第5話 始まる文化祭!
――はい、じゃあ練習24番の答えを。えーっと佐々木。
「……」
――ん?佐々木?
――おい、佐々木指されたぞ。
ゆさゆさと私の身体を誰かが揺する。
「……ん?」
私は机からゆっくりと目をこすりながら起き上がる。
「なんだ寝てたのか佐々木。まあいいや、で練習24番の答えは?」
「……え?練習24番?」
私は教科書の問題を見る。
練習24 次の集合について、共通部分A∩Bと和集合∪を求めよ。
A={1,3,5,7,9,11}、B={3,6,9,12}
……は?何このトンネルみたいな記号。
「ええと……分かんないです……」
私は苦笑いしながら言う。
「ま、寝てた人は分かんないか」
と先生は笑いながら言う。しょうがないじゃん私は高校の授業なんて受けてきてないんだもん!
「じゃあ古賀。分かるか?」
「A∩B={3,9}A∪B={1,3,5,7,9,11,12}です」
「はい、正解!」
わあ、すげえ。相変わらず真面目だよね翼。
「ねえねえ、さっきの問題どうやってやるの?」
「え?あの共通部分と和集合んとこ?」
「うん!」
数学の授業が終わった後、移動教室中に私は古賀に話しかける。
「千葉には必要ない知識だろ」
「え!?ま、確かにそうだけどひどくない!?」
そうだ。衣舞ちゃんに憑依してからもう2週間。半分の時が流れたのだ。
「てかなんで授業中も憑依してるんだよ」
「久し振りに机に座ってみたかったんだけど眠くなって……」
「佐々木の評価が下がって可哀想だわ」
「そだね……ごめんね衣舞ちゃん」
私は半透明の衣舞ちゃんに向かって謝る。衣舞ちゃんはノーリアクションだった。
次の時間は音楽だった。音楽は嫌いだったな……。歌うのは好きっちゃ好きなんだけど合唱ってのは嫌いだったな。
「じゃ、合唱の楽譜持って並んでね」
音楽の先生は私達の担任で凄く優しそうな先生だ。合唱って何歌うんだろ――。
「じゃあ佐々木さん。いつものように伴奏お願いね」
「は~い……ってえええ!!」
ばばばばばば伴奏!?衣舞ちゃんってピアノ弾けるんだ。そして私はピアノは全く弾けない。ドって何?っていうレベルなんだけど!大体この合唱曲も知らないし!
「……えーっと」
ピアノの椅子には座れたが白黒が交互している鍵盤を見ると頭が錯覚してきた。
やべもうみんな準備出来てる。指揮者が私を見ていた。
衣舞ちゃん変わって!お願い!そう言いたかったが衣舞ちゃんの姿は見当たらなかった。
ヤバい指揮者が手を振ってる。もういいやどうにでもなれ!
「ひっでえ伴奏だったな」
「そんな言い方しないでよ!仕方ないでしょ!」
「クラスメイトと先生みんな困惑してたからな」
「もう思い出させないでよ!恥ずかし〜」
校舎の中庭で私達はベンチに座ってお弁当を食べていた。
どうやら衣舞ちゃんは自分でお弁当を作ってるらしくてどの料理もめちゃくちゃ美味い。
「今日はずっと憑依する気か?」
「うん!今日は1日中憑依デーだから」
「嫌な日だな……」
衣舞ちゃんから許可は貰ってるし今日は暴れまくる予定だから。絶対に衣舞ちゃんを好きになってもらうんだかた。
「5時間目何だっけ?」
「ロングホームルームじゃね?ま、文化祭関係だと思うが」
「文化祭……!」
文化祭かあ。私一回はやってみたかったんだ!いいタイミングに憑依したな私!
「何やるのうちのクラス?」
「縁日だけど」
「え、つまんな」
「あ、あとお前文化祭実行委員だからちゃんと仕事しろよ」
「ええ!?」
「ねえ佐々木さん。椅子って何個使えるんだっけ?」
「え?えーと……」
「佐々木、ここに射的の屋台置くんだっけ?」
「う、うんそうじゃない?多分」
「衣舞ちゃーん。ゴミあるから捨てといて」
「うん。って何で私が!?」
5時間目は文化祭の準備で椅子とか机を必要な分だけ片付けた。そして飾りつけに入る。明日は丸1日準備だからみんなサボり気味だ。
「あ゙ー疲れる……」
文化祭実行委員ってこんなに忙しいの?体育委員より忙しいんじゃないこれ。
あれ?確か私は。
このクラスは縁日をやる。それで射的、輪投げ、ヨーヨーすくいの屋台班とやぐら班、黒板アートで写真スポットを作る班に分かれていた。
「衣舞ちゃん。写真スポット班でしょ?」
「え?そうなの?」
そう訊き返しながら私は腕を引っ張られる。
「黒板に何描く?」
「縁日っぽく神社でいいじゃない?」
「妖怪も入れようよ!」
写真スポット班は女子しかいなかった。まてよこれ絵に自信がある人が集まってるかんじ?
「じゃあこれ描いて衣舞ちゃん」
「……え?私?」
「このクラスで一番絵上手いの衣舞ちゃんじゃん!」
えええええええ!?私絵めっちゃ下手なんですけど⁉
しかもこの絵めっちゃ難しそうじゃん。
「う、うん」
と言い私はチョークを握る。
――10分後。私は写真スポット班から追放された。
あっはっは。想造通りの結果だったよ。無職になった私はうろうろしてるとやぐら班が勝手におみくじを作り始めたので私も加わる。
「いいねおみくじ」
「佐々木さんも一回引いてみる?」
「うん!」
私が段ボールに入ってる紙を一枚取って開けてみる。
大凶
「え!?」
「あ、このおみくじ凶か大凶しか入れてないんだ」
「ナニソレ!?」
こんなんでいいのかな文化祭って……。
私はおみくじの下に目を移すと。
13番 大凶
多分悪いことが起きる。
勉強:最悪
友達:最悪
運勢:最悪
恋愛:最悪
ラッキーアイテム:ない
ドンマイ
ぜ、全部最悪じゃないか……。何が最後ドンマイだよ。
「よいしょっと……」
私はクラスで注文したTシャツを教室まで運びに行くところだった。一年生の教室って何で4階にあるんだよ……。
「お疲れ様。永音ちゃん」
「あ、衣舞ちゃん」
階段を上がってる途中で半透明の衣舞ちゃんが私に話しかけてきた。
「大丈夫?重くない?」
「あうん。全然大丈夫だよ」
私はやっと階段を登り切って教室に向かう。もう放課後だから誰もいないかな?
「ねえ、佐々木っているじゃん」
「ああ、文実の?」
「おん」
教室から話し声が聞こえた。衣舞ちゃんの名字が上がったので思わず私は聞いてしまう。
「あいつ最近めっちゃ変わったよね」
「そだよね、可愛くなったし。絵とかピアノは劣化したけど」
絵とピアノは劣化……。やばいな変な印象与えちゃったな。
「あいつさ、なんかうざくね?」
……え?
「いやそれな。一学期まで不登校だったくせにさ」
一学期まで不登校……?
「二学期の途中から急に来て授業中は寝てるし翼となんか仲良くしてるし学校なんだと想ってんだよ」
そして笑い声が後に続く。
私、衣舞ちゃんに悪いことしちゃった?私のせいで衣舞ちゃんが虐められてる?
トン、と頭の上に何かが当たった。
「お疲れ」
と古賀が優しい言った。そしてペットボトルを私にくれた。
「え?いいのこれ?」
「ああ、疲れただろ?」
「う、うん。ありがとね」
私はペットボトルを見る。オレンジジュース。私の好きな飲み物、覚えててくれたんだ。
「あとさ、あんなこと気にしなくていいから」
あんなことってさっきの話?衣舞ちゃんを悪く言ってたやつ。
そう言って古賀は教室に入って行った。
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