第6話 勝手に盛り上がるな
主人公が死んだ!もうこの世界は終わりである。だがそれでは困るのだ。なにせまだ俺は復讐を完遂していない。あの憎き女の前で今度こそ飛び降りて一生メンタルクリニック通いのトラウマを植え付けるまではこの世界には存続していなければならぬ。とりあえず上空をまだロボット軍団は飛び回っていた。どうやらこの世界はロボット物的要素もあるようだ。とりま主人公は死んだが、ヒロインを起こして状況を動かさなければいけない。
「オラ起きろ!」
俺はロボットのコクピットで伸びているヒロインの頬をぺちぺちと叩く。するとしばらくして女の子が目を覚ました。
「ここは…地球…?」
「おうそうだぞこの野郎。だからはやくとっとあのロボット軍団を皆殺しにしてこい」
「ロボット軍団?ディンギル星人たちのこと?!あいつら!やっぱり地球を狙ってるのね!」
敵勢力はディンギル星人というらしい。よう知らんけどこいつもしかして宇宙から来た?女の子はコックピットの扉を塞ぐ。すると俺もコックピットの中に閉じ込められる羽目になった。
「おいちょっとまてこら!俺は関係ないだろ!外に出せ!」
「この中の方がずっと安全よ!」
そして壁一面に何やらウィンドウが開いたり閉じたりした後に、全天周のモニターが広がった。
「まずいわね。敵の数が多すぎるわ…」
「いやどうでもいいから下ろしてよ」
俺は複座型になっていたコックピットの後ろの席に座る。
「本来ならば霊長の王を探すためだけにこの星に来たのに…なんでこうなるの…ディンギルぅううう!絶対に許さない!え?この反応は?!」
モニター一面に王冠のマークが沢山浮かび上がる。
「霊長の王が近くにいるの?!場所は…すぐ後ろ…?」
女の子が振り向く。俺のことを信じられないような目で見ていた。え?なになに?なんかそういう期待するような目はやめて欲しいんだけど。
「あなたが霊長の王なの?」
「はぁ?霊長?霊長類のことか?お前俺のこと猿扱い?」
「人間だって霊長類よ!だからあなたは人間の王様なの?!」
「違うけど」
「でもあなたから反応が!この子も、このルガール・キス・キもあなたが王だと叫んでいるわ!」
ええ。なんか困ったことになっちゃったぞぉ。
「あたしはレナトゥス・ダイアデム。セイファートの六つ子銀河から来た銀河霊長帝国の執政官。地球へは霊長の王とその姫を探しに来たの。つまりあなたのことを!」
「なにそれ。はぁ…壮大過ぎてあたまばかになりゅぅ」
「姫である多々羅美矛のことは専攻調査隊が発見していたけど、やはり近くに王もいたのね」
あ?いまなんつった?俺がトラウマ与えたい女子ナンバーワンの名前口にした?!
「ああ。なんていう僥倖なの!これこの宇宙そのものを救うことができる!あたしたちは真なる王を奉戴して宇宙を熱的死へと導こうとするディンギルたちにやっと対抗できるのね!」
なんか話が壮大になってきたぞぉ。
『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん』
ロボットもなんか咆哮を上げている。なやねんのこの展開。
「さあ陛下!われら霊長を救い、文明を新たなるステージへと導き給え!」
なんかダイアデムさんがノリノリである。ロボットは立ち上がり、宙に浮いていく。そして両腕を組んで目をきゅぴーって光らせた。
「ディンギルども!ここにいるのはわれら霊長の王なり!貴様らのような出来損ないの天使なのではないのだ!神の手先を騙る背徳者め!王威を知れ!!」
するとロボットの両目から謎のビームが放たれて空にいたすべてのロボットたちを破壊しつくしたのだった。
「すごい…これが王の力」
「え?俺なんもやってないんだけど…」
コックピットに座っているだけである。そしてロボットは上空へと飛んでいき、宇宙に飛び出した。体がふわりと浮くような感じがした。そして前の席に座っていた女の子がコックピットの座席からシートベルトを外して離れて俺の方へと浮遊してくる。
「陛下…麗しの陛下。どうか宇宙をお救いくださいませ。ああ。陛下ぁ!」
ダイアデムは俺に抱き着いて体を擦り付けてくる。めんどくさい。果てしなくめんどくさい。そもそも俺なんもやってない。なのになんかよくわからんなにかに巻き込まれた。俺の復讐は一体どこへ行くのだろう。だれか教えてくれ…。
噓告に絶望した僕はカノジョの目の前で飛び降りてトラックに轢かれました。するとうすら剥げの自称神が最強の力をくれました!みんなは地球を守れと言ってきますが、フルシカトで滅びに臨もうと思います。 園業公起 @muteki_succubus
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。噓告に絶望した僕はカノジョの目の前で飛び降りてトラックに轢かれました。するとうすら剥げの自称神が最強の力をくれました!みんなは地球を守れと言ってきますが、フルシカトで滅びに臨もうと思います。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます