第37話 突然現れる新たな住人
「俺とリリアは畑作業してくるから二人は好きに過ごしてて」
ペリカとフーリアさんには好きに過ごしてもらってやりたいことがあればそれに協力するということを昨日伝えている。
「私もコウちゃんのお手伝いするわよ」
「ボクも!」
はい、こうなる気がしてました。ということで結局みんなで畑の方へ向かうことになった。
「じゃあ今から収穫するから。収穫したものはインベントリに入れといて」
すでにインベントリは全員に共有している。
それから収穫作業を行っていく。
「コウちゃーん!この変わった木は何の木なのかしら?」
ん?変わった木?
俺はフーリアさんの声がした方に顔を向ける。
「あー……。急に大きくなってるねぇ」
あれは謎の種を植えたところだ。成長して木であることはわかったけど何の木かわかってなかった。昨日までは小さかったはずだが、それが普通に大きくなっている。というより最初に気づきそうなくらいには成長している。言い訳するとあの周辺は収穫するものがないから目を向けてなかったんだよね。
俺はフーリアさんのいるところに向かう。
そこにはまるっこい葉を持ち、太い幹に細い根のようなものがいくつも伸びている独特な木があった。よく見ると幹の上の方に小さな扉のようなものが付いている。
「なんだっけこれ、なんか見たことあるな」
どこかの観光地にあったよね。…………あ、あー!ガジュマルだ!たぶんそうだ。とりあえず鑑定して答えを見よう。
<精霊の住処(ガジュマル):精霊のお家。>
…………わーい正解だー!ヨシ、畑作業に戻るか。
「あ、コウちゃん、扉みたいなところが開きましたよ」
……何だろーね?
「あらあら!まぁ!可愛らしい子が出てきたわよ!コウちゃん!」
フーリアさんにものすごく肩を揺らされる。
……見えてます、見えてます。葉っぱのようなものでできた服を着ている赤髪の小さな女の子っぽい小人がいますね。
「この世界の精霊らしいですよ」
「そうなのね。あら、こっちに来たわよ」
おそらく精霊だろう女の子が木から飛び降り、トテトテとこちらに走ってくる。
そして俺たちの目の前にたどり着くと手を腰に当て胸を反らした。
「ここはあたちがしゅむことにちたわ!ありがたくおもいなちゃい!」
そういった女の子は得意げな顔になっている。
「あら~、そうなのね~。私の名前はフーリアよ、よろしくね」
「俺はコウタだよ。よろしくね。君の名前は?」
「なまえはまだないわ!あなたたちにあたちのなまえをちゅけるけんりをあたえるわ!」
女の子はさらにどやーっとした顔になる。
「コウちゃん、どうしましょうか。可愛い名前を付けてあげましょう」
「かわいい?あたちはこうきななまえがいいわ!」
「うふふ、そうなのね?高貴な名前ね?」
フーリアさんはにっこにこで対応している。
高貴か……。雅とか?いやーこの子には合わなそうだな。うーん、やっぱりここは食べ物からつけるか。高級そうな感じでザッハトルテちゃんとかじゃ駄目?
「ザッハトルテちゃんとかどうです?」
「コウちゃん……、それはちょっと……」
駄目なようだ。うーん、でも俺に任せるとこういうのしか出ないよ。
「フーリアさ……フー姉は何か案はない?」
にっこり微笑みながら圧を放つという器用なことをしないでいただきたい。あきらめてフー姉呼びに慣れるしかなさそうです。
「そうねぇ。高貴なイメージねぇ。いっそ神様の名前とかどうかしら。フレイヤはどう?」
ザッハトルテよりは良いと思います。俺的にはザッハトルテもいいと思うけど。
「いいんじゃないかな。聞いてみるね。名前はフレイヤにしようと思うんだけどどうかな?」
「フレイヤ……。ふふーん、あたちにぴったりなこうきななまえね!」
お気に召したようでよかった。女の子改めフレイヤはうれしそうにしている。
「コウタさん、こちらの作業は終わりましたが何かありましたか?」
「なにかちっこいのがいるのです」
するとリリアとペリカがこちらにやってくる。
「ほら前に植えた謎の種がこの木になっててそこにこの子が住み着いたんだよ。フレイヤって名前になったから仲良くしてあげてほしい」
「そうなんですね。リリアです。よろしくお願いしますね」
「ボクはペリカ!よろしくね!」
「ふふん、なかよくちてあげるわ!」
そういえば精霊は何か食べる必要があるのだろうか。聞いてみるか。
「フレイヤはお腹が空いたら何を食べるのかな?」
「あたちはしょくぶちゅがまわりにあればえねるぎーをわけてもらうわ」
周りに植物があればいいそうだ。
「植物に影響はないのでしょうか」
リリアが疑問に思ったことを口にする。
確かに枯れる可能性とかあるのかもしれいな。
「えねるぎーをもらうかわりにあたちのまそをあたえるからかれたりちないわ」
植物のエネルギーを分けてもらう代わりに魔素をあげるから枯れたりしないらしい。
魔素をあげるってことは魔カブとかになったりしやすくなるのかな?
「そうなんですね。教えていただきありがとうございます。それとエネルギーだけでいいのですか?」
「……たまにはくだものややしゃいをけんじょうちてもいいのよ」
果物や野菜も食べたいみたいだ。あと聞いておく必要があることはあるかな?あー、嫌いなものがあるかきいておくか。
「嫌いものはあるかな?」
「あたちはにわとりとたことあちゅいおなべのふたがきらい。あとおならもきらい」
鶏と蛸と熱いお鍋の蓋、そしておならが嫌いらしい。なぜだ。
いやおならが好きな人は特殊な癖がない限りいないか。
「鶏はあっちの小屋にいるから気を付けてね」
「……あさにおおきなこえでなかない?」
「いや、メスしかいないからそれはないと思うよ」
「ならだいじょうぶ」
鶏のコケコッコーという朝の鳴き声が嫌なようだ。じつはあれはオスだけのようでうちにいる二羽は鳴かない。
それから女性陣がフレイヤに構っていたがフレイヤが眠いといって家の中に引っ込んだ。
「それじゃあ、あとはリムたちの世話くらいだけどみんなはどうする?」
「私はお菓子とお茶の準備をしておきますね」
「私もそちらのお手伝いをするわ」
「ボクはコウタと一緒にお世話するのです」
リリアとフーリアさんはお茶とお菓子の準備。ペリカは一緒にリムたちのお世話ね。
「わかった。じゃあペリカ行こうか」
「はいなのです」
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