第9話 トリプルギョウザ定食は運命の強制力(中吉)

昔は学生時代の延長で良く自炊をしていたが、いつの間にか外食が増えた。


今の職場はわりとホワイト企業なので残業は少ない。

それでも習慣が途絶えるともうやる気ゼロ。


よく仕事帰りに立ち寄るのは家と駅の中間にある古い中華料理屋で休みの日もここで食べることが多い。


「今日はトリプルギョウザ定食の気分だな」


ちなみにトリプルギョウザとは、某有名チェーンのダブルギョウザ定食を参考に、3倍の皿分のギョウザだからとネーミングした安直なものであるんだとか。


「トリプルギョウザ定食とビンビール頼む」


「はーい、トリプルギョーザとビールっすねー」


謎だ。

今日は連休初日で職場から遠く離れた自宅近くのはずなのにどうして後輩がいる?


「ところで後輩」


「わかるっすよ先輩はエプロン姿のあたしに惚れ直したんすね~♪」


「いやもともと惚れてないから惚れ直しようがない。なんでここにいる」


事情を聴くと、なんでもこの店は彼女のもとバイト先で、今日は病欠したバイト学生の代わりを頼まれたそうだ。


「先輩さえ良ければ連休中はあたしの愛の手料理ごちそうするっすよ。お金取るけど」


「料理作ってるのはこの店の親父さんだろ」


「残念でした~♪ 今日の料理の半分はあたしの手作りっすよ~♪」


「このトリプルギョウザもか?」


「もちろんっす♪ たっぷり愛情を込めたっすよ~♪」


店主のツッコミが入り、すぐに後輩がやったのはギョウザを包むところだけだと判明した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る