第3話

 今日は、入学式と寮の部屋番号を伝えて学校は終わりみたいで、荷物を持って寮の部屋へ移動していた。


 部屋はなかなか広い。

 大の字で寝転べるベッドが二つ並んで、二つ分の棚がある。

 勉強机も二人分あって、パソコンまである。

 さらに、お風呂もある。寮に公衆浴場あるのに、何故かお風呂にもある。


 朝、夜には食堂にて一流シェフの作った料理が出てくるらしい。


 その他、娯楽施設が多数。


 ……どこかの旅館かな?


 いやぁ、最高に居心地良いな。女性がいなければな。

 どんだけ居心地良くても、周りに女性しかいない時点で全て帳消しされるんだよ。

 公衆浴場は行けないし。


 何より、部屋には俺だけじゃなくてもう一人いるんだよな。


鶴原つるはら天音あまね。よろしく」


 気だるげな声で自己紹介された。

 黒髪ショートボブの美少女。瞳は眠そうに閉じたり開いたりを繰り返している。


 言うまでもないが、もちろん女子だ。なんなら、今スカート着ている。


「池田彰人。よろしく」


「……眠い。おやすみ」


「え?あ、うん、おやすみ」


 鶴原さんがベッドに横になる。


 ……マイペースだな。それに、まだ昼なんだが。


「ふぁあ……俺もちょっとだけ寝ようかな」


 穏やかな表情で寝ている鶴原さん見たら、眠たくなってきた。


 夜ご飯の時間まで、まだあるしな。


 俺は鶴原さんの隣のベッドに寝転んだ。



◇◆◇◆◇◆



「んー、くぅちゃん」


「――んむっ!?」


 突然、頭が何かに包まれて俺は目を覚ました。

 目を開くと、ピンク色だった。


 柔らかい。

 そして、息ができない。


 俺は、命の危機を察知してすぐにもがいた。


「だめ、暴れないで、くぅちゃん」


 “くぅちゃん”って誰?

 つか、この声は鶴原さん?


 ……つまり、俺は鶴原さんに抱きつかれてるってこと?


 ――ゾクゾク


 寒気がした。


「ちょ、ごめん!」


 俺は半ば無理やりに鶴原さんを引き剥がした。


 どうやら、柔らかかったのは鶴原さんのお腹のようだった。ピンク色は鶴原さんの服の色。


 鶴原さんの瞳がゆっくりと開く。

 そして、目が合う。


「……あれ?くぅちゃんは?」


「くぅちゃんとは?」


「家に忘れてきちゃったクマの縫いぐるみ」


「家に忘れてきちゃったのなら、ここにはないだろ」


「そっかぁ」


 鶴原さんがまた瞳をゆっくりと閉じた。


 ……よく寝るなあ。

 というか、ここ俺のベッドね。


 でも、起こすのも悪いし、このままにしとこ。


「あ、やっぱりいた、くぅちゃんだ」


「え?」


 背後からお腹にかけて細い腕が回る。


 喰われるっ!


「くぅちゃん。くぅちゃんくぅちゃんくぅちゃん」


 背中に頬擦りされてる。


 鳥肌立ってきた。


「つ、鶴原さん!俺は縫いぐるみじゃないんだけど!?」


「んー、あと五分」


「絶対嘘だろ!!」


 実際に、夜ご飯の時間まで起きませんでした(起こした)。


 

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