1億円の消失と相続
第3話 消えた1億円と現れた美女
「はっ? 1億円がなくなった?」
朝、
「ちょっと待て、状況を、調べてる……はっ、えっ、マジで? ほんとに
短髪で
シャツの脇や背がすでに大きくぬれている。
「え、いえ、え、は、きのう、残業、してるときに社長から、『振り込み手続きお願い。ほかの役員にはもう話通してあるから。振り込みの承認もおれがするからさ』って言われたんで、え、いや、それで、はい……」
とハンカチで大量に流れる汗をぬぐいながらこたえた。
髪をあらあらしくかきむしる。
「そうか……あいつ、社長ならまあやりそうだ。大声出して……わるかった」
「金額合ってるのか、何度も、確認は、したんですけどぉ……」
半泣きの
はたしてうすっぺらい紙が1枚置いてあった。
<ダイキとコスケへ 金増やしてもどってくるから期待してろよ!!!>
ダイキというのは、
もともとは大学の同期である
「あっ、のっ、大バカやろうがぁぁぁぁ!!!」
ごく簡潔なそのメモを目にした
「金増やして、じゃねぇよどうするつもりだよ! 支払い月末だろ!? よりにもよって月末に持っていくんじゃね、えっ、今月の払いっていくらぐらい? いやいくらだろうと絶対足んねぇよな」
受けとった紙を破らんばかりにワナワナと握りしめている
「給与、社会保険料、銀行への借金の返済、あと大きいのは外注さんへの支払い。こまごましたのもあるけど、ツイドリさんが大きい」
「うち、月末に集中させてるもんな……全部やばいけど、よりにもよってツイドリさんへの支払日か……」
ツイドリさんというのは、「株式会社ツインドリル」という協力会社のことだ。
「いくら、足んないの」
「9,150万円」
「つまりあのバカが持っていった1億円ってことだねぇ! いや、マジで、マジでどうするこれ。ツイドリさん単体でも6,000万円? 会社つぶれんじゃねぇのこれ……」
「社長に連絡してみた?」
「
「あそこは、社長同士のつながりがものすごく濃くて、普段ふたりがどういうやりとりしてるかもわからないんだよね。もちろん最大限
「銀行から借りるのは?」
「審査にも入金にも時間かかるから5日じゃ確実に間に合わない。それに、このあいだ『あと2億円あればなー』って
「あと2億……あーことあるごとに『いまが大々的に広告打って攻めるときだろ!』って言ってたな……。おれとおまえはタイミングじゃないって反対してて、そうか、それも、あんのかな。……出資者を探すのは、どうだ?」
「それも時間の問題があるし、まあ銀行よりは可能性あるかもだけど、もともと社長が外部からの出資に否定的だったからね。『上場したいわけじゃない』ってよく言ってたし。それにそういう案件を取ってこれる可能性があるのは社長だけど、自分と
「いや……ムリだろうな……」
社長の
「おれにも株を買わせてくれないかって言われてさー」といった経営者の集まる
技術関係を担う
「……どうした」
「いや、こういうときダメな理由は簡単に浮かぶのに、肝心な解決策のほうがなにも浮かばない自分が、情けないなって」
「まあ、それが、おれたち3人の役割分担だったろ。
「信じたい。信じたいところだけど……」
ふたりでこれまでの
「さすがにこれを破ることはしないだろう」と信頼した局面でも、平気で「ごめーんダメだった☆」と舌を出して詫びるようなことが一度や二度ならずあったため、もう
「戻ってくる可能性、五分五分ってところかな……」
「だよな……」
「最悪の事態は、考えておくべきだと思う」
と
ふたりで
「に、
「Oh!! アナタがザコスケね~!」
と陽気な歓声をあげつつ入ってきた、パイナップルのように頂点で髪を結ぶスラッとした長身の美女にいきなり抱きつかれ、
あ、胸が、胸があたっている。
こんなところを
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