第10話 ダンジョン破壊活動【二人】
ぼうっ!
火炎弾によって、
聖なる火に焼かれれば、醜悪なモンスターは、断末魔の叫びをあげることすら許されない。
地面に落ちた魔石を魔石凝縮フラスコに詰めて、フラスコをパーカーの腹ポケットに収納する。
今日の狩場は、洞窟型の野良ダンジョン。路銀集めのため、俺とフォコは二人でこの場所に訪れていた。
ばしゅっ!
戦闘音につられてやってきたトゲ
「……そこそこ使えそうか?」
目の前で小刻みに震えているニードルボアを見て、俺はつぶやく。
新しく作った麻痺矢。麻痺毒をつくるのに必要な材料は、安価なものばかり。しかし、調合に時間がかかるうえ、毒無効のモンスターは少なくない。
「要検討……というより、複数はいらないかな……」
持っていける矢の数は限られる。複数効果の矢があれば混乱を招く可能性もある。作成時にはついテンションが高くなってしまうが、もう少し慎重に考えないといけない。
「フォコ! もう終わらせよう」
「試し撃ちは終わったのー?」
前方、声がギリギリ届く場所で火を吐くフォコに声をかける。
「ああ! だから、もう手加減はいらない!」
「おっけ〜」
気の抜けた返事が届く前に、俺はできるだけ後方に下がっていた。
ぼぼぼっ——フォコの口から、火の粉が溢れている。
ぼおおぉっ!!!
口を大きく開き、炎を解放する。
巨大な炎の波が、濁流のように洞窟を駆け巡る。炎に飲まれたモンスターたちは、のたうちまわる暇すらなく溶けていく。
数秒後、目の前には黒焦げになった洞窟の景色が広がっていた。
******
「これ、よろしくお願いします」
「あいよー!」
ギルドの換金エリアに『ゴブリンの魔石』と『ニードルボアの魔石』をいくつか置く。
正直、見た目の違いが俺には判別できないが、【鑑識の魔法】を持つギルド職員にははっきりと違いが分かるらしい。
【鑑識の魔法】は——持って生まれてくれば、一生食うには困らない——と言われるほど便利な魔法だ。実際、どの職種でも不足しており、求人界隈では引っ張りだこの状態であるらしい。
「30,000と459ゴールドな! 端数はどうする?」
「持ち越しでお願いします」
「あいよ!」
今回の討伐依頼報酬が、たしかそれぞれ5000ゴールド。
(思ったより稼げたな)
ゴブリンとニードルボアしか出現しない外れダンジョン。今日潜ったダンジョンはそんな評価がつけられていた。そのため、ギルドからも破壊許可が出ている。
この街の『母なる迷宮』が機能を失った以上、野良ダンジョンの破壊も制限される可能性がある。そうなる前に、姉妹たちにはできるだけ実践経験を積んでもらいたい。
ダンジョンに対しての恐怖は持っていた方がいい。臆病なことは、ダンジョン探索において、それは美徳と言ってもいいぐらいだ。
だが、これから先もダンジョンに潜り続け、冒険者として生きるなら克服しなければならない壁でもある。
(うまくいっていればいいんだが……)
もしものときは魔法も使っていいと言ってある。だから、命の心配はしていない。それでも、何が起こるか予想できないのがダンジョンだ。
数時間後、少女たちは笑顔で宿屋に戻ってくる。
俺の心配など不要だったことが分かるのだが、この時はそんなこと知る由もなかった。
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