7-1

「せっかくだから魔法も見せ合いましょう」


というネイピアの提案で、練習場内に移動して自己紹介と一緒に魔法を使ってみせることになった。


練習場には芝が敷いてあり、入って反対側には的のようなものと、大きな機械のような魔道具が並んでいる。


僕たち5人は場内に入ってすぐのところで円形に向かい合った。


まずは公爵令嬢であるリズが輪の一歩内側に進み出て挨拶する。


「みなさま、はじめまして。と言っても、シディーとテレジアナ嬢には以前お茶会でお会いしましたね。クラリス・アーキアです。どうぞリズとお呼びください」


そこまで言うと、リズは目を閉じて深呼吸した。


「実はネイピア先生以外の人に魔法をお見せするのは初めてなんです。少し緊張しますね」


リズは恥ずかしそうに少し笑った後、また真剣な顔に戻って目を閉じた。


そして右腕を前に差し出して、息を吸い込む。


同時に青色の光が指先に向かって流れていき、そこから大粒の水が次々に流れ出した。


水の光属性。


それもおそらくすごいマナ量だ。


周囲の粒子に対してマナを使うとき、それは光として可視化できる。


一般に使うマナの量が多いほどその光は強いらしい。


僕の光はせいぜいろうそくの火ほどしかないが、リズのは周りのものを青く染めるほどの強い光だ。


さすが英雄魔道士の末裔、アーキア公爵家といったところか。


リズは「これくらいで宜しいでしょうか」とネイピアの方を見て、頷いたのを確認すると、安堵したような顔で腕を降ろす。


僕の隣にいるツンツンした赤髪の男の子が、大きな黒い目をキラキラさせて「すげー」と呟くのが聞こえた。


「攻撃はできますが防御は苦手です。得意な方がいましたら教えていただきたいです」


いやいや、僕なんてまだ攻撃とか防御って段階じゃないんだけど。


これには流石のお嬢様も面食らっただろうかとテレジアナの方を見ると、案外涼しい顔をしている。


性格的に絶対動揺するなり嫉妬するなりするものだと思ったが…。


ちょっと嫌な予感がした。

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