第11話 突然のお誘い

「「あ」」


 そう、職員室から出てきたのは蓮の一目惚れの相手、宮橋純恋だった。こんなところで会えるとは思わなかった。


「ひ、ひさしぶりです」

「こ、こちらこそ」


 そう、何を話して良いかが分からない。何を話そうかと思っていると


「同じ高校生だったのですね。でも失礼かもしれませんが今までこの高校で見かけた事がないと思うのですが...」

「実は今日からこの学校に転入してきたんですよ」

「あ、噂になっている転入生とは貴方の事だったんですね!」


 噂になっていたとは。しかも初日から。この情報網の速さにはびっくりだ。

「すごい噂になっているんですよ?なんでも海外から帰ってきた転入生が斎藤先生と英語の授業でやり合ったとか」

「え、そんな噂があるんですか?」

「はい、お昼の時間に周りの人たちが話しているのが聞こえて。そんな人がこんな時期に、と不思議に思ったので」

「そ、そうなんですか...」


 まさかもう噂になっているとは。それも違うクラスにまで広まっていたとは。今まで転校してきた中でこんな早く広まったのは今回が初めてだった。


「あ、職員室に御用ですか?すいません、邪魔してしまって」

「いえいえ、大丈夫ですよ。こちらもすいません」

「「...」」

 

 沈黙が辛い。しかし何を話せば良いのかが本当に分からない。そうしてお互い固まっていると職員室の扉が開いた。


「あ、桜庭さん。なかなか来ないからもしかしたら迷ったのかと思ったけど、大丈夫かい?」

「あ、いえ。すいません。何を話したら良いんだろうと考えていて...」

「そんなに身構える必要ないよ。あ、宮橋さんもお疲れさま。職員室の誰かに用事があるのかい?」

「あ、いえ。私はさっき終わったところですので失礼します!」

 そう言い終わると宮橋さんはすごい勢いで学園の出入り口まで走り去ってしまった。


「あ〜、学園の中は走っちゃダメだよ、ってもう聞こえないよね...」


注意しないといけないのだろうが久保先生が言う通りもう聞こえない距離だろう。


「まぁしょうがないか。でも不思議だな〜。普段は落ち着きのある賢い生徒って聞いてるけど」

「そ、そうなんですね」

「そうそう。テストだとほぼほぼ満点でね。とても優秀な人なんだよ。あ、入って入って。ごめんね、ちょっと話がそれて。そんなに長くはかからないから安心してよ」


 そう言われて入ると中には教師がたくさんいた。まだまだこれからやることがあるのだろう。


「さぁ、初日の今日はどうだった?楽しめたかい?」

「はい、クラスの皆さんとも色々コミュニケーションが取れたので良かったです」

「そっかそっか、良かった。誰と一番仲良くなれたか聞いても良いかい?」

「はい、五十嵐敬斗と仲良くなれました。あとは藍沢さんですね」

「お〜、その2人か。良かった良かった。2人ともフレンドリーで話しやすい人たちだから仲良く出来てるようで良かったよ」

「はい、なんなら敬斗とはお昼まで一緒に食べたので」

「そうなんだ?!早くも馴染んでてびっくりだ。だったら今日もこうやって会う必要もなかったかもね〜」


 そうやって今日の出来事を話し、ちゃんとクラスとも馴染めている事を話すと久保先生はとても安心したようだった。


「あ、そうだ。言っておくことがあったんだ」

「なんでしょうか?」

「今日、斎藤先生の授業があったでしょ?この事を言うの忘れてたと思ってね」


 冷や汗が出た。もし斎藤先生が久保先生に文句を言っていたら申し訳ないからだ。


「あまり大き声では言えないけど、あの人はすごくプライドが高いんだ。それも英語力については。なんでも若い頃から得意で英語の試験とかでも好成績を取るくらいなんだって」

「そうなんですね...」

「まぁ突出してるのはそれだけなんだよね。正直言うと教え方はすごく下手なんだ。とても高圧的だっただろう?」

「まぁ、正直に言わせてもらうと、はい」

「やっぱりそうか〜。うん、ありがと。ちょっとあの人とも話してみるよ」


 やはり斎藤先生はあまり評価が高くないみたいだった。まぁそうだろうなと思う。あんな教え方じゃ勉強する方も楽しくないだろう。


「もうこんな時間か。そろそろ帰らなきゃね。今日は疲れただろう?」

「そうですね、いくら慣れているとはいえ流石に疲れました」

「そうだね、転校を何回も繰り返しているんだろう?今日はもう帰ってゆっくりしてね」


 父親の仕事の関係で海外を転々としていた蓮だったがその影響で転校を何回も繰り返していた。そのためか転校に対してあまり拒否感がなく、またどうやって周りと仲良くなるかという難しい問題に対しても自然と対応できるようになっていった。


「じゃ今日はここまでにしておこう。一応今週の金曜日の放課後にもまた会えると良いんだけどどうだろうか?」

「分かりました。ではまた金曜日にお話しさせてもらいます」

「うん、じゃ今日は気をつけて帰って明日に備えてゆっくり休んでね。お疲れさま、桜庭さん」


 そして久保先生との会話が終わったあと、靴を履き変えて学園を出る。すると


「あ、あの!」


 出てすぐに呼び止められた。声の方を向くと宮橋純恋が立っていた。


「あ、もし木乃宮駅まで行かれるのでしたら一緒に行きませんか...?」


 なぜ?と思った。てっきり帰ったと思っていたからだ。なぜここにいるのか?それもなぜこんな寒い時に外で待っていたのか?


「あ、いや、もしかしたら行き方がわからないんじゃないかなと思って...」


 蓮が何も言わずにいると急に待っていた理由を喋り始めた。とても可愛らしいコートに身を包み、少し不安げに恋を見つめていた。そんな顔をされt断れる男子がいるだろうか?


「じゃお願いします。実は道順が少しあやふやで」


 そう言って蓮は純恋のお誘いを受け、帰り道の間に少しでも仲良くなりたいと思った。


「そ、そうですよね!では木乃宮駅はこっちです!」


 そう言って歩き出した純恋の横を歩きながら帰る二人だった。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 こんにちは、Ariesです。


 ようやく、前回のエピソードの後書きで書いたように2人の関係について書けるところまで来ました。これからはもっともっと二人の仲を進展させるためのストーリーを展開しようと思っています。


 このエピソードを読んでくれてありがとうございます。次のエピソードも読んでくださると幸いです。

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