第1章 幼馴染と変な金髪のガキ
第1話
その週の日曜。
俺はふられ慣れているだけあり、その頃には佐藤さんにふられてズタズタになったメンタルももうほとんど回復してきていた。
昼時になると、寝間着として使っている中学のジャージのまま本屋へ向かい、俺は買い物を済ませた。
「あざーしたー」
店名のロゴが入った紙袋の中には、お馴染みの
前者の本に関しては、別にベストセラーとかでもないのにその本屋では平積みで売られている。しかもPOPに『今この店でイチバン売れてる恋愛指南書!』とか書いてあった。たぶんそれ買ったの全部俺だ。売り上げの冷え込む昨今の書店業界に少しでも貢献できて本当に誇らしく思う。
そして後者の漫画本というのは、今女子中高生の間で大きな話題となっており、最近映画化も決定した少女漫画だ。もちろん俺が欲しかったわけではなく、人から頼まれて買ったものだ。
と、ちょうど依頼人の家に着いた。インターホンを鳴らす。ピンポーン。
『はーい』
「俺」
『ん』
それから数分ほど待っていると、私服姿のめあが出てきた。
「ほら、買ってきたぞ」
「おっ、ありがと〜! 500円だよね、ちょっと待ってて」
「オイオイ何言ってるんだ」
「え……?」
「少女漫画をレジに持ってくのに消耗した勇気の分をプラスして、550円だ」
「ええ……そっちの紙袋に入ってると思われる本のがよっぽどレジに持ってくの恥ずかしいと思うけど……」
「な、なんだと……!?」
こいつ……俺のバイブルを、我が師・愛染恋之助先生を馬鹿にしやがって……。
俺が睨むと、めあはあきれたようにため息をついた。
「はあ。仕方ないから今回はわたしが折れてあげるよ。その代わり、明日の帰りわたしの荷物持ってよね」
「要求に要求を重ねるなよ……。まあいいや。そんじゃ、明日帰るとき俺の机の上にカバン置いといてくれよ」
「そんなのやだよ。変なことされるかもしれないもん! 一緒に帰ってわたしが監督しとくよ」
「なんだと思ってるんだよ俺のこと……」
つくづく失礼な奴だ。
めあはポケットから財布を取り出し、550円を俺に手渡した。まいどあり、と受け取る。
「……そういえばめあ、なんだかやけにキレイな格好してるけど、午後からどっか行く予定でもあるのか?」
「うんう、どこも行かないよ」
「あ、そうなのか。いや、なんか俺だけこんなんでちょっとアレかなって思って」
俺は自分のよれよれのジャージの裾を引っ張って苦笑いした。
「いいよそんなの。ふふ」
「そ、そうか」
「……」
「……」
「……」
「……どうしたそんなずっとニタニタして」
「べっつに! なんでもないよ」
「なんでもないならいいけど。じゃ、また明日」
「うん、またね」
そんなこんなで、明日めあの荷物持ちとして一緒に帰るという口約束だけをして、俺は室戸家を後にした。
……今思えばそういう結果になったことにあんまり納得いかないが、まあ、だからといってああだこうだ言うほどの重労働でもないし、俺は甘んじて受け入れることにしたのだった。
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