第5話 激辛カレー(中吉)

 午前中の会議も終わって職場はお昼休みになった。


「憎い……会議中に休憩スペースでカレーを喰ってたやつが憎い」


 会議の終盤からただよってきたカレーの匂いに参加者の誰もがそわそわしていた。


「先輩、こうなったらカレー食べに行くしかないっす!」


 先週から自分が面倒を見ることになった新卒の後輩女子の提案に反対する理由はなかった。


「よし、昼メシはカレーに決まりだ!」


「おーっ!」


 と二人で意気込んだところまでは良かった。


「先輩、これおいしいけど辛くてやばいっす!」


「まったくだ! すいませーんラッシーふたつ追加お願いしまーす!」


 迷い込んだのはいつのまにか会社近くに出来ていた知らない店だった。


 辛さ2倍カレーを注文したはずが手違いで20倍カレー二人前が届いてしまった。


 まずかったなら、注文ミスを理由に食べ残して作り直させた。


 でも、おいしい。その上で辛いのだからここは食べるしかない。


 食い物に対してのルールは後輩も同じだったようだ。


「ふい~先輩に強引に誘われたらめちゃくちゃにされて大変だったっす♪」


 汗だくでそう語った彼女のおかげであらぬ誤解を受けた自分は上司への言い訳に苦労した。

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