ディーテ王国は、唯一神を信奉し、聖女様とやらは、その唯一神の、妻にあたる存在なのだとか。

唯一神の愛を受ける事により、その身に神の力を宿し、国に加護をもたらす。

まあ、ざっくりいえばそんな感じの宗教が、この国のメインの宗教だとか。


「実際に神の力を身に受けるのは聖女様だけで、聖女様の暮らしを支え、手足となってこの国すべてに、その祈りの加護を満たす実務を行うのが、神官たちだ。司祭は、一般の人々と、神官をつなぐ橋の役割をする」


ダンテは、銀の刺繍が首元にほどこされた、上等の魔術師のローブに、いつもはボサボサのまま、櫛も通さない上に、魔術で使うので、あちこち長さもそろっていないその美しい銀髪をなでしつけて、紺のリボンで一つにまとめて、いい男っぷりだ。


(尚、ちょっとほめてやったら、この紺のリボンは、ベアトリーチェが着けていたもので、ああ愛しいベアトリーチェ、なぜ、なぜに私の元を去ったのだ、と非常に鬱陶しかったので、ほめてやった事を大いに後悔したものだが)


カロンもいつもは少年のような恰好をしてダンテのお使いばかりしているが、ダンテと同じローブの魔術師の装いで、その金髪をきっちりと後ろのなでしつけて、まあかわいい貴族のおぼっちゃまのごとくで、眼福。


(それに比べて、なんかねえ・・)


ダンテの外国の客人だという扱いのミシェルは、一応魔女の見習いの占い師という事で、魔術師のように華やかなローブは着せてもらえず、黒いコートに、黒いワンピースに、フードまでかぶらされて、ちょっと不満だ。

この煌びやかな美しい二人とならぶと、男受けがいいという理由だけでのばしていた綺麗な黒髪も、地味で、魔女っぽくて、なんだかこれじゃない感がでて、不満だ。

近衛の騎士は、この天使のごとくカロンがいうには、大変な美貌だというではないか。

美貌の騎士の前に、こんな地味な恰好で出向かなくてはいけない事に、ミシェルは大変不満だ。


「あ!お前あの赤い靴はいてきたのか、黒にはきかえろ!これでは魔女見習いにみえないではないか」


魔女はとりあえず、全部黒の服、という事らしいので、ミシェルはカロンに用意してもらった服の中で、黒いシルエットの緩いワンピースをしぶしぶと選んだのだが、靴に関しては何も言わなかったはずだ。ならいいじゃないか。というミシェルの小さすぎる反抗だ。近衛の騎士が、ミシェルの靴なんかに興味はないだろうが、気持ちの問題ってものがある。


異世界に飛ばされる前に、上司にこの靴の事で嫌味をいわれた事を思い出して、ミシェルもムキに反抗する。


「いやよ、なにもかも全部黒なんて、地味すぎて息ができないわよ、そもそもなんで魔女見習いの設定なのよ、もうちょっと貴族の娘とか、そういう設定だったらきれいなドレス着れたじゃないの!」


そしたらちょっとはイケメン騎士の目にとまったかもしれないのに!という所は一応発言を控えた。


「私が貴族の娘なんか神殿に連れて行ったら、結婚相手だと思われるだろう!」


「げ!!それはごめんだわ・・でも、だからって、なんとかならなかったの?」


「げ!とはなんだ、げ!とは!私が毎週受け取る見合いの申し込みの釣り書きの数をしらんのか?」


「あんたがこんなメソメソうざったい男だなんて知ったら、だれも申し込みなんかにこないわよ!」


二人とも、とりあえず顔を合わせるとこんな感じで喧嘩するので、カロンももう止めない。


カロンが呼んだ馬車に乗りこんで、3人は神殿を目指す。


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