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「しかしお母様、もう10年以上も目覚められないのですよね」


知らない男の声がする。


「ですが回復する人もいるとお医者様が…」


何かにすがるようなに言うその人に、男は心無いため息を吐いた。


「確かに、術後の植物状態から回復する例もありますが、多くは数ヶ月以内の事です。何年も経った後に回復する例はごく稀ですし、仮に目覚められたとしてもその後は…」


冷たい沈黙が続いた。


体を動かそうとしても手足の感覚すらわからない。


「お母様、幸い脳の方はまだ機能しております。しかしそれもいつまで保つかわからない。どうぞ人類の幸福と存続のために…」


その続きを聞く前に、僕の意識は再び暗闇の中に溶けた。

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