第80話 今日は総集編を行いましょう

 新学期。

 夏休みが数日残っていたはずなのに、なんか海に行って以来何をして過ごしていたのか思い出せない。

 ただ、一つだけ分かることがある。

 僕は現在、凄く緊張しているということ。


 ――『タイムリミットは一年半だぞ? ちゃんとそれまでに自分の気持ちを彼女に伝え、真のイケメンになるが良い』


 池君が僕にくれたチャンス。

 自分の気持ちを押さえつけてまでチャンスをくれた池君。

 僕はそれに答えたい。答えなければいけない。

 だけどそのチャンスを一年半も引き伸ばすつもりはない。

 僕は早い段階で告白することを決めていた。

 具体的にいつするのかも決めていた。

 それが現在の緊張と繋がっているのだけれど。


「とにかく……放課後だよな……」


 うん。放課後に月羽と会うまでにこの緊張を静めておかないと。







 放課後。

 いや、早すぎないかい? 時間進むの滅茶苦茶早く感じたんだけど。誰だ時間操作系の能力を使った人は。

 いつもの屋上へ向かいながら、僕はそんなことを考えていた。

 駄目だ。動悸が治まらない。こんなドキドキ感久しぶりだ。初めて月羽と経験値稼ぎする時もこんな風に緊張してたっけ。


 告白――

 気持ちを伝える行為――


 僕はそれを行う日をいつにするか決めていた。

 それは経験値稼ぎと大いに関係ある。

 現在の総経験値は『490』EXP。

 何ともキリの悪い数字。

 これがキリのいい数字になった時――

 僕は月羽に自分の気持ちを伝えることを決意していた。

 つまり……だ。

 総経験値が『500』EXPになった時、それが勝負の日なのだ。

 その勝負の日が今日である可能性が物凄く高いのだ。


「久しぶりだから、張り切ってるだろうしなぁ……」


「当然ですよ! 何しろ久しぶりの経験値稼ぎですから♪」


「うひょぉぉおおおおおい!?」


 ポツリと漏らした独り言に対し、まさか返答があるとは思わず大げさに仰け反った。

 声がした方に振り返ると、そこにはポカンとした表情の月羽が立っていた。


「何驚いているんですか?」


「いやいやいや、月羽さんが自然と気配を消すオーラを使ってきたもんだから驚いたんだよ」


「どうして『さん』付け?」


「気分だよ、月羽様」


「……むぅぅ。なんかやです」


 前々から思っていたけど、月羽は妙に敬称に拘る。

 親友宣言した日から呼び捨て以外許さないといった変な拘りを持っているようだ。


「そ、それよりさ。今日の経験値稼ぎの内容、考えてきた?」


「もちろんです。久しぶりですからね。夏休みの半分くらい使って経験値稼ぎの内容考えてきましたよ♪」


 この子の経験値脳は重症なレベルまで侵されているのかもしれない。

 やっぱ、今日告白することは避けられないのかもしれなかった。







「まぁ、夏休みの半分使って考えた、というのは嘘なんですが」


 屋上に着いて早々、まさかのダウト発言が月羽の口から放たれる。


「でも、ちゃんと経験値稼ぎの内容は考えてきましたので安心してください」


「そっか。さすが月羽だ」


 この屋上でのやりとりがとても懐かしい。

 それよりも月羽と二人きりでいる状況も久しぶりな気がする。

 海では皆が一緒だったし、バイトでも初日以外シフトが被らなかったしなぁ。


「それで? 今日の経験値稼ぎは?」


「はい! 今日は総集編を行いましょう」


 総集編……とな?

 長期アニメとかにありがちな『今までの流れを振り返る回』みたいなあれ?


「長期アニメで例えると、『一話丸ごと潰してまでやる必要が全然ないけれど、何故か不毛ながら存在するアレ』のことです」


 僕が考えていたのと同じような例で示してくれた。

 いや、僕なんかよりも総集編に対する酷評が強い気がする。

 しかしそれが経験値稼ぎとどう関係するのだろう?


「つまりは今までの振り返りと反省ですね。私達が獲得してきた経験値がちゃんと身に着いているかを検証し、きちんと成長を実感できていればEXP獲得……で、どうです!?」


 なるほど。今まで何となくたくさんのEXPを獲得してきたけれど、その場限りの経験値では意味がない。ちゃんと自分のスキルとして身についているかを調べるというわけか。

 アニメの総集編は僕的には無しだけど、この総集編は有りだ。むしろ面白そうだ。


「成功した時の経験値数はどうする?」


 僕的には10EXPくらいがいいかなと思う。

 振り返りと検証だからそれほど難易度は高くないし、数値としては無難なところだろう。

 まぁ、獲得出来たら出来たで告白イベントが待っているのだけど……


「そうですね……10EXPに……あっ、ちょっと待ってください……えと……20! 20EXPにしましょう!」


 なんだか歯切れの悪い返答だった。

 何か考えあってのいい直しだろうか?


「まぁ、いいけど……だけど10EXPでもいいんじゃない? ほら、成功すれば500EXPでキリが……」


「い、いえっ! 20EXPにしましょう! はい! 絶対そっちの方がいいです。うん。いいはずなんです」


「そ、そう? わ、分かったよ」


 妙に推すな。

 まぁ、キリの良さなんてそれほど問題でもないし、仮に今回の経験値稼ぎが成功して510EXPになったとしても告白イベントを辞めるつもりはないから別にそれでいいか。


「では振り返っていきましょう。私達の軌跡をっ!」


「…………」


「なんで『おー!』って返してくれないんですか! なんか一人で盛り上がって恥ずかしいじゃないですか!」


「いや、僕もなんか今の月羽の言葉に恥ずかしさを憶えて返答に困ったというか」


「それでも乗ってきてください! 私一人恥ずかしいの嫌です!」


「じゃあ月羽も恥ずかしい言葉禁止ね」


「ぅぅううううう!」


 ああ、これだ。

 このノリ、この安らぎ。

 相手が月羽だからこそそこに安らぎが存在するんだ。

 これからもずっとこの子と二人で居たい。

 ……これが、好きってことなのかな。


「ぅあああああああっ!」


「ど、どうしたんですか? 急に蹲って」


「い、いや、今の月羽以上に恥ずかしいことを心に思ってしまったもんだから……」


「あー! なんですかそれー。言ってくださいよー。笑ったりしないから言ってくださいよー」


「んー、まー、後でね」


 経験値稼ぎに成功した時に言うよ。

 絶対に言う。

 ヘタレのあの頃中学時代とは違うってことを見せつけてやりたいから。

 だから今は経験値稼ぎを一生懸命楽しもう。







「一郎君、初めて経験値を獲得した時のことを憶えていますか?」


「そりゃあねえ。アレが一番印象深い経験値稼ぎだったかもしれない」


 月羽から経験値稼ぎに誘われた次の日。

 僕らの初めての経験値稼ぎが始まった。


 ――『第一回目の経験値稼ぎの件についてですが……』


 声を震わせながらそう言っていたあの頃がすでに懐かしい。


「二人っきりでのお話……でしたね」


「うん」


 五分以上の会話持続を目標に会話すること。

 それが最初の経験値稼ぎだった。


「あの時は会話のキッカケが無くて大変だったなぁ」


「もしかして苦痛でした?」


「いや、そういうんじゃないよ。僕ってまともに異性と会話したのがアレが初めてだった気がするからさ。照れ臭かったというか、緊張していたというか」


 玲於奈さんと付き合っていた頃もまともな会話なんて無かったしなあ。

 むしろ向こうから『質問してくるな』みたいな条件出されるくらいだったし。

 なので月羽が初めてまともにお話した女子なのである。


「私も緊張していたんですよ。きっと一郎君以上に緊張していたと思います」


 あの時の月羽は声がドモっていたからな。もしかすれば僕もそうだったかもしれないけど。

 今となればいい思い出である。


「でもまぁ、あの時と比べる随分進歩したもんだよね。今や全く緊張なんてしないもん」


「なんか素直に喜んでいいのか微妙な表現ですが……でも確かに緊張しないで話せるっていいことですよね」


 あの時は5分間が非常に長かった。

 でも今は5分間の会話なんて楽勝すぎて話にならない。

 これも進歩って呼べるのかな。490の経験値が確実にスキルとして身についているのだろう。


「でもあの頃と変わらないことも一つあるんですよ?」


 片目ウインクしながら悪戯っぽく笑う月羽。


「それは?」


 小首を傾げながら訪ねる。


「一郎君とのお話は……あの時も……そして今も……変わらずに楽しいんです」


「そ、そう……それは……ありがとう」


 思わずお礼を言ってしまった。

 どうしたんだ? 今日の月羽は。いつもの五割増しくらい恥ずかしい言葉を連呼しているぞ。

 妙に素直な言葉を受け取り、きっと僕の顔は真っ赤になっているだろう。


「二人きりでの会話経験値はもう一度ありましたよね」


「うん。それも懐かしいなぁ」


 二度目の会話経験値稼ぎも中々印象深い。

 なんといっても僕と月羽が互いに名前で呼び始めるキッカケとなった経験値稼ぎだから。


「あの経験値を境に親友になれたんだよね」


「違います。私と一郎君はもっともっと前から親友でした」


 相変わらずそこは譲らないのか。

 親友うんぬん言いだしたのは沙織さんを説得することを目的とした経験値稼ぎがキッカケだったけど、月羽の中ではもっと前から親友と思ってくれていたのだろうか。

 嬉しいような照れ臭いような。思い返してみると赤面しざるを得ない内容が多いなぁ。


「そういえばさ、あの日、僕がこういったの覚えてる?」


「うっ……」


 閥が悪そうに視線を逸らす月羽。

 この反応は覚えているな。

 僕はあの時、こういった。


    ――『いつか月羽も僕を呼び捨てにしてくれる日を楽しみに待っているよ』


 未だにそれが実現された日は来ていない。

 密かに楽しみに待っているのだけど、実現される日はまだまだ遠いかな?


「い、一郎……」


 おっ?

 月羽が頑張ろうとしている。

 ここは黙って暖かい目で見守ってみよう。


「一郎………………くん」


 知ってた。

 たぶん、駄目だろうなと思いながら見ていたらやっぱり駄目だった。

 でも以前よりは惜しい感じはある。

 これは期待できるな。君付けも捨てがたい感じもあるっちゃあるけども。







 僕と月羽の経験値振り返りは続く。

 ていうよりは単なる思い出話に成り代わっている感もあるけど、楽しいならそれでいいのだ。


 ゲーセン経験値稼ぎ、映画館での経験値稼ぎ、女子力を身に着けた時のこと、それにリアル迷いの森のことや学食での会話ミッション失敗のことなど上手くいかなかったことも振り返った。


「今ならさ、学食でのお話くらい普通にできそうな気がするね」


「そう思って二回目臨んだはずですが出来なかったですよね。でも確かに今なら……うん」


 まぁ、二回目の学食では暗黒時代の青士さんの乱入があったからな。

 全盛期のあの人を前に僕らは逃走しかできなかった。

 でもそういった変なイレギュラーさえなければ今なら楽勝な気がするな。


「えへへ。これも成長の証なんですかね」


「そうだね。思えばこの5ヶ月で凄く成長できた気がする」


 経験値稼ぎをする前の自分。5ヶ月間経験値稼ぎをした後の自分。

 まるで別人のように変わることができた手ごたえが確かにある。


「リアル迷いの森探検も今なら出来るかな?」


「…………」


 あっ、黙っちゃった。

 さすがリアル迷いの森。トラウマ度が違う。


「い、一郎君がずっと手を握ってくれるなら……で、できます!」


「へっ?」


「だ、だからっ! また一郎君が手を握ってくれるのでしたら……頑張れる気がします!」


 『また』と彼女は言った。

 あぁ、そうか。そういえば前に二人で出かけた時、手を握り合うことを経験値稼ぎにしたことがあったっけ。

 一時間繋ぎ続ければ10EXP。確かあの時は五時間繋ぎ続けて50EXP獲得したんだよな。

 月羽と手を繋ぐのは最初恥ずかしかったが、今やすごく自然なことのように繋ぎ合うことができる。

 それに月羽と手を繋ぐと自然と勇気が沸いてくる。たぶん、隣に居る子を守ってあげたいという気持ちが沸いてくるのだろう。以前の手繋ぎ経験値稼ぎの時は守ってもらっていたのは僕の方だったけど。

 しかし、ちょっと手を伸ばせば繋げそうな距離に居るだけにこれまた恥ずかしい。


「き、今日の経験値稼ぎはなかなか照れ臭いですな」


「ま、まったくですね。ちょっと暑くなってきました」


 照れ臭くて互いに視線だけ逸らす僕と月羽。

 しかし、距離の近さは変わらない。


「そういえば互いの距離も近くなったと思わない?」


「~~~~っ!」


 ふと思ったことを口にした途端、月羽は更に恥ずかしそうに俯きだした。

 あ、あれ? そんな心を惑わすようなこと言ったつもりはないのだけれど。

 その真意を月羽はポツリと呟くように漏らした。


「い、一郎君はあまり動いていないことも気付いていますか?」


「えっ?」


 言われてみて初めて気付く。

 経験値稼ぎを始めた当初、僕はベンチの右端に月羽はベンチの左端にいた。

 そして現在、僕と月羽は肩が触れ合いそうな距離にまで近づいている。

 その位置は……若干右端寄りであった。

 つまり二人の距離が近づいた、というよりは月羽が近づいてきてくれた、と言った方が正確だったのだ。


「い、一郎君ともっと仲良くなりたかったから密かに近づいていたんですよ。だけど一郎君の方からは全然近づいて来ないんですもん。私と仲良くなりたくないのかもとか思っちゃっていたんですよ?」


「い、いや、そういうわけじゃないんだ。その……照れ臭かっただけで」


「わ、私だって照れ臭かったです」


「…………」


「…………」


 今日一番の赤面タイムだった。


「は、話を変えましょう!」


「そ、そうだね! それが良い! うん、そうしよう!」


 この照れ臭さを脱するには話題転換以外の方法を知りえない二人だった。







「後半はみんなで一緒に経験値を獲得した感じがあるよね」


「そうですね。こっそりと経験値を稼いだ気がします」


 きっかけは沙織さんの授業特訓、

 その中でまず小野口さんが加わり、あの青士さんまで加勢し、最後には池君までもが協力してくれた。

 改めて見るとすごいメンバーだよなぁ。学年の秀才小野口さんに、ラスボスの貫録を持つ青士さん、そして学内のアイドル的存在と言っても過言ではない超イケメンの池君。

 先生の授業特訓のみならず、皆にはそれからもたくさんの経験値稼ぎに関わってもらった。

 期末試験、アルバイト、これらはみんなが居ないと獲得できなかった経験値だっただろう。

 みんなのおかげで後半の経験値稼ぎはほとんど失敗が無かった。


「不思議ですね。アレだけ人との関わり合いが苦手だった私が――私達が、これだけ凄い人達に囲まれながら勉強したり遊んだりアルバイトしたりしていたのですから……」


 このさりげなく『私達』と言い直されるのも久しぶりな感覚だ。

 僕達は境遇が非常に良く似ているから、色々なことに共感できる。それが二人が上手く行っている理由の一つかもしれない。


「超強力助っ人アリの経験値稼ぎも良かったよねぇ」


「そうですね! 皆さん心強いです! でも……」


「ん?」


 またも赤面しながらモジモジし出す月羽。

 そんな様子の彼女は上目使いで恥ずかしげに照れ臭い一言を申してきた。


「でも……私は一郎君と二人だけで行う経験値稼ぎの方が……好きかもです」


「うん。まぁ……僕もそうかな……」


 助っ人が居ても基本二人で経験値稼ぎ行うのは揺るぎ無いが、二人きりのシチュエーションでは無くなっていた。

 常に周りに誰かが居てくれるというのは新鮮で楽しかったけど、月羽と二人きりで居る方が安心するというのも事実だった。


「本当に色々なことがあったよね」


「はい。490のEXPが私達を強くしてくれているのを改めて実感しました」


 490EXPというのは僕達が作り出した空想の数字でしかないけれど、僕らはその数字に確かな手ごたえを感じていた。

 RPGの歴代主人公達が経験値を重ねて強くなっていく理由も前よりは理解できた。







 4月、経験値稼ぎを始める前の僕は一つの疑問を抱いていた。


 ――リアルでは敵を倒しても経験値は手に入らない。

 ――ていうか敵を倒す度胸もない。

 ――そもそも経験値が――あるのだろか?


 そして今の僕なら自信を持って言える。

 リアルにも経験値はあるのだと。

 要はキッカケなのだ。

 経験値に置き換えることは何でも良い。体力作りでも勉強でも趣味でも……

 自分は頑張ったっと感じたらそれはもう経験値なんだ。

 僕らの場合、経験値を『成長』に置き換えていた。

 そのきっかけをくれたのは月羽だった。


    ――『じゃあ、私と一緒に……経験値稼ぎをしてください!』


 この言葉を僕に向けてくれなければ今の僕は存在していなかっただろう。

 中学時代のトラウマを引きずって、高校デビューにも失敗した僕は月羽に助けられた。


「一郎君」


 月羽は静かに僕の名前を呼ぶと、ゆっくりと僕の胴元に手を伸ばしてきた。

 もうおなじみの儀式。

 僕は少しだけ笑みを零すと、伸ばされた手のひらに向かって、自分の手を重ねる。


    パチィィィィィぃぃぃぃぃんっ!


 景気の良い音を鳴らす。

 その音を聞くと月羽も満足げに微笑んでいた。

 今までの経験値稼ぎを振り返って、成長の実感を得られた僕らは新たに20EXPの経験値が加算された。

 これで総経験値510EXP。

 経験値数が500EXPを超えた……つまり、夏休み後半から企画していた告白イベントへ移行する時がやってきた。


 心臓の音が聞こえそうなくらいドキドキしている。

 『別に今告白しなくてもいいんじゃないか』と悪魔の声が囁いている。

 思わずその声に頷きそうにもなったが、断固たる意志で誘惑の声を振り払う。


 ……よしっ!

 今更ウダウダしていても始まらない。

 時間を引き延ばせば引き伸ばすほど告白を後伸ばししてしまうような気がする。

 言うなら……早い方がいい!


「つ――」


「一郎君」


 うぉぉ。遮られた。

 何と言う間の悪さ。

 でも月羽の方が一瞬早く僕を呼んでいたみたいだから、とりあえず聞き側に回ってみた。


「どうしたの? 月羽」


 そう聞いてみると、彼女はまたも俯き加減になりながらモジモジしていた。

 今日はやけに照れている様子が多いな。

 今から告白しようとしている僕も同じように見えているのかもしれないけど。


「そ……その……そのですね……その……」


 指を突き合いながら言いづらそうに言葉を濁している月羽。

 そういえば初期の月羽はこんな感じだったなぁと思い出が過る。

 しかし、どうしたのだろうか? 今更そんな遠慮がちになるようなことないだろうに。

 親友が相手でも言いづらいことがあるのかと少し残念になる。

 なんだか告白前の僕よりも緊張しているように見えた。


 そして彼女は意を決するように言葉を吐き出した。


「私……一郎君のことが……ずっと好きでした! だ、だから、恋人に……なって……ください」

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