第19話 これからの約束
『聞いてくれますか、私の話?』
そう言って宮橋さんは話し始めた。
『今日の朝、駅で桜庭さんを待っていたじゃないですか?まぁ、もう分かっているとは思いますが一緒に登校したかったんです。高校に入ってからは誰かと一緒に登校した事がなかったので』
「藍沢さんとは登校しなかったんですか?」
『葉月ちゃんとは家が真逆の方向なので、一緒に向かうことは出来ないんですよ』
「あ、そうなんですね」
『はい、なので誰かと一緒に登校する事が一つの楽しみだったんです。中学からの友達は葉月ちゃんしかいなくて、中学も違う所だったので新しいお友達と登校したいな〜と思っていたのですが、高校に入ってからは全く友達が出来ませんでした』
彼女から今まではかなり寂しかっただろう。中学からの友達は藍沢さんしかいなくて、新しい友達と一緒に毎朝楽しく登校しようと思ったら周りから避けられる。
『なので毎日があまり楽しくなかったんです。学校に行っても周りからは避けられて、必要最低限な会話しかありませんでした。なのに周りは私の話題で持ちきりなんです』
「そうだったんですね...」
『えぇ、自分でも言うのもなんですけど容姿は整っている方だと思います。そして入学してすぐに学力を図るテストがあったんです。桜庭さんは各個人の学力でクラス分けされている事は知っていますか?』
「はい、聞いたことがあります。それって本当なんですか?」
『私も聞いただけなんですが本当だと思います。現にテスト後に葉月ちゃんと話し合ったんですが出された問題が違ったんです。私と私のクラスに出された問題の方が難しかったんです』
「そうだったんですね」
『私、そのテスト満点に近い点数を出したんです。そこから周りが私を見る目が変わったんです』
勉強も出来る美少女となるとその日の話題はそれで持ちきりだろう。これは日本だけでなく、海外でも同じだった。しかし、海外だとそういった人は仲間はずれにはされない。むしろ、グループの中心となって皆とワイワイやっている。むしろ宮橋さんの状態になる方が珍しいだろう。
『初日はいろんな人が話しかけてきてくれたのに次の日には挨拶してもあまり返事はなく、なぜ話してくれないのか聞いてもはぐらかされただけでした。葉月ちゃんだけは違ったんですが葉月ちゃんの友達も私を見ると直ぐにどこに行ってしまうようになったんです。そこからあまり学校でも葉月ちゃんと話さなくなってしまったんです。葉月ちゃんに迷惑はかけたくなかったので』
宮橋さんも思う所があったのだろう。自分が話に行けば友達まで一人になってしまう。
『なのでそこからは葉月ちゃんと学校ではあまり関わらなくなったんです。中学から一緒なのでよく話したりはするんですがお互いの家が少し遠いこともあってあまり遊びとかにも行けなくて...』
「そうだったんですね...」
相当辛かったのだろう。最初は新しい高校で楽しく過ごせることを夢見て入学し、新しい人ともコミュニケーションをとってやりたい事をして。しかし実際はその容姿と成績周りからは避けられてしまった。
『だから桜庭さんと会ったときは本当に凄く嬉しかったんです。スーパーであった不思議な男の子がまさか同じ高校だとは思いませんでしたから』
「俺も宮橋さんと同じ高校だとは本当に思いませんでした」
『なので放課後に門の所で待っていたんです。その時は私は桜庭さんなら一緒に帰ってくれると思ってたんです。私の事をスーパーで助けてくれた人だから、と思って』
『でも、謝らなきゃいけないこともあるんです』
「あ、謝らないといけないこと、ですか?」
『はい。あの日、私は桜庭さんが学校での私の事を知らないのを良いことに桜庭さんに近づいたんです。そして桜庭さんが優しいだろうと思って。決して、あの寒さの中に女子を置いて帰るような人じゃないだろうと思って。そして今日の朝も同じ理由で待っていたんです。なので、本当にごめんなさい』
「あ、あの... 謝ってもらうことじゃないですよ?だって、俺も一緒に宮橋さんと帰れて嬉しかったですし」
『そう言ってもらえて嬉しいです。でも、ごめんなさい』
許す許さない以前に宮橋さんが罪悪感を覚えてるのだろう。にしても蓮からしたら純恋のような美少女と一緒に登下校できて幸せだったのだが。
「であれば、また明日一緒に登校してもらえますか?」
『...え?』
「今日の朝、宮橋さんと一緒に登校できて凄く楽しかったんです。なのでまた明日一緒に学校に行きませんか?」
『...良いんですか?またクラスの方達から睨まれてしまいますよ?』
「し、知ってたんですね...」
『葉月ちゃんから聞きました。それに、今日の放課後に集まった人達が言っていた事からなんとなく想像はついたんです。あの人達、私になんて言ってきたか分かりますか?』
なんだろう?ただろくでも無いことなのは確かだ。
『なんであんな奴と一緒にいるんですか?って聞いたきたんです。本当に頭に来ましたよ、あの時は。今まで私とは関わろうとしなかったくせに私が桜庭さんと一緒にいたら文句を言ってくるんですから』
「それは災難ですね...」
『私が一緒に居たいからですって答えたらまだ文句を言ってきたのでそこで言ってやったんですよ。私が関わりたくても関わらなかったくせに今更私に関わらないでください、って』
「...」
『その後もずっと何かを言ってきたので... もう途中で逃げるように離れたんです。私の態度や返答などでこれでもうクラスの皆と仲良くなれないと思いますが。最初は頑張って色々しましたがもう気持ちが切れちゃいました...』
どう反応したら良いかが分からなかった。宮橋さんだってこんなことを言って周りとの関係を壊したくなかったはずだ(元々良い関係ではなかったが)。しかし言ってしまったことによりこれ以上良い方向には向かないだろう。
「...本当に良かったんですか?それで」
『...もちろん良くはないです。でも、仕方のないことなのかなって割り切ってます』
出来ることなら避けたかった。しかし気持ちが切れてしまい割り切ってしまっているのならあまり出来る事はないだろう。
「宮橋さん、さっきの返事、もらえますか?」
『え?』
「これから一緒に登下校しましょう、宮橋さん?」
『でも本当に、本当に良いんですか?』
「えぇ、大丈夫です。クラスに藍沢さんともう一人友達が居るので。なので皆で仲良くなりましょう?」
『...ありがとうございます、桜庭さん』
敬斗なら事情も知っているし週末にある勉強会で話してみようと思った。
『本当に急な電話に答えてくださってありがとうございます。今夜はもう遅いのでここまでにしましょうか』
「そうしましょう。早く寝ないと明日に影響しますからね」
『では明日、駅でお待ちしていますね』
「はい、ではまた明日」
「『おやすみなさい』」
そうして電話を終え、次の日に備えた。
「これからどうなるんだろうな〜...」
これからが少し心配だった。
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こんにちは、Ariesです。
今回のエピソードなんですが下書きを保存する前にパソコンの充電が切れ、中途半端な所まで保存されていました。なので何か誤字脱字、エピソードのフローなどに問題があれば知らせてください。
次のエピソードも楽しんでいただけると嬉しいです。
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