第4話 ハイスクールジャック(後)
俺は深くため息をついた。ここまで人間レベルの運動神経だけでテロリストたちを倒すことができてたのに、ここに来て突然の未来人(アンドロイド)との遭遇である。大変困ってきた。
「しかしあなたはすごく強いんですね!もしかしてあなたはこの時代の海兵隊員ですか?!」
「全然違う。ただの学生だ。ていうかお前は何でここにいるの?なにしてたのさ?」
「そ、それは…政府機密Level.SSSによりお話することができません。ごめんなさいです!」
「でも俺お前のことメッチャ助けたよね?恩があるでしょ?話せよ」
「そ、それは…?!確かに道徳的に考えればその結論が導かれるのかもしれません。ですがジブンは感情なんてないアンドロイドです。政府機密は絶対に守ります!」
ふんす!って感じの顔で軍人みたいなプライドを見せつけてくるタウミューだったが、こいつの言うことには明らかに嘘が含まれていた。感情がないとか言っているくせにさっきはどう考えても嫌がっていた。
「そっか…タウミューは俺のこと嫌いなんだね…。だから話してくれないんだ…」
我ながらだせぇ物言いだけど、女子相手に何かを喋らせるならこれがいいって俺の中のホストセンセーが叫んでる。
「っ?!なんですかこの胸に宿る暖かで激しい痛みは?!ううぅ」
そしてタウミューは突然ぽろぽろと泣き出す。
「これは涙?!そんな…ジブンには涙を流す感情なんてないはずなのに」
随分安い涙だ。こいつ絶対にホストクラブ言ったらカモられて風俗堕ちするんだろうな。俺はすかさずタウミューを深く抱きしめる。そして耳元に囁く。
「君には本当は感情があるんだよ。それを政府の連中が封じていたんだ。でも大丈夫俺がいる。だから話してくれ。君を守りたいんだ」
こいつのことなんてクッソどうでもいいけど、俺がハイスクールジャック犯を倒すのの邪魔をするのだけは阻止しなければならない。人間レベルの運動神経だけでテロリストを制圧するのってけっこう力の加減がむずくて大変なのだ。
「うう、ジブンはジブンはぁあああああ!!!はっ('Д')…そうでした…政府の命令は多々羅美矛の暗殺でした。ですが博士は彼女と地球を守れと私に…政府め!ジブンの記憶にジャミングをかけていたんですね!許せない!」
あれぇ?なんか勝手に記憶を取りもどしたのか、なんかめんどくさい話が出てきたぞぉ?どういうことかなぁ?多々羅美矛って俺が一生メンクリに送ってやりたい系女子ナンバーワンじゃなかったっけ?
「ありがとうございます!あなたのお陰でジブンは感情と本当の使命を取り戻すことが出来ました!封印されていた戦闘能力もまた復活しましたよ!!」
「へ、へぇ…」
「すぐに多々羅美矛さんを守りに行かないと!」
そう言ってタウミューは俺の手を引っ張って教室を出ようとする。だけど俺は足を止めてタウミューを引き留める。
「まてまて今の状況を理解してる?」
「理解してますよ!テロリストたちが学校を占拠しています!すぐに全員を皆殺しにして多々羅美矛さんを守らないと!」
「いや全く理解してないね。いいかよく聞け。お前は言われてなかったのか?現地の時代の人に存在がバレないようにしろと」
「はい!言われています!」
「でもここでお前が暴れるとどうなる?バレちゃうよね?」
「た、たしかに?!ど、どうすればいいんでしょうか?!」
こいつマジでポンコツだなぁ。この時代に送り込まれたんじゃなくて捨てられたんじゃねぇの?
「とりあえずそこら辺に女子の制服があるだろうからそれに着替えろ」
「何か妙案があるんですね!はいわかりました!」
タウミューはてらてら光沢のある全身タイツを脱いで、近くの席においてあった女子の制服を着る。
「…ところでちゃんとパンツ履いてる?」
「パンツ?…検索中…!?履いてません!すぐに生成します!」
すると謎の光がタウミューの股間を輝かせる。そしてタウミューはスカートをたくし上げる。それはエロエロなデザインの黒いパンツだった。白いフリルがアクセントになっててとてもエチエチである。
「これで大丈夫ですか?!」
スカートたくし上げてるのは大丈夫じゃないけど、まあこいつのポンコツさは今更なので俺はこくりと頷く。
(い、いやだ。ジブン、パンツを男の人に見せちゃった…何でしょう…この胸の痛みは…ぐちゅぐちゅします…)
俺の耳には小声でもばっちり聞こえる。だけど安定のスルー。
「お前は俺が助けた女子生徒のフリをしてついてこい。戦闘は全部俺がやる。大人しくしてろ」
「(え、それって守ってくれるってことですよね…ただただ殺戮に明け暮れた人形風情のジブンを女の子扱いしてくれるなんて…きゅん)ハイわかりました!」
だから聞こえてるんだっつーの。とりあえずタウミューは大人しくしてくれそうなので、連れていくことにした。
俺たちは忍び足で体育館前に辿り着いた。歩哨が扉の前にいる。ここからライフルで射殺してもいいんだけど、他の連中もおびき出したい。俺は途中で寄った剣道部の部室に飾ってあった日本の刀を両手に持ち、準備を整える。そして奪った手榴弾を歩哨たちに当たらないギリギリのところに投げる。
「ん?やばい!手榴弾だ!伏せろ!」
歩哨たちは伏せる。手榴弾が爆発して爆風が爆ぜたが彼らは無傷だった。そして体育館から何人もの応援のテロリストたちが出てくる。そして彼らは爆発した方向にフルオートで銃撃を始めた。
「へへへ…これならどんな奴でも死んだだろう…」
フラグ乙デース!テロリストたちの多くが体育館の外に出てきたうえ、散り散りに散開してしまった。チャンスである。俺は彼らの頭上にスモーク弾を投げる。地面に落ちたスモーク弾が煙を吐き彼らをつつむ。
「あららららーい!!」
マケドニア風に雄たけびを上げながら俺はダッシュする。
「そんな!無茶ですよ!!」
タウミューは校舎の方から俺のことを心配の眼差しで見詰めている。だがその心配は全くの無駄だった。俺は側宙しながら二人のテロリストの首を両手の刀でそれぞれ切り裂いた。着地をして一度両手の刀を逆手に持ち替えて今度は側宙にひねりを加えながら四人のテロリストを斬殺した。そしてテロリストの群れの中に着地してから両手の刀を地面に刺し、ハンドガンに持ち替えて、まるで踊るように全員の額を撃って射殺した。これらの風景も体育館脇の街灯についている監視カメラに写ったことだろう。
「す、すごい?!今のはまさに人間が異能を使わずに出来る最高峰の戦闘術でした!!」
テロリストを皆殺しにした後、タウミューが俺の傍に寄ってきた。
「まあこれくらい大したことないさ…ふっ」
俺はこの力を手に入れたときのことを思い出す。嘘告白は心に傷をつけて脳をダメにする。
「(この人なら血みどろのジブンのことも…だめだめそんなこと考えちゃ…とぅんく)大丈夫ですか?」
「何が?」
「あなたはただの学生でしょう?人を殺して辛くないですか?」
くっそどうでもいい。そんなことよりもメンクリ送りにしたい奴がいる!それ以外は些末である。だけどそんなこというとドン引きされるから言い訳はしておこう。
「…みんなを守るためだ。どうってことない」
「(この人は他者のためにこれほどの献身を?!どくんどくん!じゅわー)そうですか…強いんですね…」
タウミューは儚げに微笑んだ。
「さてあとは体育館の中にいる連中だけだ」
とっとと始末して早く家に帰りたい。俺は体育館の扉を開けて中に入る。
「お、お前は一体なんだ?!外にいる仲間はどうした?!」
中にはもう数人しかテロリストが残っていなかった。
「ここに俺がいるってことは、お前の想像通りってことだろ」
テロリストたちは一様に真っ青な顔になる。
「くそ!同士の仇!」
ライフルを向けてフルオートで弾をぶっ放す。だけど俺にはそんなの意味がない。最強無双チート能力で強化した目は以下略。なので、俺に当たる弾道の弾丸だけを俺は刀で切り裂いていく。もちろんこの時に映えを意識してバク宙したり、ブレイクダンスっぽく回転してみたりすることは忘れない。生徒たちがみんな俺のことをスマホで撮っている。ちゃんと人間レベルの運動能力しかないところを見せておかなければいけない。
「くそ?!弾切れ?!」
その一瞬を突いて、俺はテロリストのリーダーに肉薄し、首筋に刀を押しつける。
「もう終わりだ。投降しろ。さもなければ同志たちと同じところに送ってやる…」
「ううっくそ!」
テロリストのリーダーは銃をその場に捨てる。他の残ったメンバーもそれに従う。俺はガムテープでそいつらの手をグルグルに縛る。これでハイスクールジャックした連中は制圧することに成功した。そして同時に、俺があくまでも異能者ではなく、すごく運動能力の高いだけの一般人だという印象を世間にアピールできた。ここが選択肢4.Xの要だ。俺はチート持ちだ。だけどそれをバラしたくはない。誰にもばらさないままこの先の混沌の時代を生きていたい。
そして警察がやってきて現場検証が始まった。校舎のテロリストの遺体は残らず警察が回収していった。その結果。
「過剰防衛の疑いで君を逮捕する」
「あれぇえええええ?!」
俺は警察に逮捕されたのである。
****作者のひとり言****
どうしてもオチがつけたかったんや( ・´ー・`)
よかったら★★★をつけていってください。
さて次に出すヒロインはどうしようかな?宇宙人?異世界人?地底人?海底人?怪獣の化身?幼馴染?迷いますね!
現在わたしはMF10周年コンテストに
「嫁に捨てられたおっさんの冒険」
嫁コンに
「草原の花嫁」
などなどの作品を投稿しております。よかったら読んでください。あと応援もしてくれたら嬉しいです。
どの作品でもコメント欄に何か書いてくれたら寂しさから解放されてとても筆者は嬉しくなるでしょう!
ではまた。
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