5 こちらも腐ってます

 ちょうどその頃、森では。


「いったたたたた!」


 ツキモリは粗末なベッドの上で寝返りを打とうとして、思わず声を上げた。そばで看病しているみかりんが、


「おい、大丈夫かよ。ほんとにこんなんで襲撃なんかできんのかよ」


 おろおろと言った。


「あたくしが無理ならお前が一人で行け」

「ええー! なんでだよ! おまえが取ってきた仕事じゃねーか」


 ツキモリは弱音を吐くみかりんをぎろりとにらみ、


「仕方あるまい! すでにスズメをニワの元に送った。賽は投げられたのだ!」

「でも」

「いいか? 何事も最初が肝心なのだ。ガムは先日のジャイアント・タカヒト氏の襲撃で地下室の入場料でぼろ儲けした」

「でも、建て替えるほどの資金がある家は、この間全部ジャイアント・タカヒト氏が壊し尽くしただろ?」


 するとツキモリはにやりと笑った。


「まだひとつ、残っている。一番大きくて、一番修復に金がかかり、早急に建て直さねばならぬ建物が」

「それは……」


 みかりんがごくりと唾を飲んだ。ツキモリは笑いをかみ殺した。そこで思い当たったのか、はっと息を飲む。


「まさか……」

「今さら驚くこともあるまい」

「おまえ、復権を目指してるのか?」

「まあ別に、あの国には個人的な恨みも執着もないが、あえて言うならあたくしをここに追い出したニワには恨みがあるから仕返しして、ついでに復権したい」

「ついでに、って……女王のくせに、なんか小さいな」

「おだまりっ!」


 ここでじろりとみかりんに目をやった。


「力があるったって、結局金持ちどもの顔色うかがってばっかりで観劇とかショッピングも思う通りにできないし、仕事を誰かにやらせたら、すぐに自分に利権が向かうようにして裏切るから誰も信用などできぬ。あっちを立てればこっちが立たずで、めんどくさい。あたくしはただ、汚い金を集めて、その金を湯水のように使い、おもしろおかしく生きていたいだけよ」


「やっぱ腐ってんな」

「どうとでもお言い」

「だからおまえの在位中は国が混乱したのか」

「まあ、そういうこと。世の中が見えてなかった、ということよ」


 ツキモリは他人事のようににやりと笑った。

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