第18話

「来週から始まる林間学校の、班割りやるよー。一班四人ね」


 教壇に立つ林先生の指示に皆が盛り上がる。

 皆一斉に立ち上がり、俺の方に向かってきた。


 はあ……。


『彰人様!!』


 皆、俺の班に入りたいみたいだ。

 もう二人は決まっているんだけどなあ。断れない限り。


 でも、どうしようか?

 女子に囲まれ過ぎて自分の席から動けないんだけど。


「すみません、通りますね」


 女子の集団を掻き分けて彼方が正面からやってきた。


「彰人さん、一緒の班になりませんか?」


 あ、良かった。彼方もそのつもりだったんだ。


「いいよ」


 よし、一人決定。


 もう一人は、自分の席から動いていないだろうから、こちら側から動かなといけない。

 でも無理やり押し通ると触れることになるしな。いけないこともないけど、まだ慣れないから避けたい。

 だから、彼方を行かせたいんだが、二人は仲が良くないしな。

 結局動くしかないか。


「あきと、一緒の班がいい」


「うお」


 突然、正面から天音が現れた。

 予想外のことに驚いてしまった。


「もちろん。彼方もいいか?」


 こっちから向かおうとしてたところなんだけどな。


「大丈夫ですよ」


 彼方が頷く。

 よし、三人目。


「で、最後の一人どうする?」


 俺一言で教室が静まり返る。

 皆、期待するような眼差しでこちらを見ていた。


「ここまでは予想通り……っ。最後の一人に選ばれたい!」


「お願い、神様!」


 皆が祈り始めた。え、そんなに俺と同じ班になりたいのか?

 選んだら選んだで興奮して何かしてこない?

 でも、彼方と天音以外に知り合いいないしな。

 俺の交流関係薄いしな。二人の他には、佐藤先輩に東城先輩と偶に話すというか追われる屋上の子しかいない。

 ちなみに、屋上の子の名前は未だに知らない。


「二人とも、誰か入れたい人いる?」


 俺は、同じ班の二人に聞いてみることにした。


「私は特には」


「いない」


 二人は首を横に振った。

 まあ、二人がクラスメイトと仲良さそうに話していたところ一度も見たことなかったしな。この結果は、なんとなく予想はしていた。


 じゃあ、この中から選ばないといけないのか。


 俺は集団に目を向ける。


「あ、すみません、一人いました」


 彼方が思い出したようで声を上げる。


 俺は彼方に顔を向ける。


「その子は?」


「私のルームメイトです。性格も良いですし誘ってみてもいいですか?」


 彼方がそう言うのなら信頼できる人なんだな。


「じゃあお願い、彼方」



◆◇◆◇◆◇



「うん、いいよ。この班に入るよ」


 彼方が連れてきたクラスメイトが笑顔で頷く。


「池田彰人です、でこっちが鶴原天音。よろしく」


「あはは、知ってる。二人とも有名だもん。私は斎藤実里、よろしくね」


 彼方の言う通りいい人そうだ。


 こうして、俺たちの班はメンバーが揃った。

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