第8話 新しい友達
「さぁ、入ってきて〜」
これが合図だと理解し、蓮は扉に手をかけ、教室の中に入って行った。
そこには新しく、でも蓮が今まで夢見ていた光景が広がっていた。立ち止まるわけにもいかず、教壇の前に立っている久保先生の横まで歩いて行く。
「え、やば!」
「普通にカッコよくない?!」
「んだよ、男かよ...」
「でもあいつ優しそうだぞ?」
「こんな時期に転入生?なんで?」
このように反応は色々だった。蓮の容姿について言及する人もいれば新しい生徒が男子と言うことに落胆したり、そしてなぜ今になって転入生が来たのか不思議に思ったり。
「はい、一旦に静かにね〜。そんなに声出すと彼が緊張するでしょ」
「先生、いつから決まってたんですか?!」
「うーん、確か夏休み中に転入したいって連絡がきたよ?」
それを言うとまた教室が沸いた。中にはなぜ教えてくれなかったのかと言う声も上がっていた。
「いや、言えないよ。まだ確定でも無かったし」
まぁそうだろう。確かに蓮は夏休み中に星花学園に連絡し、どうしたら自分が学園に転入できるかを聞いていた。しかし親がまだ前向きでは無かったのとやらなければいけない事があって転入が決まったのはもう少し後だった。
「はい、そこまで。そろそろ彼の事、知りたくない?」
そう言って久保先生は蓮に自己紹介を促した。
「は、初めまして。桜庭蓮と言います。こんな時期に転入してきましたが出来るだけ皆さんと仲良くなりたいと思っています。これからお願いします。」
こんな自己紹介でよかったか、と思ったが終わった後にクラスの皆は拍手し、蓮に色々質問があるようだった。とりあえず答えようとした時
「はい、時間がないのでまず桜庭さんには席についてもらいます。そして、そのまま今日のスケジュールを言うので桜庭さんへの後ににしてください」
ホームルームの時間は短い。だから質問まで許していると時間は全然足りない。それに転入生となれば質問は山ほど出てくるだろう。そして今日は三学期の初日ということもあって色々と予定があるのだろう。
「まず最初に先生に冬休みの間にやってもらった課題の提出をしてください。その後、体育館に集まって全校集会があります。そこに行ってもらってクラス毎に咳が指定されているので席に座ってもらいます。その後は教室に戻っていつも通り授業を受けてもらいます。質問ある人は?」
誰も手はあげなかった。皆慣れているのだろう。そうするとクラスメイトたちが各々のカバンからファイルを取り出した。多分課題だろう。実は課題のことは知っているが蓮は久保先生からやらなくていいと言われていた。帰国した後に1人で生活基盤を整えないといけない事を知っていたので課題まで手が回らないだろうと判断したのだ。
そうすると何人かが教室から出て体育館に向かったので蓮も跡をついて行くことにした。
「ねぇねぇ、桜庭さん。質問いいかな?」
そうすれば道中で質問にあった。少しでも早く聞きたいことでもあるのだろうと思っているとどんどんクラスメイトが集まってきて色々な質問が出てきた
「いつ帰ってきたの?」
「なんで星花学園選んだの」
「なんでこの時期に転入してきたんだ?」
「英語話せるよね、今度教えて!」
「運動は?運動は得意か?!」
「彼女はいるのか?」
蓮は聖徳太子の耳を持っていなので全部聞き取れず、しまいには誰の質問を先に答えてもらうかで少し言い争いが出来たほどだ。
そんな事が起き、質問に答えながら体育館まで歩いていると、見覚えのある人が少し先を歩いていた。見間違えるはずがない、宮橋純恋さんだった。
「同じ高校なんだ...」
「え?」
「あ、いや、なんでもないです」
そう思うと急に心臓の鼓動が速くなった。まさか同じ高校だとは思わなかった。確かに蓮の住むにエリアには高校が一つしかない。と言っても他の高校もあまり遠くないのでそちらに行っている可能性もあったのだ。
今すぐにでも追いかけ、話しかけたかった。しかし、周りのクラスメイトたちがそれを許さないだろう。何故なら今も質問攻めにあっているからだ。追いかけたい気持ちを抑え、質問に答えながら体育館を目指す。
体育館に着くと席につき、案外すぐに集会が始まった。日本の集会はどんなものなんだろうと不思議だったがこれが結構違ったのだ。日本の高校だと先生主体で進んでいくが海外だと生徒会のメンバーが進める事が多い。やっぱり違うんだな〜と思いながら話を聞いていく。
そんな集会が終わると蓮は一目散に純恋を探した。しかし、流石に人が多く、見つけられない。蓮がキョロキョロしていると出口が分からないと勘違いしたクラスメイトに囲まれ、また純恋と会えなくなってしまった。
そうして教室に戻る途中、お手洗いに行きたいと言って避難した蓮。ふぅとため息をつくと側にいた男子に話しかけられた。
「なぁ、大丈夫か?」
「あ、はい。大丈夫ですよ?」
「本当か?まぁ無理すんな。敬語も別にいいぞ?」
クラスメイトなのだろうか?と思っていると
「俺は
「あ、俺は桜庭蓮。俺も蓮でいいよ。よろしくね」
「おう、よろしく」
いい人そうだった。しかも普通にかっこいい。
「クラスの奴らが悪かったな。俺が少し止めたら良かった。クラスの奴らも悪気があって質問攻めにしてるわけじゃないのは分かってやってくれ。」
「あぁ、それは分かってるよ。それに慣れっこだから」
「?それなら良かったけど...」
そんな事を喋っていると呼び鈴が鳴った。
「あ、トイレ大丈夫か?」
「うん、実はトイレは言い訳でさ...」
あの場面から少しだけ抜けたくて嘘をついたのだ。
「そうか、まぁそうだよな。じゃ戻るか」
「うん、そうしよう」
そうして少し仲良くなれた敬斗と教室に戻ると教室は少し異質な空気感だった。なぜだろうと思っていると敬斗が
「あぁ、そうだったな... なぁ、この授業ではあんまり目立つことするなよ。特にお前は」
と言って自分の席に戻っていった。多分だが予想がつく。嫌な教師なのだろう。とにかく目立つなと言われたので周りがやっているように教科書やノートなどを出して待っていると先生が入ってきた
「おい、授業始めるぞ」
あぁ、やっぱりだ。そう思った蓮だった。
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こんにちは、Ariesです。
皆さんの高校生活どうでしたか?自分も高校時代に嫌な教師は何人かいました。そしてその教師の授業は全くと言って良いほどモチベーションが上がらず、低い成績を取った事を書いていて思い出しました...
今回のエピソードでは新たに五十嵐敬斗というキャラが登場しました。ラブコメをたくさん読んでいる方は彼がどういったキャラなのかもう既に予想がついていると思います。
これからのストーリーが気になるという方はまた新しいエピソードを公開したときに読んでもらえたら、と思います。今回も読んでくださってありがとうございます。
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