第12話 色々と知れた帰り道

「そ、そうですよね!では木乃宮駅はこっちです!」


 そういって駅へと歩き出した二人。歩き出したは良いものの、会話がなかった。本当に何を話したら良いかがわからないのだ。しかし、沈黙も辛い。なので何か話せる事はないかと考えた


「「あの」」


 最悪のタイミングで被ってしまった。


「さ、桜庭さんからどうぞ!」

「あ、いえ。あの後、大丈夫だったのかな〜と思いまして」

「あの後?」

「はい、初めてスーパー会った時にちょっとトラブルに巻き込まれたじゃないですか?」

「あ、はい!私は大丈夫ですよ。あの後も何回もあのスーパーにはお世話になっていますが特にトラブルには巻き込まれていません」

「そう聞けて安心しました。もしあんな事にまた巻き込まれていたら大変だな〜と思いまして」


 あんなトラブルには巻き込まれないのが一番だがあんな間近で怒鳴られてあら嫌でも対応するしかない。周りが協力的でないならなおさらだ。


「そういえば桜庭さんは使うスーパーを変えたのですか?何回も行っているのですけど全くお会いしませんので」

「いえ、変えてはいないんですが1週間分を一度にまとめて買うのでそのせいかも知れまん」

「え、1週間分を一度にですか?食べ物とか持ちますか?」

「最近はどうしてもめんどくさくなってしまって... 冷凍食品とかカップ麺に頼ってます」


 ここ最近で蓮の食生活が少し変わってしまった。蓮は料理はできるが実はあまり好きではないのだ。そして以前にも買い過ぎて食材をダメにしたこともある。なので制限をかけると食材を買い忘れたりなどと散々な結果になった。なので簡単な冷凍食品に手を出したのだ。そうすれば食材をいつまでに使う、もしくは食材が足りないなどという事態がなく、レンジでチンして食べると洗い物も減ると利点も見出し、それに頼り切りになってしまった。


「ダメですよ、そんなの!まだまだ育ち盛りなのに!もしかして料理が出来ないんですか?」

「いえ、料理は母親から教わったので出来るんですが」

「だったら尚更なぜ?」

「後片付けも料理の一部って言うじゃないですか?その後片付けがめんどくさくなってしまって...」

「気持ちは分からなくもありませんが...」

「料理しなきゃいけないっていうのは分かっているんですけどね...」


 料理自体は構わないのだが一番億劫になっているのが洗い物だった。地味に時間を取られるため、あまりしたくないのだ。


「そうだ。桜庭さんの家からの最寄駅はどこになりますか?」

神水かみず駅になります」

「私と一緒ですね!ではこの後に何か予定はありますか?」

「いえ、特にないですよ」

「ではこのまま神水駅についたらスーパーに向かって買い物しましょう」

「え、この後にですか?荷物とか持ったままですか?」

「えぇ。でも1週間分を買うわけじゃないですよ?2日か3日分だけです。既に調味料とかを揃えられていたらの場合ですけど」


 日本に着いた後少しは自炊をしたため調味料などは揃っている。エスニックフードなどのちょっと特殊なものを作る場合は必要だが一般的なものは揃っている。


「ぜひ、一緒させてください」

「いえいえ、大丈夫です。何か好きなものや嫌いなもの、今日はこれが食べたい、などはありますか?」

「あまりないですね」

「ではスーパーについてから何が買えるか、そして安くなっているものから選んで献立を考えましょう」


 そんな会話をしていると駅についた。改札を通り、ホームで電車を待っている間も何かを話していた。


「それにしても料理や洗濯ができるのは凄いですね。あまり周りでやっている人は聞いたことがありません」

「それらが全部出来なかったら日本には行かせないって親に言われたので。でも宮橋さんも料理できますよね?」

「出来ますけどあまり得意では無いんです。作れる物のレパートリーも少ないですし」


 というが絶対に上手いだろうという謎の確信があった。こうやっていうときは大抵上手いが謙遜しているだけなのだ。


「でもお菓子作りは子供のから好きでずっとやっているので自信はあります」

「お菓子作りですか、凄いですね。何度か試したことありますけど焦がした記憶しかないです」

「確かに温度調節を間違えると失敗しやすいですからね〜」


 そうしていると電車が来たのでそれに乗って少しの間だが雑談しながら最寄駅を目指す。彼女はクラス委員で今日は放課後にちょっとした提出物を担任に届けに行っていたようだった。そこで俺と会い、以前スーパーでも会ったことから最寄駅が一緒、もしくは近いだろうと思って校門の所で待っていてくれたらしい。


「あ、着きましたね。では降りてそのままスーパーに向かいましょうか」


 そのまま駅を出てスーパーまで歩いて行く。


「買い物にも色々とコツがあるんですよ?例えばお肉は少し味は落ちてしまいますが冷凍すれば日持ちします。なので安くなっているものを冷凍したりとか。お魚にも同じ事ができます。野菜だと乾燥させると美味しくなくなるのでジップロックなどに入れて保管すると長持ちしますよ」

「物知りなんですね。こういった知識があれば食材をダメにすることも無かったな...」

「まぁ経験もありますよ。私も最初は少しだけダメにしていたので今日から気をつけていけば良いんですよ!」


 そんなアドバイスを受けながら何を買って何を作るかを考える。


「桜庭さんは好き嫌いが無いんだよね?」

「う〜ん、嫌いなものや得意じゃないものもあるけど基本的にはなんでも食べれるよ」

「じゃ今晩のメニューは肉じゃがでどうでしょうか?ちょっと時間はかかるけれどお肉と野菜、バランスよく食べられるし」

「うん、じゃ今晩は肉じゃがで」

「明日と明後日の分は他を見て回ってから決めましょうか」


 そう言ってスーパーの売り場を歩いて回って何を買うかを決めていく。中には消費期限が近くて安くなっているものや特売品なども売っていたこともあり、蓮が最初に想像していた値段より少し安く買えたものもあった。


 そうやって一通りカゴに入れたあと、買い忘れが無いかをお互い確認したあと、レジに向かった。向かっている途中にまたあんなトラブルに巻き込まれたくはないと思っていたがそんなトラブルが頻繁に起こるわけもなく、普通にレジを通し、支払いを終えた。


「そういえば桜庭さんのクラスでは宿題や課題など出ましたか?」

「いや、出ていませんよ。宮橋さんのクラスでは出たんですか?」

「いえ、同じく出ていません。ただ初日から出ているとなると大変だなと思いまして」


 買ったものを詰めているとふとそんな会話になった。なんでも敬斗によるとクラスによって授業の教師が違うらしい。というのもクラスを入試やテスト結果などの成績で分けているらしい。より成績が良い人たちは難易度の高い授業を、あまり成績が高くない人は基礎ベースな授業を展開しているとか。


「多分ですけど桜庭さんは英語って得意ですよね?」

「はい、ずっと海外で使ってきたので。結構自信ありますよ」

「では、もしよろしければなんですが私に英語を教えてもらえますか?私、英語が得意じゃないので」


 こんなお誘いを受けるとは思ってもいなかった。しかも高校生活の初日に。

 

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 こんにちは、Ariesです。


 ここからどんどん蓮と純恋の関係を縮めていこうと思います。本当はもうちょっと違う展開を考えていたのですが個人的にあまり好きでは無かったのとこっちの方がよりナチュラルに仲良くなれるだろうと思い、このエピソードを書きました。

 

 もし続きが気になる方は次のエピソードも読んでくださると幸いです。

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