第10話 ようやく出会えた

「ねぇねぇ、さっき黒板になんて書いたの?」


 それが昼休みの最初の質問だった。


「え、あれ?」

「そうそう。Ifを使ってたから仮定法なんだろうけど他の単語の意味がわからなくてさ...」

「俺も何書いたか気になってたんだよ」

「で、何書いたんだ?あの斎藤が険しい顔してたんだから相当な事書いたんだろ?」


 あの英語の教師は斎藤と言うらしい。


「まぁ落ち着けよ。お前らがそんなにあれこれ言うから蓮が困ってるだろ?」


 そう言って敬斗がやってきた。質問攻めにあっている蓮を見て少しだけ助け舟を出したのだ。しかし、こうやってコミュニケーションを取ってクラスメイト達と仲良くなれるのを知っている蓮は敬斗の助け舟にありがたみを感じながらも出来るだけ質問に答えようと決めていた。


「いや、大丈夫だよ。それで皆どこが分からなかった?」


 そう聞くとやはりベースとなる文法があまりよく分かっていないのと蓮が使った単語の意味を知らないとの事だった。あまり難しい事ではないので色々と説明するとほとんどは分かったらしく、まだ分からない人に教えていたりしていた。


「そうじゃん、こんな事を聞いてる場合じゃないよ!桜庭さんはなんでこんな時期に転入してきたの?」


 そうやって聞いてきたのは藍沢さんだった。


「あ〜、それね。う〜ん、最初から話すと凄く長くなるけど大丈夫?」


 と聞くとやはり皆興味津々なのか蓮に早く話せと彼らの目が言っていた。そこから蓮は自分の生い立ちや海外の生活、そして日本への憧れなどを説明し、こんな時期になった事を説明した。それを聞いたクラスメイト達の反応はさまざまだった。


「え〜、ずっと海外育ちなの?!だからあんなに英語上手いんだね〜!」

「海外か〜、すごいな。全然想像出来ないわ」

「でも、なんで今日本に帰ってきたんだ?高校じゃなくても日本の大学を受けて高校卒業してから日本にきても良かったんじゃないか?」


 確かにそうだろう。わざわざ高校1年の三学期からじゃなくても他に選択肢はあったのだ。


「そうだけど、そうすると日本の勉強の内容を知らずに日本の大学に入ったら苦労するかなと思って」


 海外と日本だとベースとなるカリキュラムが違うため、受ける試験も違ってくる。そこで日本の勉強に触れていなければ少し不利になるのでは、と考えたのだ。


「それに日本語で勉強せずにいると大学で英語の授業がある専攻にしないといけないけどそうすると選択肢が狭まるから。そういう理由もあって今回帰ってきたんだ」

「蓮はすごいな。将来のことまでよく考えて。俺なんか大学で何をしたいかなんて全く考えてないわ」

「敬斗もそのうち見つかるよ」


 敬斗の言葉にそう返していると


「あ、五十嵐くん、ずるい。もう桜庭さんの事名前で呼んで〜」

「良いだろ?俺、蓮の最初の友達だから」

「まぁ、皆も好きに呼んでくれていいよ?」


 海外の人からすると蓮の名前は発音しやすいがそれでも時々あだ名をつけられてそうやって呼ばれていた。中にはなぜそんな、と思うものもあったがあだ名自体に嫌悪感はないのでそう答えると男子からは蓮、そして女子からは蓮くんや桜庭くんなどと呼ぶと言われ新鮮に感じていた。そもそも海外では苗字で人を呼ぶことがあまりないからだ。そんな事を感じていると


「じゃ私はレンレンって呼んでいい?」


 と藍沢さんに聞かれた。


「う、うん。良いよ」

「やったー。これからよろしくね、レンレン!」


 初めて呼ばれたが嫌な感じはしなかった。むしろ、こうやってコミュニケーションを取って仲良く出来たらずっと良いと思っていた。


「よし、一段落したし一緒に昼ごはん食べにいくか」


 お昼ご飯のお誘いを敬斗から受け、一緒に食堂に行くことになった。食堂には色々な食べ物があるので何にしようかと考えていると


「食堂には色々な食べ物があるけどいくつかは売り切れになっているだろうな〜。好き嫌いはあるか?」

「いや、あまり無いかな。もちろん得意じゃないものはあるけど」


 そういった会話をしながら食堂につき、お昼ご飯を食べる。その時に敬斗の話を聞いたが両親が共働きなので弟の面倒を見ているらしい。だから面倒見が良いのかと感心しているとそろそろお昼時間の終わりに近づいていた。


「これからの授業の教師達はまともだから大丈夫だ。あんまり心配すんな」

「そっか、ありがと」


 そして、午後の授業が始まり、いくつかの先生には軽く自己紹介をするなど特に問題もなく初日が終わった。


「ねぇねぇ桜庭さん。これからみなと一緒に遊びにいかない?クラスの皆が君の事をもっと知りたいって言ってて」


 そんなお誘いをクラスの女子から受けるが


「ごめんね、今日は無理なんだ。久保先生と少し話す予定でね?それに帰ったらまだ色々とやらなきゃいけない事があって...」

「そっか〜、そうだよね。初日だし、日本に帰ってきてまだそんなに経ってないもんね。う〜ん、でも歓迎会はしたいしな〜...」

「うん、俺も皆のこと知りたいしまた今度お願いできる?この辺りの事もあまり詳しく無いから教えて欲しいし」

「うん、もちろん。じゃ皆には今日じゃなくてまた今度って言っておくね〜」


 少しだけ罪悪感がある。確かに久保先生と話すのは事実なのだが帰ってからの用事はない。初日ということもあり、慣れない通学などですごく疲れたのだ。なので早く帰って休みたかったのだ。


「あ、蓮。もう帰るのか?なんなら駅まで一緒に行こうぜ?」

「ごめん、久保先生と話す予定があるから先に帰ってて?」


 敬斗は待つと言ってくれたが長くなるかもしれないと伝え、弟の面倒を見る事を優先してくれと言ったら明日は一緒なと約束し教室から出ていった。


 そんなやりとりをしながら職員室へ向かっている途中、見覚えのある顔がちょうど職員室から出てきたところだった。


「「あ」」


 そう、蓮の一目惚れの相手、宮橋純恋だった。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 こんにちは、Ariesです。


 ようやく蓮の初日が終わり、宮橋純恋との出会いを果たしました。みなさん、本当にごめんなさい。ここまで引っ張る予定ではなかったんです。


 ただ、ここからはラブコメらしく2人の関係性をより深く書いていこうと思います。


 2人のこれからに興味がある方は次のエピソードが更新された時に読んでください。今回も読んでくださりありがとうございました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る