episode 0-5 来訪
僕は、佐々木九九という男は苦手である。
彼は相手のことを考えず、軽薄で話すので不快な気分になる。将来にこんな奴が先輩とかだったりすると悲惨である。一回話しただけでこんな気持ちになるのは初めてでもある。
「おい、たけこ。聞いているか。無視すんなよ。」
偶然、彼と帰り道が被ったのではないか。まさか、家が同じったり…と考えていた。
「お前もまさか幽霊アパート住みなのか?俺も何だぜ。」
最悪の事に彼と僕の住む場所が同じだった。
「めちゃくちゃ無視すんじゃん。まあいいか、俺のこと苦手そうだし。ハハ。」
と彼は言い、隣の206号室に向かって行った。部屋に入る瞬間に彼は振り向いてこう言った。
「あーそうだ。お前にいうの忘れてたんだけど…夜には気をつけろよな。ハハハ」
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いつものルーティンを終えた自分はゆっくりと部屋で過ごしていた。
(もうこんな時間か。まあ寝るか。)
そう思いベッドメイクをしていると隣からドンドンと大きな音が聞こえた。
(おいおい、あいつ何やってるんだ。)
不愉快な音は、少しして聞こえなくなった。その途端、扉が開く大きな音が聞こえそれ以降は音が聞こえなくなった。
それから数分後。僕は嫌な予感と少し不審な気持ちになり、自殺谷の方に目を向けた。今日で何回目かわからないがまた人が落ちるのが見えたような気がした。
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昨日の出来事は通報しなかったが、気掛かりでしょうがなかった。
佐々木九九の住んでいる場所、僕と関わってきたこと、彼がこの学部でのいない存在であることなど多くのことが頭で錯綜していた。
この大学での行方不明の事件とその被害者の発言、事件後の死体は自殺にしか思えないところでもあるが上肢、下肢、体幹部と欠損している。ここにも順番の不可解感がある。寒いからと言って凍死という共通点もある。
また被害者自身の特徴を踏まえるとあるところが見えてきた。
事件性を考えると大学生が誘われ殺害される。殺害方法は、頭部への強打から低温による凍死で自殺に見せかける。四肢の欠損も動物がいるところに起きそれを誘い出す。
オカルト的に考えると幽霊なる大学生がある程度有名な大学生をその才能を羨み呪い殺す。
(オカルトかぁー。絶対信じたくないが、そう思った方がなー。オカルト的に考えると噂の男である佐々木九九は幽霊になるのか。馬鹿馬鹿しいな)
じゃあ次の標的は誰かだ。この学部には大体200人ぐらいの生徒数である。顔見知りであるのがほとんどである。
この学部の有名人は誰かというと、天才ギタリストの今井早苗、強靭な肉体を持つラグビーの日本代表選手にも選ばれた大和順平、モデルの赤井みくである。彼らのコミュニティに佐々木九九がいるという噂がある。
赤井みくに関しては、怖すぎて佐々木九九に対して、近づかないでと訴えたらしい。
その他の人たちも多くは関わろうとしなかったと聞いている。
(まあ僕が標的にはならんからいいけど…)
そう思っていると、いつの間にか大学の講義も終わりに近づいてきた。今受けているのは法医学という分野である。この分野の面白いところは、異状死の解剖をみるところである。異状死とは、病死以外の外因子で死亡した場合に判断される。例えば、一酸化炭素中毒での死亡において、ヘモグロビンにに親和性の高い一酸化炭素がくっつく事により主に脳への酸素供給ができず意識障害となる。それらの死体は真っ青にはならず、ヘモグロビンに一酸化炭素がつくので赤み帯びた皮膚で死亡する。他に例を出すと銃殺においてもガスの跡などからどの距離で撃たれたかなどもわかったりする。つまり、死体解剖において明らかに自殺に近いのか他殺に近いのかどのような死亡したのかわかるのである。
「……ということで、事件においてもよほどのことがない限りは自殺か他殺かはわかったりします。Take Home Messageはこれになります。課題がこちらなので、来週までに提出お願いします。以上で講義の方を終わりにします。」
バタバタと学生たちは帰りの支度をして帰宅して行っている。
考え事をしていたらいつの間にか講義が終わっていた。他の学生と同じように帰宅の準備をしていると後ろから聞き覚えのある声で話しかけられた。
「孟、今日は一緒に帰ろうぜ。」
そう元気よく五月雨悟が声をかけてきた。久々にあった気がするが、元気に過ごしているそうだ。
「帰るかー」
そう言って、一緒に教室を出て駅へ向かっていった。
電車の中で、悟は僕にお願いをしてきた。
「孟、頼む!!今めちゃくちゃ相談したいことがあるんだけどいいか?」
彼は少し申し訳なさそうな顔をしてお願いしてきた。佐々木九九と違って素直なところあるので同じようなノリのやつも関わりやすいと思う。
「なんだ?好きな子でもできたのか。ハハ、力になれるかな。お前も大学生だな。」
「ちげえよ、そんな相談なら経験0の孟に頼まないよ。」
「うるせえ、で何なんだ?」
「それが作品の相談したくて…」
五月雨悟は、芸術に才能がある。サークルで彫刻をメインに日々製作をしているらしい。彼からは何度も相談されているが今回はかなり真剣そうである。
「あーいいけど、この後すぐ帰りたいんだが…」
「うん。もしだよ。迷惑じゃなかったら…お前んちに泊まっていい?長くなりそうで…孟、一人暮らしだよね。」
「嫌だよ」
嫌である。
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「お邪魔しまーす。意外に綺麗にしてんだな。ここに荷物おいていいか。」
「はぁー。本当に今日だけだからな。」
「ありがとう。心の友だな。」
色々と会話しながら、僕は彼のために夕食含めて家事をこなしていく。
ルーティンをこなした後に、彼の相談になった。
「で、お前は何の相談したいんだ?」
「そうなんだけど、今彫刻でただ立った人を作ってるだよね。それで、その彫刻をどう表現するか相談したくて…」
「素人の意見なら何でも言えるから、それでいいかな。」
「マジで助かる。今、その彫刻の頭の部分の作成に難渋していて…人の人体構造とかって孟詳しいよな。どのくらいのサイズ感で骨格どうするのが自然かを聞きたいかしれない。他にもどういうことを意識すると頭いい感じの人間の頭作れるか聞きたいかも。」
「うーん…人体構造についてはこの解剖書見て参考にすると良いかな。性別と人種含めて題材は決まってるのか?やっぱり個人差が大きいからそこんとこときちんと整理した上で、その本参考にすると良いと思う。」
「ありがとう。」
「それで、頭いい感じか…難しいな。知的な頭っておでこひろいとか…」
「そうだよね…むずいな」
「頭だけでそれを表現するのって難しい気もするけど…例えば顔面の状態、感情を出すとかすると表現できそうだったり…」
「そうだよな。それだと俺の芸術に反するんよな。やっぱり、そこで表現したい。」
「そうか、僕じゃアドバイス難しいかもな。色々と考えとくわ。」
「ありがとう。また、助けてもら得たりしないか?」
「まあいいよ。付き合うよ。」
「本当にありがとうな。もし何かあったら俺も相談乗るから何でも聞いてくれよな。」
そう彼はいうと、大きなあくびをしている。
「そろそろ、寝ますか。」
「そうだな。」
ベッドメイクをして明日の準備をして寝ようとした瞬間にまた音が聞こえた。今回の音は生活音に近い。おそらく佐々木九九が家事をこなしているっぽい。前のような強烈な音は聞こえなかった。
「じゃあ、電気消すよ。」
「おうよ。おやすみな。」
「おやすみ。」
そう言って消灯した。
月明かりで明るい夜だった。ふと自殺谷を眺めると今日は何も影は見えなかった。
オカルト探偵 No.8 1+1≒2 @nekoneko0418
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