第4話 辣子鶏の洗礼(小吉)
転職して半年ほどで仕事にも慣れてきたが自炊をする余力が無くなった。
そういうわけで今夜も食事は職場1階にある中華料理屋で先輩や同僚たちと一緒。
「このトンポーローは皮つきの豚肉を使ってる本物の味だ」
などと大昔のグルメ漫画風のセリフを言いながらお酒も一杯。
紹興酒を炭酸で割った上海ハイボールなる名称のサワーがうまい。
「後輩くん飲んでる~?」
ビールの大ジョッキ片手に先輩の目崎さんが寄ってきた。
先輩は美人だなあ。
「はいはい、お世辞言われてもボーナスの査定するのは私じゃないわよ」
あれ、もしかして今の実際に声に出してたのか?
「ちょっと飲みすぎたみたいだし……そろそろアレ、いっちゃおうか」
先輩社員たちの歓声が上がり厨房から大皿が運ばれてくる。
「豚の丸焼き!?」
すごい……三国志とかの中国歴史ものでしか見たことない奴だ!
「それは前座。新人のみんなはい注目! これがここの名物、
続いて運ばれてきた大皿には無数の赤唐辛子と鶏肉が盛られていた。
なによりもこの香り……間違いない。
昔、北池袋の中華街で食べたやばい奴と同じだ!
「ちょっと腹の調子が悪くなりそうな予感がするので早退を」
「後輩くん、好き嫌いはダメよ。食べてくれないと先輩、泣いちゃうわあ」
泣きたいのはこっちだ!
ええい! こうなったら喰ってやる!
「あはははー♪ 食べてる食べてる♪ すごいわねー♪」
こうして自分を含む新人の社員たちは過激な激辛中華という洗礼を受けた。
不幸中の幸いだったのは、激辛でも味は最高だったこと。
意外なことにお腹の調子は悪くならなかった。中国4000年の神秘か。
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