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この「僕」、シンシア・アデレートが朝に目覚めたというだけで屋敷中が大騒ぎになった。
というのも、この幼女は3日前に死ぬかと思われるほどの高熱を出した後、さっきまで眠り続けていたらしい。
高熱にうなされていた感覚も、さっき顔を覗かせた男の子とそれに連れられてきた紳士、貴婦人との朧げな家族の記憶も確かにあった。
3つ上の兄であるその男の子は、母親の止めるのも聞かず僕のベッドに上がってきて、無事を確かめるようにまじまじと観察したり、どれだけ心配したか言って聞かせたり、これまで3日にあった出来事を具に並べ立てたりと忙しい。
貴婦人は病人をそんな風に構うなと叱りながらも、妹の回復を喜ぶ息子を慈悲深い菫色の瞳で見つめている。
墨のような艶髪を結いもせず流しているのを見ると、身支度もそこそこに娘の部屋に駆けつけたらしい。
紳士は終始無口だったが、娘と同じ深青の目の下に、重い隈が垂れていた。
その三人に見守られながら、アン、と呼ばれた茶髪の侍女が急いで持ってきてくれたパンとミルクを空腹のため夢中で食べていると、主治医らしい中年の男が息を切らすようにしながら部屋に入ってきた。
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