第4話 予想していなかった出来事
「あの子だ...!」
時が止まったようだった。蓮の好みドストライクの彼女がスーパーに入って行ったのだ。とても綺麗な歩き方で歩いていく彼女から目が離せない蓮。
「...とりあえず入ろう」
元々スーパーに来たのは買い物のため。彼女を探していたわけじゃないと自分に言い聞かせながらカゴとカートを取り、自分もスーパーに入る。すると彼女は入り口付近の野菜や果物を売っているエリアで両手にキャベツを持ちながらどちらを買うか悩んでいた。
あまり見ていては気付かれるだろうと思い、メモを取り出し買わないといけない物を見る。すると、なんという偶然か。今晩の料理は野菜炒めなため、キャベツと書かれていたのだ。これはちょっとしたチャンスだと思いキャベツ売り場まで行こうとすると
「あれ、もういないじゃん」
それはそうだろう。彼女はもう既にキャベツを選び終わって既に次の売り場に移動していたのだ。しかし、キャベツは買わないといけない。すぐに新鮮そうなキャベツを選び終わり、買うものを次々にカゴに入れていくが彼女は見当たらない。
「これじゃストーカーみたいだな...」
側から見れば蓮は買い物客だろう、しかし意識の問題だ。そう思い、一旦彼女から視線を外し、これから必要な食材や調味料、ちょっとしたお菓子を買いに向かった。人とりカゴに入れたあとレジに並ぼうとすると
「え...」
なんと彼女がレジに並んでいた。それも蓮が並ぼうとしていたところに。このチャンスは逃すまいとすぐにレジに並んだ。幸いスーパーはお昼時だったのであまり混んではいなかったがそれでも十分なお客さんはいた。なのでゆっくりと列は進む。
その間蓮はずっと恋に落ちた相手を見ていた。前の彼女が携帯を見ているばかりで蓮の視線に気付かない。しかし、蓮はずっと彼女の事を考えていた。
長い黒い髪。肩甲骨より少し下まであるだろうか?触ればサラサラでとても良い感触だろう。彼女もスタイルも良かった。流石にアニメに出てくるような体系ではないが一般的には良いと思われるだろうスタイルだった。
『どこを見ても可愛いな〜...』
服も彼女によく似合っていた。蓮がいたところだと女性は胸元や太ももを出している服装が多かった。しかし、蓮はそれらが苦手であまりそういった服装をした女性が好きではなかった(もちろん女性を目の前にしてして言った事はなかったが)。しかし彼女の場合は上には黄色の上着にベルボトムジーンズ。すごくシンプルな服装だがとてもよく似合っていた。
そんな調子でずっと彼女を見ていた蓮。レジが近くなり、ふと彼女のカゴを見て買い忘れたものがあったのを思い出した。あまり買い物に出るのが好きではない蓮にとって通常であれば列から抜けて買いにいくだろう。しかし、今回は一目惚れの相手が目の前にいる。この状況から抜け出したくなかった蓮は大人しく明日でも買いにこようかと決めたその時、
「おい、どういうことだ!」
急に男性の怒号が聞こえた。パッと顔を上げるとちょうど自分が並んでいたレジで男性がレジ係の人に怒鳴っているところだった。
「数量限定なんか知らねーよ、俺はこれが欲しいんだよ!」
「そうは言われましても...」
なんでも今日特売の油の個数で揉めているようだった。確かに油の値段は1年前などに比べて高騰している。そういった事情もあるので時々スーパーでは1人の購入可能な個数を指定した上で少し安くで売っていたりしていた。なんなら蓮も、そして前の彼女も油をカゴに入れていた。
今日は1人で1個だったので1つだけカゴに入れていたがその男性は見る限り3つは入れてた。
「いや、流石に買いすぎだろ...」
皆が沢山買いたいなか、我慢して他の人も買えるように考えて行動している中でこの男性は自分の事しか考えていないようだった。
そんな時
「あの、すいません」
前にいた彼女が男性に喋りかけたのだ
「レジの人にそんな怒鳴らないでください。元を辿れば貴方が個数制限を無視して購入しようとしていてこのレジの人には非がありませんよ」
驚いた、その行動力に。そして同時に、何でそんな事をしたんだ、とも思った。
「うるさい、お前には関係ないだろうが!引っ込んでろ!」
「確かに関係はありませんが貴方が非がないこの方を怒鳴っているのを見るのは不愉快なんです。それに次の人たちも待たせているんですよ!」
「知るか、そんなこと!」
どんどんと状況がヒートアップしていく。これはまずいと思った。特に男性は彼女が口を挟んだことがストレスらしく今にでも手をかけそうだった。
誰かに頼んでストアマネージャーを読んでもらおうと思ったがさっきまで後ろにいた人たちはいつの間にか消えていた。不審に思い周りを見渡すが誰も何もしない。皆目を逸らしまるで自分は"関係ありません"と言った雰囲気を出していた。
最悪だ。そう思い、自分が呼びに行こうかと思ったがその間に一目惚れの相手に何かあったらそれこそ良くない。判断ができずにいる間にも状況はどんどんエスカレートしていく。
「引っ込んでろ!」
「貴方が謝るまで引きません!」
確かに彼女が言っている事は正しいのだが怒っている人にかける正論は逆効果だ。しかし彼女は自分が火に油を注いでいる事に気づいていない。現に男性の顔は真っ赤だった。相当頭に来ているのだろう。このままではまずいと思っているその時だった。
「いい加減にしろ!」
男性が急に手をあげ彼女の顔を掴もうしたのだ。そんなことはさせてはならないとカゴを落とし彼女を抱き寄せる。
「!」
急に引き寄せられた彼女はバランスを崩しながら蓮の方に倒れていく。その体をちゃんとキャッチした。
「大丈夫?」
そう聞くが彼女の頭の中は今パニック状態だろう。急に顔を掴まれそうになったと思ったら急に後ろに引っ張られたのだから。そんな彼女の前に立ち蓮は言い放った。
「いい加減にするのはお前のほうだろう!恥ずかしくないのか!」
「なんだとコラ!誰に向かって口聞いてんだ!」
この時点で蓮もあまり冷静ではなかった。それもそのはず、一目惚れの相手が危険な目に遭ったのだ。それを許せるはずもなかった。
どうしよう。確かに暴力に頼れば簡単に済む話だろう。日本の文化が好きな蓮は空手もやっていたのでその力を使えば容易にこの男を騙せることができる。しかし、親からは常日頃"暴力で解決してはいけない"と教えられていたので蓮はどうやってこの状況を鎮めようか考えていた。
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こんにちは、Ariesです。
皆さんはこういった経験ありますか?自分は何回か目撃したことがあるのですがあまり聞いていて心地の良い物ではありませんね(当たり前ですが)
さぁ、ついに蓮が一目惚れの相手と邂逅します。次の話が気になると思った方は更新した時に読んでみてください。
次のエピソードも読んでくださると幸いです。
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