第11話

 教室のスライドの扉とは違う押し引きの扉。

 緊張しながらも俺はノックする。


「はーい」


 中から間の抜けた明るい声が聞こえる。扉を引く。


 中には、入学式に挨拶をしていた生徒会長が正面の大きな机に座っていた。

 そして、俺から見た右手の方にはソファーがあり、そこには長身の女性が腰を下ろしていた。


 生徒会長は優しそうだけど、もう一人の方が怖そう。

 俺、怒られるのかな?何かしたかな?


「失礼します。1年2組の池田彰人です。生徒会長に呼ばれたということで来ました」


「お、来た!よし、君を風紀委員長に任命します!!」 


 生徒会長が椅子から降りて、満面の笑みで宣言した。


「え?はあ?」


 いきなりすぎて、俺は呆けてしまった。


「会長、説明不足です。彼が困っているでしょう」


「そっか。今年の1年生の体力テスト一位の子を風紀委員長にしようってことで、君になりました!おめでとう!!」


「ええ?」


 一人だけ盛り上がって大きな拍手をする生徒会長。


 なんか、入学式のときと全く印象が違うんだが?もっとクールな人かと思ってた。


 というか、拒否権はないのか?


「池田さん、嫌なら断ってもらっても大丈夫ですよ。ですが今のところ、これと言う人材がいないので、承認していただけたら大変助かります」


 ……そんな言い方されたら断りづらいです。


「仕事内容を教えてください」


「学校にいる時に生徒同士の争いが起こったときの仲介と、クラスに一人いる風紀委員の統括です。ちなみに、仲介と言っても警備員さんもいるので危険な目に遭う可能性はほぼないです。統括とも言いましたが、会議のときに司会をするだけです」


 なるほど。思ったよりも簡単だ。それに、プライベートの時間はあまり削られないみたいだ。

 それなら、なってもいいか。


「分かりました、引き受けます」


「うぅーーっ、やったぁ!」


「ありがとうございます」


 一人はその場で飛びはねて、もう一人は少しだけ口角を上げた。


「自己紹介がまだでしたね。私は2年2組、東城とうじょう真奈まなです。副会長をやらせてもらっています。これから、よろしくお願いします」


「3年2組の佐藤さとう灯織ひおりだよ。生徒会長です!よろしくね!」


「はい。よろしくお願いします」



◆◇◆◇◆◇



「失礼します」


「ばいばーい、彰人くん。たまに生徒会に顔だしてよ?」


「はい」


「池田さん、お気をつけて」


「はい。東城先輩もお仕事頑張ってください」


「ありがとうございます」


 二人に頭を下げて、生徒会室を後にする。

 窓の外を見ると空は赤くなっていた。


 あの後、交流会みたいな感じで色々と話した。


 生徒会には後一人書記がいるそうだけど、全く顔を出してないらしい。

 佐藤先輩は仕事をほとんどやらないらしくて、東城先輩がやっているらしい。

 佐藤先輩はだらしない。

 東城先輩は見た目に反して優しい。


 入って後悔することはなさそうだな。


 俺は明るい気分で靴箱を開く。


「ん?手紙?」


 靴箱の中に一通の手紙が入っていた。


 天音かな?でも、天音がわざわざ手紙なんて書かないよな。

 だとしたら彼方か。


 俺は手紙を開いて中に目を通す。


「ッ!」


 心臓がキュッと締まった。



 “好きです。明日の放課後、屋上で待ってます”

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