第12話 着火



アメリカが、「植物」を相手にデフコン2を宣言した翌日。世界は大きく揺れた。


アメリカ国民の多くも、ニュースでそれを知ったときに思った。



『正気じゃない』



だが、よく考えてみれば、自分たちの困窮しつつある現在の生活を考えれば、そしてその生活の原因が「植物」にあるのだとするならば、政府の宣言も頷ける。「敵」は植物だ。


街は荒れ果てて、多くの職が失われたか、休業状態だ。経済は完全に休眠に入った。金融市場は、長期・短期ともに取引がほとんど成立しない状態だ。物価は、食品を中心に連日100%近い上昇を続けている。もし、配給制が実施されていなければ、ハイパーインフレーションは避けられない状況だっただろう。


もちろん、「植物」が関係しない業界は、取引を行える状況にはあった。だが、経済を動かしているのは、最終的には「人」だ。マシン機械が電気がないと動かないのと同じように、人は食がなくなれば、活動するためのエネルギーを維持できなくなる。


当たり前のことだ。


だが、今まで人々は、そこに真摯に目を向けることはなかった。なぜなら、多くの国々が「飢餓」という経験を失っていたからだ。食べ物がない状況が、どういった状況かは知識として知っていたが、経験としては多くの人が知らなかった。


今はまだ「食」は維持できている。だが、「知識」が「経験」に変わるまで、時間が残されていない状態にあることは、肌で感じる状況になっていた。


食べ物は配給制で、主食は小麦、大豆などの粉食、副食はサプリメントだ。政府ははっきりとは言わないが、配給がいつまで続くのかは不透明だ。先が見えているのは子どもでもわかる。


魚は取れない、野菜も果実も、肉もない。家畜の餌も在庫には限りがあるから、乳・卵製品が手に入るのもわずかな時間だろう。お菓子も、原料の入手ができない以上、新たな製造はできない。倉庫に山のように積まれた箱も、消費が始まれば、あっという間に消える。


もちろん山に行けば、いつでも「山の恵み」は手つかずで目の前に広がっている。だが……手を出せば、どうなるのかは野生動物の激減が物語っていた。待っているのは「死」しかない。草食動物は、生き残りを探す方が難しくなりつつある。


唯一の救いは、海中の藻類とは違い、地上の植物は新種アルカロイドの生成を行っていない植物も存在していたことだろうか……また、ちょうど秋だったため、種子を主食とする小動物は生存が可能だった。そのため、草食動物もまだ全滅には至っていない。ただ、先は見えており、事実上、多くの草食動物が、レッドデータブックへの掲載を順番待ちしている状況になっていたことは確かだった。


そして、肉食動物も、捕食対象が絶滅すれば生き残れない。哺乳類だけはなく、鳥類、爬虫類、両生類、全てが同じ状況だった。


川や湖にも植物プランクトンは存在していたので、海と状況は同じだった。いや海よりも浅い分、「命」が消えた光景はより鮮明だったといえるだろう。魚はもちろん、貝類や虫も多くが死滅に向かっている。


こうして、人々の命に直結する「食」という分野に対して「供給」が失われていった。


供給が滞ればその「分野」の未来は失われる。在庫した分がなくなれば、事実上の終結、つまり「敗戦」を迎えることになるだろう。


だから――政府が「植物」を「敵」とみなしたデフコン2の宣言は、少しずつ理解が深まっていった。もちろん、「戦う」こと自体が無意味であることは誰しもが分かっていたはずだが……


原因となった植物を倒せば、自分たちも倒れることになる。戦争状態であることは確かなことで、そしてその敵が「植物」という難敵であることも理解した上で、必要になるのは、比喩的な意味を込めれば、敵に「降伏」を求めることになるだろう。




◆◇◆◇



アメリカは宣言と同時に、国連総会の緊急特別会合の開催を提案した。提案内容は、植物毒の原因究明、食糧の略奪禁止と平和的解決の決議採択だった。


すぐに国連安保理が開かれ、開催が承認、国連加盟国196カ国中、192カ国が参加して決議は全て可決された。参加しなかった国も、全土に広がった紛争により、「参加しない」のではなく「参加できない」状況に陥っていただけだ。


さすがに、いつもなら自国の利権を声高々に優先して求める国々も、植物毒の問題が解決されないと遠くない未来に世界が終わることを理解していたため、自国での食糧の占有を優先する意見が出されることはなかった。


緯度の関係でもっとも影響が少ないと思われたロシアも、穀倉地帯は60度の範囲に入っている。60度以北は基本的に凍土が広がっているだけだ。食糧問題は、他の国と全く同じ状況にあった。


他国から略奪することを考えていた国もあったはずだが、それを実行するものはいなかった。地球という星から移動できない以上、年単位で考えれば、自国が他国に優先されるものは何もなく、どの国も「条件」は同一であることを、多くの国の為政者が理解していたことが、世界戦争を防ぐ防波堤となったことは幸いだったといえるだろう。


そして、世界の各国は、英知を集約して、原因の究明と問題の解決に当たることとなった。国や宗教、そして西側東側の垣根を越えて、研究者たちは集結した。通常は学会発表されるまで公表されることがない研究データも、ほとんどが、制約がかかることなくオープンにされた。


それだけ、人類は追い込まれた状況にあったといえる。


追い込まれる最も大きな原因は、食糧の在庫だった。各国が保有する食糧は、カロリーベースで最低でも1か月、最大で一年以上を抱えている国もあったが、いずれにしてもそれは有限だった。


さらに……その在庫はあくまで数字上の話だった。


野菜、魚介類、肉類は、全てが新たに生鮮食料品の市場に流れることはなくなっており、人々の食卓を支えていたのは、過去に取れた米や小麦、そして加工食品だった。だが、その加工食品も問題を抱えていた。


光合成の反応に必要なのは、水と二酸化炭素と光だが、光を吸収するために必要な色素を持った冷凍野菜は、今回の事態が発生する前に収穫されていても、なぜか解凍する段階でわずかなアルカロイドの生成を始めたのだ。


そして、わずかな量のアルカロイドでも人体を攻撃するには十分足りていたことが不幸だった。


幸い、一定数の被害者が出た段階で人々は、そのことに気が付いたのだが、同時に食べられるはずの貯蓄された食糧を廃棄せざるを得なくなったことは、多くの人を嘆かせた。中には暗闇の中で解凍したまま調理せずに食べる、という極端な方法を考えた人もいただようだが……加工された冷凍食品そのものに限りがある以上、人々に希望を与えるまでには至らなかった。


キノコ類と一部の野菜を除いて、全ての野菜が世界中の食卓から姿を消した後は、野菜から摂取できる体に必要な栄養素は、サプリメントや薬で配給されていた。


ただ、すでに肉や魚も加工したもの以外は姿を消した状態が続いており、食生活に満足できない人々が増え、さらに毒物と分かっていても、生活圏内に、いくらでも植物が存在していることが、その不満を少しずつ大きく膨れ上がらせていくことになっていた。


「不満」という燃料は、世界の各地で溜まっていった。人々の理性が、その燃料を燃えづらくしていたのは確かだが、決して不燃性の燃料ではない。そして、燃え上がらせるために必要な火種は、確実に着火の時を待っていた。




▼20XX年11月3日 東アフリカの小国



深夜。ある部族のコンパウンド複合住居に、10名の男が焚かれた火を中心に集まっていた。アフリカの夜は冷える。


「もう、我慢できないぞ!」


車座になって座る男たちの中で、最も若いソロモンが立ち上がった。


「あいつらは、俺たちが飢え死にするのを待っているんだ!」


「まあ、待て、ソロモン」


ソロモンの正面に座り、この場を仕切る立場にいるムルがなだめるように両手を上げる。


「何を待つんだ、ムル兄。このままでは一族全てが生き残れない」


「では、どうする?」


ソロモンの血走った目が、怪しく光った。


「奪おう」


「奪う?」


ムルの隣に座ったハイルが眉を潜めた。


「そうだ。あいつらの倉庫には、コーンミールが積まれている。それも天井までだ!」


「それは、お前がその目で見たのか?」


「見たぞ、ハイル兄。昨日、アダム商店の屋根の修理に行ったんだ。先週の大風でめくれた屋根の修理だ」


「ああ、それは聞いている」


ハイルが頷いた。


「屋根の上で修理していたら、たまたま倉庫のシャッターが上がったんだ。そしたら……倉庫の中は、袋で埋め尽くされていた。あの黄色い袋は知っている。コーンミールだ」


「だが、それは配給用かもしれないぞ」


ハイルの言葉にソロモンは首を横に振った。


「それはない。屋根の修理が終わって梯子で降りる最中に、2階の部屋の会話が聞こえたんだ。『あのコーンは、一滴規定ワンドロップルールに沿って分配する』と」


「なんだと!!」


車座になった男たちから、一斉に声が上がった。


「一滴規定」。それは、19世紀後半のアメリカで、奴隷解放後に白人と黒人の混血であっても、一滴でも黒人の血を引いていれば黒人とみなす、という規定で、1964年に廃止されるまで黒人を苦しめたジム・クロウ法へと繋がった。もちろん、差別的な扱いで使われていた規定だ。


しかし、この国では、欧米の商社から派遣されてきた白人は、暗黙の了解として、白人同士の間ではこの規定を使用していた。黒人から搾取することは罪ではない、という考え方は、もちろん黒人が受け入れることはないし、その実態がオープンになれば社会的な制裁も受けることになるだろう。


だが、内戦が終わって間もないこの国では、黒人の足元はまだ十分に固まっておらず、その理不尽な規定を正面切って断罪すれば、経済的、そして暴力的報復が待っていた。何を言われても、事実上、泣き寝入りするしかないのが現状だった。


しかし――


今、世界は深刻な食糧危機の状態に陥っている。先日、アメリカは植物との戦争状態というバカげた宣言をしたが、失笑することなどできない。その戦争は、明らかに自分たちも巻き込まれているのだから。


僅かに配給される食糧は、部族全員を支える量にはとても足りていない。もともと慢性的な飢餓が蔓延していた地域でもある。このままでは老人、子どもなど弱いものから死んでいくことになるだろう。


そして、「一滴規定に従って食糧を分配する」という言葉は、ソロモンたちには分配しないと宣言しているのに等しい。ただでさえ、食糧は足りていないのだ。目の前にある隠された食糧が白人ためのだけに使われ、そして自分たちはひっそりと飢餓で死んでいく――そんなことを許すべきではないし、許されるべきでもない。


「我々は蛮人ではない。平等な食糧配分ならば座して死を待つのも仕方なし、と思ってはいたが……だが、ソロモンが言うとおりだ。我々は搾取されるだけの存在ではない」


長兄ムルの言葉に、車座になった全員が頷く。


「具体的な計画だが――」


そして、この日、アフリカの小国において、小さな火種が生まれた。




▼20XX年11月7日 南アフリカ共和国、クバーグ原子力発電所



三日前の早朝に、東アフリカのある部族の村から始まった暴動は、瞬く間に南に向けて広がっていった。


もともと、政情不安が根強く、さらに今年は、過去100年でもっとも最悪と言われる干ばつに襲われていた。国際NGOの活発な活動により、最悪の事態は免れてきたが、それでも約500万人をこえる子どもたちが深刻な栄養不足に陥る状況の中、燃え上がった民衆の不満を鎮火させるすべを各国政府は持っていなかった。


そして――


南アフリカ共和国、ケープタウン近郊に位置するクバーグ原子力発電所。


アフリカ大陸で唯一、稼働中の原子力発電所だ。1980年代に操業を開始した加圧水型原子炉は、一次冷却水と二次冷却水を分離させることで、放射性物質を一時冷却系に閉じ込めることができる。


沸騰水型原子炉とは違い、タービン建屋を遮蔽する必要がなく、複雑な構造による保守性の難易度は高いものの、その分、安全性は高いとされる原子炉だ。


その原発が襲撃を受けていた。


タタタン、タタタン


乾いた3連射の銃声が響き渡る。南アフリカ国軍で使われる制式アサルトライフル、ベクターR4から派生したベクターLM6は、原発の守備隊が使用するセミオート専用型だ。


2基の原子炉建屋と併設するように建てられた管理棟の建物は、見晴らしがよい更地に建てられている。その建物を背に、10名の守備隊のメンバーが襲撃者を迎え撃っていた。


襲撃者は、イスラム国のテロ組織。暴動が活発化し、その制圧に軍が駆り出されたタイミングを見計らって、原発の占拠に乗り出したのだ。使用するのは、イラク軍から奪取した米国製の自動小銃M16。


「右だ、右に回れ!」


守備隊隊長が、小銃を振り回して隊員に指示を出す。


「10時の方向、敵数8です!」


「2時の方向からも来ます!敵数10!」


「くそっ!数が多い」


襲撃者の数は、守備隊の5倍はいるだろう。軍と警察の両方に応援を要請したが、一般装備の警察ではM16に太刀打ちはできない。警察の特殊部隊が来るより、軍の方が早いだろうが、最寄りの基地からヘリを使っても実質15分はかかるだろう。


敵の火力が分からないから、あまり得策とはいえないが、隊長はいったん、管理棟内へ避難、軍がくるまで籠城することを決断した。建屋は、万一の放射能漏れへの対策もあって、中に60%の炭素量を含む特殊鋼材を挟んだ1,200ミリのコンクリートで覆われている。対戦車砲程度なら数発が直撃しても穴が開くことはない。管理棟も同様だ。


「退避だ!全員、建物内に入れ!ハリー!ハリーアップ!」


隊長の指示に、遮蔽物に身を隠していた隊員たちが建物内に駆け込む。全員の退避を確認後、隊長は入り口のシャッターを降ろした。シャッターも三重になった特別製の合金で作られている。すぐに破られることはないだろう。


「屋上だ!屋上に急げ!」


守備隊全員で屋上に向かい、迎撃の準備を行う。小火器しか手元にないため、敵の完全制圧は困難だし、この管理棟も原子炉建屋もすぐに包囲される。だが、軍がくるまでの時間は稼げるだろう。


「隊長!0時の方向、ドローンです!」


周囲の警戒をしていた部下からの報告に空を見上げると、遠くに3機のドローンが見えた。高度は300メートル、距離は500メートル。ジグザクに飛来しているのは狙撃を回避するためだ。時速は目視で30キロぐらいか。約1分で到着する。ミリタリー品の双眼鏡を覗くと、何かの箱を抱えているのが見えた。おそらく爆弾だ。C4プラスチック爆弾だろう。


くそっ!


隊長は小さく舌打ちした。距離はまだしも高度がある。ベクターLM6の有効射程は300メートル。手元まで引き付けるしかない。ただ、ドローン自体は速くはないが射線は見上げる形になり射撃の精度はどうしても下がる。


「アルファ1、2、3は狙撃準備!ベータ1と2はバックアップ。俺も入る!残りは威嚇射撃を行え!わずかな時間で良いから稼ぐんだ!」


3名の部下に狙撃を指示、東の外壁へと向かう。そして、残りのメンバーもそれぞれのポジションに移動した。


「よし、自分のタイミングで狙撃を開始しろ!」


距離は、すでに100メートルを切っている。高さは300メートル。射程は、ギリギリ届くかどうかだ。


タタタン、タタタン、タタタン、タタタン

タン、タン、タン、タン、タン、タン


アルファチームが3連射で射撃を開始。ベータチームと隊長は単発での射撃を行い、二つの射撃音がリズムを奏でる。そしてドローンは、射線を避けるように、高度を上げ、三方向に分かれた。狙いは右側の原子炉建屋だ。


「全員、3時のドローンに集中だ!」


一機でも落としたい。隊長は、先頭のドローンに集中攻撃を指示した。


タタタン、タタタン、タタタン、タタタン

タン、タン、タン、タン、タン、タン


「よしっ!」


上手く射線に乗ってくれたのだろう、先頭のドローンが急に右側に傾き、そのまま落下する。


「次だ!」


残りの2機は、すでに真上の位置だ。見上げる形で射撃を続ける。下に抜ける反動が肩を痛めるが構ってはいられない。数秒ももたずに空になるマガジン弾倉を次々と取り換えながら射撃を続ける。


2機のドローンは、右と左から落下するように速度を速めた。隊長も3連射に切り替え、ドローンに合わせて射線を下げていくが、すり抜けるように落ちてくる。


まずい!


喉の奥で小さな悲鳴が上がり、ドローンが管理棟を掠めて、原子炉建屋に向かう。リモート起動の信管なのだろう、建屋にぶつかる直前で2つのC4が間をおかずに続けて爆発した。


「伏せろ!!」


ドカーーーン!ドカーーーン!


全員が伏せる中、衝撃波が、管理棟を揺らして、毒性の強いエチレングリコールジニトラートを含んだ粉塵が舞い上がる。爆音で耳が痛い。


やがて……粉塵が風に散らされるのを確認してから隊長は立ち上がると、屋上の外壁に向かい、原子炉建屋を見下ろした。


大丈夫だったか……


ほぼ、同じ個所で爆発したのだろう、原子炉建屋の壁は数メートル四方にわたって大きく崩れてはいるが穴は開いていない。


バラバラバラバラバラ……


ヘリの音に北の空を見上げると、10機ほどの戦闘ヘリの姿があった。AH-2ローイファルクだ。70mmロケット弾が発射され、20mm機関砲が火を噴く。射撃音と破壊音に混じって、人の悲鳴が聞こえてきた。建物を包囲しようとしていた襲撃者が襲われているのだろう。


さらに戦闘ヘリの向こうからは、SA321が飛んでくるのが見える。フランス、シュド・アビアシオン社製の大型輸送ヘリコプターだ。


隊長は戦闘服の埃をパンパンと払った。襲撃は防げなかったが、なんとか発電所が占拠されるのは防ぐことができた。建物にも大きな被害はない。軍が来たからには、襲撃者の制圧は時間の問題だ。


点呼を行い、全員の部下の無事を確認した隊長は、数名の部下に屋上からの警戒を指示すると、残りの部下を引き連れ、軍を迎えるために階段へと向かった。


今日は、ここに泊まりだな……


責任者の仕事は全うしなければならない。これからの長い1日を思い、隊長は小さなため息をついた。



◆◇◆◇



ドローンの爆発は、原子炉建屋には致命的な損傷を与えることはなかった。


だが……


タイミングをずらした2回の爆発は原子炉建屋とつながる施設に共振のダメージを与え、熱交換器と復水器の中を通るそれぞれのパイプに、長さ20センチほどの小さな罅を入れることとなった。


沸点を300度に上げるために常に高圧の状態にあった一次冷却水は、熱交換器内を通るパイプの罅から、わずかな量の水を二次冷却水の軽水の中に滲ませていた。原子炉内に触れた放射性物質を含んだ水を……


二次冷却水は、一次冷却水の熱を受けることで蒸気を発生、蒸気タービンへ蒸気を送り発電を行う。これが、加水型原子炉の発電の仕組みとなる。


そしてタービンを回し終えた蒸気は、復水器の中で海水の中を通り、冷やされて水に戻るのだが、復水器内を通るパイプの罅も、熱交換器と同様に放射性物質を含んだ水を、海水の中にわずかに浸透させた。


海水は放水口で、放射性物質の検知を行っていたが、極微量だったため、放射性物質の漏洩を報知したのは襲撃事件から一週間後だった。



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