残る２つの未解決問題を解くには、彼を突き落とすだけでいいのに。

02. 三つの未解決問題

　この国の学者たちのなかの何人かは、下記の三つの未解決問題を解くことに挑戦してきた。

１ この国の上には、別の国があるのか？

２ この国の下には、別の国があるのか？

３ この国とは別の国があり、それが複数存在すると仮定する。その場合、それらの国々とこの国は、何らかの繋がりを持っているのか？　それとも、お互いに独立して存在するのか？

　このうち「１」は、天文学的観測によって証明されたということになっている。

　しかしそれを証明したブニエーエル・ルングマンという学者の論文は、異例の速さで審査が終わりリリースされたことから、なんらかの介入があったのではないかと噂された。

　だが、そうした疑いの声は政府により鎮圧され、いまでは未解決問題のひとつが証明されたということになっている。

　ブニエーエルには、フレアという一人娘がおり、彼女もまた学者だ。しかし天文学者ではなく、哲学者だ。そして、政府批判の論説を自作のパンフレットとして配布し、投獄された過去を持つ。

　ぼくはフレアと知り合い、ブニエーエルと腹を割って話しをするなかで、きっと彼が「あの論文」を世に出したのは、彼女を守るためだったのだろうと思うようになった。

　でも、そのことについて書くのは、もっと後にすることとしよう。

　まずは、フレアが書いた、くだんの「論説」を読んでほしい。切り抜きが、次のページに貼ってあるから。