第10話 アリシアの遺言
遺言
親愛なる両親と
私を助けてくださるソヒョンさんも書いておいた方がいいと仰るのでここに遺言を記します。
1週間後、私は身を清めて韓方薬を飲み、あの世へ旅立ちます。これは仮死状態になるためなので、この世には必ず帰って来る事を誓います。そして幸せな家族をどん底に突き落とした口にするにもおぞましい仇、沼名不磨王を地獄の底へ道連れにして、私だけはこの世に必ず帰って来ます。
両親と弟の仇は必ず晴らしますので、天国で見守っていてください。絶対にこのままあの世に留まらないことを誓います。幸いなことに、偉大なるカン・ソヒョンさんは前世で朝鮮王朝最高の名君と謳われるハングルの父、
でも、もし万一私が命絶たれた時はこの遺書を家族のお墓へ一緒に入れてもらうよう、ソヒョンさんにお願いしています。でも、最後にもう一度だけ言いますが、私は恨みを晴らしてもう一度この世へ必ず、必ず戻って来る、だからこの手紙は私の決意書だと思っていてください。
12月吉日 東京都新宿区 オンマポチャにて。
ソヒョンはその手紙を読むと目を背けて号泣した。そしてアリシアを胸に抱いて一緒に泣いた。
「だいじょうぶだよ、きっと、きっと偉大なるセジョンテワンが守って下さる。きっとこの世に戻って来れる、さあ、お茶を淹れてやるよ。あったまって落ち着くからさ」
ソヒョンは二階の隅にある湯沸かしで
柚子茶で落ち着いて来たところで、階段を上がってくる足音がして振り向くと、そこには三日月が無表情に立っていた。
「三日月、もう片付けは終わったのかい、今日はお前にお店を任して遅くなったからオンマがウチまで送っていってやるよ」
「
「え、どんな怖い夢?」
「あの、赤鬼いるでしょ、鬼よ。鬼がナイフ突きつけられてたの。変な男がさ、こっち向いて、こいつ殺すからって」
「え、そいつどんな奴だった?」
アリシアは身を乗り出して尋ねた。
「目が細くて、髪の毛は薄くって赤ら顔なの」
「沼名だ」
「で、なんか言ってたのかい?どんな場所だった?」
今度はソヒョンが尋ねる。
「なんか崖みたいなとこ。鬼がいっぱい戦闘ヘリに乗ってそいつを捕まえようとしてた。それで人質取ってるみたいで」
「今晩も夢に見るかなあ、怖いよね、三日月さん。きっと沼名があなたにメッセージ送ってるのよ。いや待って、沼名は知られずにこの世に帰って来たい筈」
アリシアが言う。
「ひょっとして」ソヒョンが続ける。
「閻魔王のオフィスじゃないかな。三日月は感情の妨害がない。だからストレートに伝えられるって。アタシ、祈祷して閻魔王呼び出して、クレーム言ってやる。言いたいことがあるならこのソヒョンに言えって。三日月、可哀想に。」
「あの閻魔王お姉さん、ちょっとコワモテよ。ソフトに言った方がいいかも」
アリシアが忠告する。
「アタシ、大丈夫よ。また夢にみたらオンマに報告するね」
三日月は平然と言った。
つづく
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第10話までお読み頂き、感謝申し上げます。このストーリーは
私が長年温めていたものです。今回プロットをきちんと纏めて
上梓できるだけでも幸せです。よろしければ、高評価、いいね、
お願い致します。引き続きお楽しみくださいませ。
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