第7話 文化祭②!
「え!?どうしたの!?」
私はお化け屋敷の外で適当にうろうろしてて気付いたら2人が戻ってきてたから見てみると、衣舞ちゃんは古賀に抱着いて号泣してた。
「古賀!衣舞ちゃんに何したの!」
「泣かせたのは俺じゃないお化けだ!」
「なにそんなに怖かったの!?」
「いやそんなでもなかったが……」
衣舞ちゃんは一向に泣き止まない。
「佐々木、ごめんな。お化け屋敷なんか連れて行って。苦手なら早く行ってくれれば良かったのに」
「……大丈夫、私が古賀くんの行きたい場所でいいって言ったから……」
衣舞ちゃんは泣きながら言う。あれ衣舞ちゃん、古賀の前でも喋れるようになったんだ。
古賀達は引き続き文化祭を回っているようだ。古賀がまたやらかすかもしれないので私は2人の後を付け回す。
「……ねえ、あそこ行ってみたい」
「あそこってチョコバナナ売ってるとこ?」
「うん」
「よし、じゃあ行ってみるか!」
この2人、ちゃんとカップルっぽくなってるじゃん。羨ましいな。
「おいしい?」
「うん。ありがと」
衣舞ちゃんの笑った姿を見たのは今日が始めてかもしれない。思いっきり笑ってる訳じゃないけどそれでも凄く楽しそう。
「次どこ行く?」
「お化け屋敷以外ならどこでもいいよ」
「あ、外で軽音のライブやってるらしいから行く?」
「うん!」
文化祭はあっという間に終わってしまった。放課後はさっきまで賑やかだった余韻が少し残ってるくらいでシーンとしていた。
私は古賀が後片付けがあるって言ってたからついて行ってた。美術部の作品を美術室に戻す作業をやってた。
そういえば。
「古賀の作品ってどれ?」
「俺のは飾られてねえよ」
「え、なんでそんなに下手なの?」
「違うわ!部活は夏休み中ずっとサボってたし」
「うわ」
コイツ部活サボるってマジかよ。てかそんなやつだっけ古賀って。
「じゃあ衣舞ちゃんのは?」
「佐々木のは……これかな?」
「え!?コレ!?」
古賀が指さした作品は人とか動物とかが書いてある訳じゃなくて学校の教室が描かれていた。
一瞬写真だと思ったんだけどめっちゃ上手いじゃん。
「へ〜衣舞ちゃんってこんな絵上手いんだ!コンクールとかあったら絶対賞とれるじゃん!」
「でも、あいつ一回も賞取ったことないらしいけど」
「え!?こんな上手いのに!?レベル高!」
私はもう一回衣舞ちゃんの作品を見る。教室には夕日が差し込んでいて1つの席だけ陽が当たってない。全体的に淋しい雰囲気がある。
もしかしてこの絵って……。
「そういえば佐々木は?」
「え?ああ衣舞ちゃんなら教室にいると思うよ文化祭実行委員だから後片付けあるとか言ってたな」
私は憑依していない半透明の姿だ。
「今日あいつと一緒に帰る約束してるから」
……え?
「え!?」
「……なんでお前がそんな驚くんだよ」
「え、あれ?何でだろ?」
私は慌てて口元を押さえる。
「ふざけんじゃねえよ!!」
突然、衣舞ちゃんがいる教室から大きい声が聞こえた。
「え!?」
私達は走って教室に向かう。教室のドアからそーっと覗くと衣舞ちゃんを囲むように3人ほどの女子がいた。
「お前どうしてくれるんだよ!」
「………ん…さ……い」
「は?聞こえないなんて言ったの?」
「ごめ……ん……なさい」
「だから聞こえねえって!」
え?どういうこと?なんで衣舞ちゃんがクラスメイトに責められてるの?
「……ねえどういう状況?」
「俺も分かんねえよ」
「ちょっとあの喧嘩止めてきてよ」
「俺が?」
「私はなんにもできないしあんた男でしょ?」
「いや俺ちょっとあの人達苦手なんだよ」
「頼りねえな」
衣舞ちゃんを助けるにはどうしたら。
「早く行けって!」
「だからなんで俺なんだよ!」
「衣舞ちゃんが困ってるでしょ!」
「いやでも……」
「何してんの古賀?」
あ、古賀がさっきの3人組に見つかった。
「えーっと……なんか騒いでたから何してんのかなって……。で、どうしたんだよ」
古賀がぎこちなく喋りながら衣舞ちゃんに近づいて行く。
「佐々木がさ、私のスマホ壊したんだよ」
え?
私は衣舞ちゃんの足元に割れてるスマホがあることに気づく。
「ごめん……なさい……」
衣舞ちゃんは泣きそうになっているのを必死にこらえて喋る。
「謝ったって私のスマホは直らないのどうしてくれるんだよ」
女子はまた衣舞ちゃんに突っかかる。
「おいやめろよ」
「お前は関係ないだろ!」
「はいさーせん」
ちょ……何してんだよ古賀。
その途端、女子の1人が衣舞ちゃんのポケットからむりやりスマホを取る。
「……あ!」
衣舞ちゃんはとっさにスマホを取り返そうとする。けどもう一人の女子に肩を押され衣舞ちゃんは「う……」と言いながら尻もちをつく。
ヤバい、このままだと衣舞ちゃんのスマホが壊されちゃうんじゃない?古賀はもう頼りにならないし……。
「もういいや!」
私は衣舞ちゃんの所に向かって憑依する。
「……おい」
と私は低めの声を出して女子3人組を脅す。
「あ?」
私は立ってスマホを持った女子を思い切り押しかえす。女子が後ろにバランスを崩した瞬間に私は女子の手からスマホを取り返す。
「痛った……」
女子は衣舞ちゃんと同じように尻もちをついて声を上げる。
急に変わった態度に驚いたのかしばらく教室は沈黙していた。
「おい何してんだもう下校時間だぞ!」
「あ、先生……」
ここの教室の担任が入ってきた。すると女子の1人が。
「先生!私のスマホ佐々木が壊したんです!」
え、先生まで巻き込むの?
「ねえ、衣舞ちゃんホントに壊したの?」
「う、うん。写真撮ってって頼んだら手が滑っちゃって」
私は半透明の衣舞ちゃんに話しかける。
「おい、佐々木。本当に壊したのか?」
「あ、はい……」
「しかも私のことを叩いたんですよ!」
「え……?」
担任の先生が困惑し始める。
「佐々木……本当なのか?」
「い、いや確かに強く押したかもしれないけど叩いてなんかいません!」
「いや、本当に叩かれました私!見てたよね?」
他の女子2人が「見ました」と頷く。
え……。
「ねえ古賀も見たよね」
「……え?」
女子はそこにずっといた古賀にも訊く。
「ねえ、古賀。お前も見たよね?私が叩かれたところ」
「俺は……」
古賀はどうしようか迷う。
「……いや、見てない俺は!」
「古賀……!」
私は少し嬉しくなる。
「……ええとつまり?状況を整理すると……」
「先生!ホントに佐々木は……!」
まだ諦めないのこの人達?
「ああもうしつこい!分かったよ!」
私はメガホンのような音量で言い放った後、手に持っていた自分のスマホを地面に向かって投げる。
地面に叩きつけられたスマホはもちろん、いろんな部品が飛び散って壊れた。
「え?」
女子と先生が何してんの?という目で私を見る。
「これで、平等でしょ」
女子3人組はそのまま黙ってしまい担任が「一応下校時間過ぎてるから解決したなら帰って」と言う。
そして女子3人組は帰って行った。
「ああ……怖かった……」
と私は思わず地面に座り込む。
「あ、ごめんね衣舞ちゃん。スマホ壊しちゃって……」
「ううん。大丈夫。でもそれ私のじゃないかも……」
「え?」
私は壊れたスマホを拾う。
「あ!それ俺のじゃん!」
「え!?古賀のだったの!?でもなんで古賀のスマホ持ってるの?」
「預かってほしいって古賀くんに言われて……」
あ、私古賀のスマホ壊してたんだ。
「おいどうしてくれんだよ!俺のゲームデータが!」
古賀は絶望した。
こうして私達の文化祭は終わった。
そして私が衣舞ちゃんに憑依できるのはあと一週間。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます