第20話 勉強会の参加者

「これからどうなるんだろうな〜...」


 そう思いながら寝る用意をする。明日も宮橋さんと一緒に登校する事を約束した。それに文句があるわけじゃない。また宮橋さんに周りが群がることが心配だった。宮橋さんは割り切っていたと言っていたがそう簡単でもないだろう。


「考えてもしょうがないけど」


 いくら考えた所でどうなるかは分からない。そう言ってなんとか自分を納得させたあと、眠りについた。


 そして金曜日になった。それまでの間は良くも悪くもあまり変わらなかった。今日もだが毎朝宮橋さんと一緒に登校し、やはり学校に着くと周りからは睨まれたりもした。そうなった時は敬斗や藍沢さんが注意してくれるがあまり変わらなかった。全員から睨まれるわけではないがどうしても壁を感じてしまう時がある。


 変わった所は宮橋さんと一緒にお昼を食べることになったことだろう。宮橋さんと電話で話した次の日、つまり水曜日のお昼時間に急に宮橋さんがクラスに来て藍沢さんと話し始めた。すると急に藍沢さんが振り返ってきて"一緒に皆でお昼ご飯食べようよ!"と誘ってきたのだ。断る理由もないのでその日から敬斗と一緒に学食で食べることになった。


「なぁ、蓮。明日って予定あるか?」


 皆と一緒に食べていると敬斗がそう尋ねてきた。


「特にないけど。前言ってた勉強会?」

「おう。明日なら親の仕事が休みで弟の面倒を見てくれるんだ。だから明日は自由だしちょうどいいなと思って」

「え、レンレンに勉強教えてもらうの?いいな〜」

「藍沢さんも...」

「ダメだ、お前が来たら絶対に勉強ができない!」

「え〜、真面目にやるよ。失礼な!」

「いや、根拠はないがお前がくると絶対に集中できないからダメだ!」


 言い合い始めた二人はさておき、宮橋さんの方を向くと宮橋さんも敬斗と藍沢さんのことを見て笑っていた。すると不意に目があった。


「「!」」

 

 目があった宮橋さんは急に顔を赤くして目を逸らして自分のお弁当を食べ始めた。ずっと見ているわけにもいかないので目線をずらして質問をしてみる。


「宮橋さんは勉強の方、どうですか?」

「わ、私は大丈夫です!」


 急に話しかけられてびっくりしたのか思いの外大きい声で返事がきた。声の大きさに面食らっていると


「す、すいません、急に大きい声を出して...!」

「いえ、大丈夫ですよ」

「さ、桜庭さんはどうなんですか?」

「俺もなんとかなっています。時々詰まることもありますけど」

「蓮でもそうなのか...」

「でも本当にレンレンってすごいよね〜。急に転入してきたかと思えば全然詰まっている感じしないし」


 宮橋さんと話していると敬斗と藍沢さんも会話に加わってきた。


「いくら自分で勉強してきたといえどやはり限度があるんだよね。基礎的な内容はわかるんだけどやっぱり応用となると間違えたりどうやって解いたら良いのかわかんなくなるんだよ」

「それでも基礎が分かってるんだったらすげぇよ」

「ねぇ、やっぱり皆で勉強しようよ?皆不安なところがあるんだったらお互いが苦手なところを教え合おうよ!どう、純恋ちゃんにレンレン」

「私は大丈夫ですけど...」

「俺は皆に合わせるよ?」

「ね、二人ともこう言ってるから!お願い!」

「お前がちゃんと集中してやるならいいぞ?」

「え、本当に?!やった〜!」


 ということで明日の勉強会に急遽参加者が増えた。帰ってから掃除と明日のご飯の用意なんかもしなきゃなと考えていると


「じゃどこで勉強する?図書館、それともカフェ?」

「図書館だと喋れねぇから教えあうには不向きだな。カフェだとうるさくないか?」

「え、俺の家じゃないの?」

「「「え?」」」

「いや、すでに敬斗と俺の家で勉強することが決まってたから。てっきりそのまま俺の家でやるのかと」

「レンレンの家か...」

「嫌なら場所を変えても...」

「めっちゃ楽しみ〜!じゃレンレンの家で!」


 なぜだか藍沢さんのテンションがすごい上がった。そんなに家に来たかったのかと持っていると


「なぁ、大丈夫か?無理しなくても違う所で良いんだぞ?」

「えぇ、負担が大きすぎませんか?」

「大丈夫だよ。ただそんなに広くないからちょっと窮屈かもしれない」

「まぁ勉強だけだしなんとかなるだろ」


 そうやって家の住所を伝えた。家を決めた時にセキュリティがしっかりしているところを選んだのでついたらチャイムを鳴らしてほしいことなどを言っているとお昼時間の終わりに近づいていた。


 教室に戻っている途中に藍沢さんが小さい声で話しかけてきた。


「レンレン、ありがとうね。勉強会に入れてくれて。本当に成績あげたいから助かったよ」

「ううん、全然大丈夫。むしろそういったモチベーションがある方が捗るから大歓迎だよ」

「そっか、ありがと」


 なぜ成績を上げたいかは分からなかったがやる気があるなら明日もちゃんとするだろう。敬斗も藍沢さんのやる気に当てられてより集中できそうな気がするのでいい方に転んで良かったと思った。


 その後は午後の授業を受け、放課後の時間になった。今日は久保先生との話すことが決まっているので教室を出ようとすると


「蓮、帰ろうぜ」

「ごめん、久保先生と話す予定があるから」


 敬斗に誘われたが予定があることを伝えるとまた明日と言って教室から出て帰っていった。そこで宮橋さんと一緒に帰る約束をしていたことを思い出した。


「連絡しなきゃ...」


 その場で携帯をポケットから取り出し宮橋さんに今日は予定があるので一緒に帰れませんと送った。そのまま携帯をポケットにしまい職員室に向かった。


「あ、来てくれたね。今日も前みたいにどうしてるか知りたいだけだから。それで、最初の1週間はどうだったかい?」


 ここで久保先生にクラスの皆の事を言うか迷った。ここで言うとたぶん久保先生はクラスの皆に注意するだろう。しかし言う事でまた何かされると困る。たぶん言わないほうが良いだろうと思い当たり障りのない事を言った。


「そっかそっか、うまくやっているようで何より。授業などで困っていることは無いかい?」


 基礎は出来ているが応用が少し心配な事と明日に敬斗、藍沢さん、そして宮橋さんと集まって勉強会をする事を伝えた。


「確かに応用問題は難しいからね。今ではネットとかで解説とかもあるからそれらを参考にしてみてね。明日の勉強会、頑張って。それにしてもこんなすぐに数人と仲良くなれるとは思ってなかったよ。すごいね!」


 その後は来週からの事を話したが特に変わることはなく、これからも頑張ってほしいと言われた。職員室から出て校舎を出ると門の近くに酷黙が出来ていた。何かあったのかとそこに向かうと宮橋さんを中心にまた人が群がっていた。


「いい加減にしてください。私は人を待っているんです」


 おそらく今回も宮橋さんが待っていてくれたのだろう。しかしそれを見つけた人達が話しかけてこんな状況になってしまったように見える。


「あ、桜庭さん。帰りましょう、に!」


 そういって宮橋さんが近づいてきて隣に立って駅の方に向かって歩き始めた。宮橋さんに絡んでいた人たちはまだ何か言っているが気にしている様子はない。


「明日の勉強会、楽しみにしていますね!」


 そんな笑顔で言われたら気にする余裕なんてなかったのだ


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 こんにちは、Ariesです。


 次回は勉強会です。しかし、高校生が集まって勉強会。スムーズに行かないことがほとんどだと思います。最近はちょっと暗めなので少し明るめにする予定です。


 次のエピソードも楽しんでいただけると幸いです。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る