第18話 宮橋さん

『あぁ、宮橋さんが怒ったらしいんだ』


 敬斗から驚きの報告をされた。おっとりした印象を持っていたがそれが一瞬でひっくり返された。


「え、宮橋さんが怒ったの?」

『あぁ、そうらしいんだ。俺もその場にいた訳じゃないけど凄かったらしいぞ?』

「え、どうなったの?」

『俺の所に来た情報によるとクラスや他の奴らからの質問とかにうんざりしたみたいだ。今まで良くも悪くも皆があまり関わってこずに寂しい思いをしてたにも関わらず、朝から転入生と一緒に登校しただけでなぜこんなに言われないといけないんだ、ってな』

「...」

『そこからは宮橋さんが爆発したらしいぞ。今まで私と関わってこなかったのにこんな時だけ絡んでこないでくださいってな』

「まぁ、そうなるよね」

『あぁ、流石に同情するよ、宮橋に。彼女の言う通りだぜ、ほんと。お前、たしか宮橋の連絡先知ってるんだろ?あとで連絡してみたらどうだ?』

「え、逆効果じゃない?多分だけど今はそっとしておいた方が良いんじゃない?」

『確かにクラスの奴らが連絡するんだったら日に油を注ぐだけだけどお前なら大丈夫だろう。藍沢にも仲良くしてくれって頼まれんただろ?連絡してみろ』

「わ、分かった」

『まぁ聞いた話だとこんな感じだ。あ、俺に話してくれたやつは特に絡んでないやつだ。ただ声が大きくて聞こえたらしい』

「そ、そんなにヒートアップしたんだ?」

『らしいぜ。話を聞いた時はびっくりしたぜ』


 確かに彼女の立場から考えると非常にストレスだろう。今まで独りで誰とも関わりを持てずに居たのに男子と歩いただけであんなに周りから詰められていたら。


 その後に少し雑談を挟んだ後に敬斗との電話を終えた。そして直ぐに宮橋さんにメッセージを入れる事にした。


『こんばんは。友達から色々あったと聞きましたが大丈夫ですか?』


 こう書いて送信しようとして少し迷った。この文章を送って良いのだろうか?いくら友達から聞いたとはいえ、俺が蒸し返しても良いのだろうか?


 どうやって送ろうか悩んだ結果、


『こんばんは。今日の予習の進歩具合はどうですか?』


 と書いて送信することにした。もし宮橋さんが今日の事について話したくないのにその事について聞かれたら嫌だろうと思い無難なメッセージを送った。


 送った後に料理を作って食べていると携帯の通知がなった。確認してみると宮橋さんからだった。


『桜庭さん、こんばんは。実は今夜は予習はやっていないんです』

『少し嫌なことがあったので...』

『勉強する気になれなくて』


 当たり前だが今日の出来事が尾を引きずっているらしい。


『そうなんですね。そんな日があっても良いと思いますよ?』

『毎日頑張ってばかりだと疲れちゃいますから』


 どうしたのか、と聞く事もできるが流石にそこまで無神経ではない。もし今日の事に触れずに宮橋さんを元気づけれるのならそれが一番だろう。


 そこから既読はついてるのになぜか返信が来なくなった。やっぱり誰ともあまり話したくなかったんだろうと思い、後片付けを終わらせ、机に向かって予習と復習を始めた。いくら自信があるとはいえ、ここで失敗し赤点を取れば周りから何を言われるか分からない。それに敬斗に勉強を教える約束なのでちゃんと教えられるようにと始めた。


 ある程度進めた後、キリのいいところまで来たので少し休憩を挟む目的でコンビニに向かった。


「この時間だと何が売ってるだろう」


 そんな疑問を持ちながらコンビニのつく。意外と色んな商品があり、小腹が空いていたのでちょっとしかお菓子と唐揚げを買って帰った。唐揚げは帰り道に食べ、お菓子は机の家においた。


 再開する前に携帯を見ると宮橋さんから数分前に返信が来ていた。


『今、お時間ありますか?』

『電話でお話ししたい事があります』


 電話の内容は多分だけど今日の放課後のことだろう。それも電話で話したいと言っている事から相当参ってるんだろう。


『すみません、今からならいつでも大丈夫ですよ』

『準備ができたら連絡ください』


 そうやって送ったら直ぐに既読の印がつき、電話がかかってきた。


『こ、こんばんは、桜庭さん!』

「こんばんは、宮橋さん」

『「...」』


 やはり、会話が続かない。何を喋ったら良いんだろう。急かすことは避けたい、でも沈黙はもっと避けたい。


「宮橋さん、ごめんなさい。直ぐにメッセージに気づけなくて。コンビニに行ってたんですけど携帯を持っていくの忘れちゃって...」

『え、あ、いえいえ。全然大丈夫ですよ?!むしろ急にあんな連絡してしまってごめんなさい!』


 なんとか雰囲気を和らげようとそこからは色々なことを話した。


『桜庭さんは色々な経験をされてたんですね、お話し聞けて面白かったです』

「こんな話で良ければいつでもしますよ?」

『なんだか申し訳ないです。私の話を聞いてもらおうと思って連絡をしたのに...』

「その事なんですけど、もしかして少し話しづらかったりします?」

『正直に言うと、はい。あまり聞いてもらって気持ちのいい話ではありませんので...』

「宮橋さんにお任せしますよ?話すかどうか。強制するのもダメですし」

『...』

「宮橋さんが話したいと思った時に話してくれたら良いですよ?今夜じゃなくても良いです。また今度でも良いです」

『...本当に桜庭さんは優しいんですね。でも今夜話したいで。でないと、ずっと話せなくなると思うので』


『聞いてくれますか、私の話?』


 そう言って宮橋さんは放課後に起きたことを話してくれた。


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 こんにちは、Ariesです。


 次は宮橋純恋からみた放課後の出来事を掘り下げようと思います。気になったら次のエピソードもチェックしてください。

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