第4話 デート決行!

「え?」

「だから、古賀とデート出来るんだよ」

「え!?」

 家に帰った後衣舞ちゃんは部屋のベッドで寝ていた。そして起きた途端にデートの報告をしてみた。

「古賀くんと……?」

「うん。衣舞ちゃんにこっそりアポ取って来たから」

 私は同時に親指を立てると同時に顔が真っ赤になる。

「デートは来週の日曜日で9時にショッピングモール集合って古賀からメール来てるよ」

「え?私古賀くんのメール持ってないよ……」

「あ、私が勝手に追加しといたから」

「!」

 衣舞ちゃんは恥ずかしさと緊張のあまり布団の中に潜り込む。

「大丈夫だって私もついてるから!」

 衣舞ちゃんは布団の中で「うう……」と喚く。

「あと問題なのは服装だよ!」

「服装?」

「そ!学校は制服だけどデートだし休日だから絶対私服じゃん。でも衣舞ちゃんの私服って全部ダサいよ!」

「え!?」

 私は衣舞ちゃんのクローゼットを勝手に開ける。

「自分でも見てみなよ。ぜんぶ公立学校特有のダサいジャージみたいじゃん!」

「ジャ、ジャージ……」

 衣舞ちゃんは少し寂しそうな顔をする。

「だから風邪が治ったら新しい服買いに行こうよ!」

「え?わざわざ?」

「うん!まず外見で古賀を惹きつけないと今の私服じゃ惹きつけるどころか引いちゃうよ」

 くだらないダジャレを言ったあと、衣舞ちゃんは「うん……」と自信なさげに頷く。

「大丈夫!絶対アイツに好きになってもらうから!」



「おまたせ古賀!」

 前の方から俺の名前を呼ばれた。佐々木の声だがテンションが高すぎる。おそらく千葉が憑依してるんだろう。

 そんなことを思いながら俺は顔を上げる。

「遅かったな――」

 俺は佐々木の私服を二度見しそうになった。

 黒いミニスカートを着て上は制服のワイシャツを少しおしゃれにしたような感じで黒いリボンもつけていた。少し底が高い靴を履いているためか背が高くなって大人っぽく見える。

 一言で言うと――。

「ね、どう?」

「……えーっと、めっちゃ可愛い」

「ホント?」

「うん」

 千葉は「やった〜!」とくるくる周り佐々木は嬉しそうな顔をした。



「じゃ、早速行こ!」

 私は張り切って古賀の手を引く。

「……ねえ、永音ちゃん。最初って私じゃなかったっけ?」

「あ、そっか」

 そう言って私と衣舞ちゃんは入れ替わる。入れ替わった途端衣舞ちゃんは古賀と手を繋いでいたので慌て手を離した。

「よし行くか佐々木」

 こくん。といつもより元気に衣舞ちゃんは頷いた。


 ……え。何してんのこいつら。

 ショッピングモールに入ったのはいいけど何したらいいか2人とも分かんなくて。古賀が衣舞ちゃんに「どこ行きたい?」って訊いたら衣舞ちゃんは「本屋」って……。

 何、デートで本屋って聞いたことないんだが。大体古賀のチョイスが悪いんじゃ。ショッピングモールとかじゃなくて遊園地とか水族館とかもっと色々あっただろ……。

「ねえ、衣舞ちゃん。コレホントに楽しい?」

 本屋を見て回ってる衣舞ちゃんに訊く。

「え?まあ……うん」

 微妙な反応をした。

「おい、古賀。もっと違う場所に行けよ」

「……は?違う場所って?」

「本屋でデートとかおかしいと思わないのか?」

「そうか?」

 ヤバい。呆れた。2人とも恋愛について何も知らなすぎる。



 結局2人は本屋で過ごすという謎の時間が過ぎてお腹が空く時間となってしまった。

「なんか腹減った?お昼でも食べに行く?」

 古賀が本を見てる衣舞ちゃんに言う。

 お、やっと進展か?衣舞ちゃんはこくんと頷く。やっぱデートのお昼といえばレストランとかカフェとか?



「フードコートかよ……」

 なんだコレ。デートじゃなくて友達同士で買い物行ってるみたい。

 2人はそれぞれ好きなものを食べていた。何も話さずただ無言の時間が過ぎていった。なんか第三者目線で見ると知らない人同士が一緒に食べてる意味分からない光景に見える。

「そういえば午後は千葉が憑依するんだろ?」

 急に訊かれて衣舞ちゃんはビックリしながらこくんと頷く。

「佐々木ってさ、俺のこといつから好きなの?」

 衣舞ちゃんはドキッと身体を跳ねらせながら顔を赤くする。そしてスマホを取り出して文字を打つ。

 なんで今そんな質問するんだろう。そして衣舞ちゃんは古賀に画面を見せる。

「やっぱり、そうなんだ」

 古賀は納得したように言う。スマホの画面は私には見えなかった。だから衣舞ちゃんが何を見せたかも分からない。そう考えてた間に2人は食べ終わって食器を戻していた。



「あ~、楽しかったね」

 午後のデートも終わり私達は古賀と別れてそれぞれ帰った。まだ私は衣舞ちゃんに憑依していて思いっきり体を伸ばす。

「どうだった衣舞ちゃん。初デートだったんでしょ?」

「あ、うん。……楽しかったよ」

 衣舞ちゃんはちょっと寂しげな表情をする。私は「そっか、よかったね」と言いながら歩き続けると。

「ね、ねえ。永音ちゃんはさ――」

「ん?」

「古賀くんのこと、いつから好きになったの?」

 いつから好きになった?それは……。確かにいつから私、古賀のこと好きになったんだろう。私と古賀は初めて出会ったのが保育園の時で、小学校は違うけど中3で同じクラスになって。中3の3月に私は死んだ。

「うーん……。たぶん、保育園の時からかな?」

 保育園と聞くと毎回あのことを思い出す。あの雪の日を。

「……そうなんだ。そんな前からだったんだね」

「うん!保育園の時が一番仲良かった気がするな」

「へえ~」

 衣舞ちゃんはまた寂しそうな顔をする。

「そういえば衣舞ちゃんってなんの部活入ってるの?」

「え?私は美術部だけど……」

「あ、そうなんだ!じゃあ古賀は?」

「古賀くんも同じ美術部だよ」

 へーあいつも美術――。

「ってえええええ!?古賀が美術部!?」

 衣舞ちゃんと通行人はビックリする。

「マジで!?あいつ中学生の時は上手くないけどバスケ部だったのに!」

「上手くないんだ……」

 あいつが美術部か……。待てよあいつ絵上手かったっけ?

「古賀って絵上手いの?」

「え?え〜っと……ど、どうだろう……」

 この微妙な反応。さては下手なのかな?

「そうだ、明日部活ある?」

「うん、あるよ」

 よし!あいつがどんだけ下手なのか見に行ってやろ!

 

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