1-3

「しばらくは安静が必要ですが、もう大丈夫でしょう」


医者は丁寧な診察を終えると、見守る両親を安心させるように告げた。


「やった!シディー、治ったんだな!」


兄は本人よりも喜んでいる。


父親は安堵のため息を吐き、母親はそっと娘の髪を撫でた。


当の僕には病気だか何かが治ったということよりも、自分が唐突に異世界の幼女になってしまったらしいという現状の方が重要だ。


目が覚めてから今まで喧騒に巻き込まれて落ち着かなかったせいで、いまだに何がなんやらよくわからない。


このタイミングなら、1人にしてもらえるかもしれないな。


「あの、ちょっと眠たいんですけど…」


透き通った鈴のような声が自分の口から出た。


娘の言葉に、両親は驚いたように固まっている。


あれ、なんかマズかったかな?


「シディーはいつからこんなに上手に喋れるようになったんだ?」


今まであまり話さなかった父親が、不思議そうに妻に聞いた。


「さあ…私も今初めて気付きましたわ」


え、僕喋れなかったの?


「確かにシンシア様はこれまで3歳にしては言葉が遅れておりました。お体の弱いことが原因の一つだと思っていましたが、ある時期に急に言葉が出始める子供も珍しくありません。シンシア様は今回のご病気が治ったことが一つのきっかけになったのかもしれませんね。」


「えー!シディー、おしゃべりできるようになったのか?」


また興奮し始めてしまった兄に、驚きながらも嬉しそうな両親。


あ、これはマズいかも…



その予想通り、それから僕は面白がる家族3人からの質問攻めに遭った。


やっと解放されたのは、もう昼近くになる頃だった。

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