるのを感じたユーディは、胸の中で「うまくいきそうだ」と、ほくそ笑んだ。
今日こそニワ宰相を骨抜きにして、その体も金もコネもすべてわたしのものにするのだ。権力だけはまだ残して、そこからずるずると吸い取ってやる。
「宰相……わたしを探しに来てくれたのですね」
素早く駆け寄り、その細い腰を抱きしめた。
「おまえに……話しておかなければならないことがある」
その切なく見上げるまなざしを受け、
フェロモンスイッチ、オン。
と心の中でつぶやく。
とたんに背景にバラが飛び、得も言われぬなまめかしい香りが全身から漂った。
ニワは口を開いた。
「緊急事態だ」
「へ?」
「あれが……やってくる」
「あれ……?」
意味の分からないユーディがきょとんとしていると、
「行け! 早く!」
「ど、どこに……」
「魔法少女たちだ!」
どん、と、突き放され、そのまま背中を蹴られた。
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