20. アッシュの遺書(2)
愛する家族へ
ぼくは
きっとこの手紙を読むころには、ぼくの犯した罪について知っていることでしょう。そして、涙を流したことでしょう。怒りに震えたことでしょう。母は狭い世間のなかで生きていくことになります。妹は息苦しいなかで残りの学校生活を送ることになるかと思います。ほんとうにごめんなさい。
しかし信じてください。みんなに伝えられていることは、すべて嘘なんです。ぼくのあの「遺書」の内容もでたらめなのです。ではなにが真実なのかということは、ここには書くことができません。しかし、この手紙を届けてくれたひとが、いくつかのことは教えてくれるかもしれません。
そして、この手紙は早々に燃やしてください。ほかのひとの手に渡らないようにしてください。できれば、届けてくれた「フレア」というひとに、その場で燃やさせてください。
この手紙を読んでいるころ、ぼくは死んだことになっていると思います。しかしぼくはいま「冒険」をしているのです。これは、なんの比喩でもありません。実際、そうなのです。
しかしこのことの詳細は、「フレア」というひとには聞かないでください。彼女も、絶対に言いませんから。
そして、これだけは伝えておかなければなりません。
もしかしたらぼくは、また、みんなの前に現れるかもしれません。ヘンなことを言っていると思われるかもしれませんが、この手紙の筆跡が、
ぼくがこの手紙でみんなに伝えたいのは、世間で言われているような罪を、ぼくは犯していないということ、そして、もう一度、みんなに会えるかもしれないということです。
もし、みんなの前に戻ってくることができたとしたら、たくさん謝らせてください。そして、たくさん叱ってください、ぶってください。お願いします。
アッシュより
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