第3話 ハイスクールジャック(前)

 航空機はハイジャック。でもバスとかでもハイジャックっていうって聞いたことある。ではそこら辺を妥協して、高校をジャックすることをハイスクールジャックと呼ぼう。


「この学校は我々怪獣至上主義連合が制圧した!お前らには当局相手への人質になってもらう!」


 なんでこういう人たちって当局って言いたがるんやろう?


「お前たちには体育館に移動してもらおうか!」


 テロリストたちは俺たちに銃口を向けながら指示を飛ばす。まあここは大人しく従っておこう。そう思った時だ。


「せめて女子生徒は解放しろ!」


 幸野谷が立ち上がってテロリストに向かってかっこよく怒鳴った。だが。


「うるさい」


 テロリストは一切の聞く耳を持たなかった。幸野谷は太ももを撃たれてその場に倒れる。どうやら痛みと衝撃で気絶したらしい。


「お前たちも撃たれたくなかったら、言うとおりにするんだな!」


 生徒たちは言われた通りに廊下に出て体育館に向かう。その時だった。頭の中に声が響いた。


『縁慈さん!わたしが変身してこいつらを何とかしましょうか?!』


 笹切からのなんか魔法的な何かのメッセージなのだろう。だけどここで笹切に何かをさせるのはリスクが大きそうに思えた。制圧できないとは思わない。この状況で変身したら後で間違いなく正体が身バレするのは間違いない。それは困る。世間は困らないが俺はすごく困るのだ。


『いや変身しなくていいよ。俺にまかせておいて』


『(きゅん!縁慈さん素敵)わかりました待機してます!』


 なんでぼそっと言った言葉が筒抜けになってるの?この通信方法ガバガバなんじゃ?さて俺は脳みそをフル回転させていた。この状況を解決するには以下の選択肢があると思う。


1.魔法少女に全部任せる デメリット:間違いなく笹切の身元がバレる。


2.警察とかに任せる。 デメリット:流れ弾で死ぬ生徒とか出るかも?


3.政府の超法規的措置~命は地球よりなんちゃら~ デメリット:どう考えても命は地球よりも軽い


4.俺が最強無双チート能力で何とかする。 デメリット:身バレしてネットのキッズどもの玩具にされる。


 俺は精一杯考えた考えて考えて考え抜いた結果、隠し選択肢4.Xを選択することにした。


「最強無双チート発動…」


 俺はボソッとそう呟いて超高速移動を行う。廊下を歩く生徒たちの横を誰にも気づかれずにまるで風の如く走り抜けて、俺は空き教室に入る。そしてその空き教室の窓から生徒たちが体育館に集まったのを確認してから教室の外に出る。壁沿いにゆっくりと歩いては曲がり角で止まり様子を伺いながら進む。そして階段の前に来た時にテロリストの一人と遭遇した。階段に踊り場に設置されている監視カメラはおれたちをじーっと写していた。


「おいクソガキ!ちゃんと命令を聞けよ!まったく!ほら!ついてこい!」


 テロリストは武器も持っていない俺に全く警戒していない。俺の先を歩いていく。チャンスがやってきた。


「あちょー!!」


 俺はほんの少しだけ体をチート能力で強化してテロリストを後ろから蹴る。


「ぐはぁ!痛ってぇ?!」


 テロリストはその場で転んでしまった。俺は映画スターのように颯爽と廊下を滑るようにテロリストにカニばさみを仕掛ける。そして腰のホルスターからハンドガンを奪い取り、テロリストの頭を地面に足で固定してから額を撃ち抜いた。そのままブレイクダンス風にくるくる回りながら立ち上がってから、テロリストの持っていたM4A1とハンドガンのホルスターを奪う。M4はスリングで肩から吊るし、奪ったホルスターを制服の上からつけてハンドガンのグロックをホルスターに仕舞う。今の動きはすべて人間レベルの範疇で出来る運動だ。


「こっちから銃声がしたぞ何があったんだ?!」


 テロリストたちが廊下の両側から階段の前に迫ってくるのが見えた。俺はまずさっき殺したテロリストの死体を廊下側に放り投げる。


「な?!誰だ!?誰かそこにいるのか?!」


 仲間の死体が投げ込まれてビビっているのが声で伝わってくる。そしてテロリストたちはライフルを構えながら階段の踊り場に突入したきた。だがそこに俺はいなかった。テロリストたちは階段の上と下と覗き込むが当然そこにも誰もいない。


「天井天下唯我独尊!ふぉあたぁ!!たったたたた!」


 俺は天井の蛍光灯の淵に指を引っかけて張り付いていた。そこから飛び降りて、まず一人のテロリストに飛び掛かる。首に着地してそのまま太ももでそいつの首を挟み込みながら床に向かって俺は前転する。テロリストはそれに引っ張られて頭を床に思い切り打ち付けられて死んだ。そしてその低い姿勢から俺はハンドガンで近くにいたテロリストの膝を撃つ。


「ぎゃはぁ?!ぐぅ!」


 倒れる前にそいつの後ろに回り込んで首を締めあげて、残りのテロリストに対する壁にする。


「くそ?!狙えねぇ?!」


「しかもこっちは狙い放題!」


 俺は壁にしたテロリストの方の上からハンドガンの手を伸ばして目の前のライフルを構えて狼狽えているテロリストの心臓を撃って射殺した。そして首を締めあげているテロリストに投げ技をかけて、床に倒す。倒れたテロリストの額に銃口を押しつけて俺は問いかける。


「ここを襲ったのは全部で何人だ?!答えろ!」


「24人!24人だ!」


「ってことは24-4だから残り21人か。めんどくさいな。けっこう多い」


「…あのその計算もしかして俺も入ってますか?」


「当たり前だろ?何言ってんだよ」


 俺は引き金を引いてそいつを殺した。これで残り20人だ。俺は階段を下りて下の階に移る。そして廊下に出てゆっくりと歩いていく。もちろん俺の姿は廊下の防犯カメラがじーっと写している。


「こっちから銃声だ!?まさかもうサツが入ってきたのか?!」


 廊下の曲がり角の向こうからテロリストたちが3人現れた。彼らは俺が銃を持っていることに気がつくと、すぐにライフルの銃口をこちらに向けてセミオートで発砲してきた。こういうときはすぐに伏せるべきだろう。だけど俺の目はいま最強無双チートで超強化されている。その眼なら奴らの体の動き視線と距離と空間把握をフルに活用できる。俺は歩きながら最低限度の動きだけでライフルの射撃を回避する。


「うそだろぉ?!なんで当たんねぇんだよ!?うわあああああああ!!」


 その後も射撃が続くが俺はそのすべてをよけきってみせた。そして奴らに近くなったところでライフルを構えてフルオートで弾をばら撒いて皆殺しにした。


「残り17人」


 俺は廊下を進む。その時、空き教室の一つから女の子の声と男たちの声が聞こえた。廊下から慎重に教室を覗き込むとそこには全身タイツで銀髪赤目の美少女とテロリストたちがいた。女の子は男たちに囲まれて今にもヤバい雰囲気だ。このままだ18禁になってしまう。


「いやいや!助けてぇ!」


「ふへぇへへへへ誰も来やしねぇよ」


「ひひひ!たのしませてもらうぜ!」


「俺は見て楽しまさせてもらうぜ。処女厨でNTRスキーだから複数プレイは出来ねぇんだ…うっ…」


 どっちに突っ込もう?うちの学校の制服を着ていない明らかにうちの学生ではなさそうな美少女と、処女厨なのにNTRスキーという混ぜたら危険なよく今まで生きてこられた性癖の男と。


「どうでもいい。テロリストは皆殺し」


 俺は部屋に入ってテロリストたちにライフルを向ける。


「その子から離れろ!!」


 俺は教室の監視カメラに映る様にライフルを構える。

 

「なんだこいつやっちまえ!!」


 男たちはいっせいにハンドガンを構えて俺に銃口を向ける。多勢に無勢。さっきみたいに弾を避けてもいいんだけど、あれって地味に疲れるからあんまりやりたくない。なので俺はライフルで天井のスプリンクラーを破壊する。すると教室に水が雨のように激しく降り注ぐ。


「うわなんだ水か?!グぼぉ!」


 水で怯んだテロリストたちの一人をまず思い切りぶん殴る。そしてそいつの手を掴んで隣にいるテロリストに向かって投げる。


「うわぁ!?!」


 テロリストの二人はもみくちゃになって床に倒れる。


「このうぅ!!」


 まだ残っていたテロリストが俺に殴りかかってくる。俺はその拳を避けてからそいつの膝にハンドガンで鉛玉をぶち込む。


「うがぁあああああああああああああああ!!」


 そして膝をついたそいつを思い切り蹴っ飛ばす。


「くそがぁ!」


 もみくちゃになっていた二人のテロリストが起き上がってきたが、俺は振り向きもせずにハンドガンを二回だけ撃った。それだけで声は聞こえなくなった。そして蹴っ飛ばして倒れたテロリストの首を足で抑えて額に弾をぶち込む。全員片付いた。


「残り14人」


「あ、あの!」


 俺がハンドガンの残弾を確認していると、銀髪赤目の女の子が俺に話しかけてきた。


「助けてくださってありがとうございます!」


「あ、はいはい。どういたしました。礼はいいからとっとと逃げな」


「え?逃げろって言われても…どうすれば…」


 まあそれはそうか。こんな状況じゃそもそも逃げ方もわからないのが普通だろう。でもそれ以上に。


「お前さん。うちの学校の生徒じゃないよね?」


「え?…なんでそれに気がついたんですか?」


「バカなの?そんなおかしな格好してればすぐにわかるわ」


 なんかてらてらと光沢のある全身タイツを纏っている。昔の人が考えた未来人の服って感じ。


「え?この服はこの時代においては最先端の流行りだと博士からは聞いていたのですが…?」


 あ、なんかすごくやばい単語出てきた気がするぅ。


「お前西暦何年から来たの?」


「ジブンですか?!西暦ではなく絶対統一歴2023年から来ました」


 それどれくらい先の未来なのよぉ。よく知らん暦が出てきても正直困る。というかこのくそみたいなやり取りでわかったけどこいつ未来からきたっぽいぞ。


「自分は汎宇宙絶対統一共同体政府海兵隊所属の戦闘用アンドロイドτタウμミューです!」


 戦闘用とか名乗ってるくせに、あの程度のテロリストも何とかできない未来人アンドロイド。マジもんのポンコツやん。ハイスクールジャックのテロリストをやっつけてる最中に未来人と遭遇とかこの世界の手違いはちょっと多すぎじゃありませんかねぇ?俺はただただ肩を竦めることしかできなかった。







****作者のひとり言****


よかったら★★★をつけていってください。





あと嫁コンに

『草原の花嫁』

MF十周年コンテストに

『嫁に逃げられたおっさんの異世界冒険』

があるので呼んでくれると嬉しいです。



筆者はよくオフィスにテロリストがやってきて、元海兵隊員として全員を倒す妄想をしながら仕事をしているときがあります。

そんな妄想を詰め込んだ話なので、次回も引き続きハイスクールジャック編です。

未来人から語られる衝撃の事実とはいったい?


よろしくお願いいたします。

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