Chapter_4 アルファルドとエンド
一触即発の雰囲気が宇宙に流れる。
「僕らに話とは何だ?」
沈黙を破ったのはエンドだった。 イルトとエアが隙を作らないようにチラリと横を見ると、イルト達以上に警戒の威圧を放つギュグエースがいた。 構えは臨戦態勢に入っている。
「……まさかエンド以外にもフィロソフィアスを使う奴がいたとはな」
「……僕達の、事か?」
イルトが警戒しながら無線の声に応じる。
「そうだ。 さっきのアンドロイドと少女だろう? 世間知らずが見て取れる。 経験の浅さがわかる。
だから、盗聴器もつけられる」
「何っ!?」
イルトは焦って盗聴器を探した。
(タイミング的にアイガイオンに付けられる筈はないエアに付けたとしては口ぶり的におかしい、僕だ! どこに!?)
自分の体を見渡すイルト。
「手首のそれじゃないですか!?」
エアの指摘で手首をよく見ると作業着の裾に小さな針のようなものが刺さっている。
「くっ!」
イルトは直ぐに抜いて砕く。
「これから何処へ行くのか聞かせてもらった。 その上で話がある。
俺は、
「なんだと!? 誰が……」
イルトが啖呵を切ろうとした時、エンドが静止する。
「待ってくれ、彼は宇宙海賊きっての実力者だ、荒事はしたくない……」
「そ、そうなんですか……? でも……」
エンドの言葉があってもイルトは収まりがつかなかった。 エアを貶した宇宙海賊のボスというのもあるが、盗聴器を付けられていたのだ。 そう簡単に信じられるものではない。
「……ここで互いに立ち会っていても話は進まない。 俺達の船に乗れ。 詳細はそこで話す」
そう言うと無線が切られ、ガイドビーコンの光るタラップが船の胴から垂らされた。
三人はしばし悩んだが、結局船に乗る事にした。 イルトは最後まで信用できないと渋っていたが、エンドに熱心に説得され、決め手にエアが銀河路図という言葉に興味を持ち船に乗る方に着いたので決定がされた。
アイガイオンとギュグエースは格納庫に置いていく。 ふと周囲を見ると海賊仕様の武装スペースマシンが数機あった。
その気になれば一戦構えて自分達を捕まえる事もできるかもしれない戦力があった。
エンドは船内を案内されながら気を引き締める。 いざとなればエアを守って脱出する。 その覚悟をしていた。
船長室に案内される一行。 一室はキャプテン・アルファルドとその仲間であろう者達が集まり、ガラス越しの宇宙を前に立っていた。
「こいつらは虹の蛇の古株、俺の
「よお久しぶりだなエンドそしてアンタらがあの白いフィロソフィアスの主人かいやあ良いマシンだよなアレはもし良ければぜひオイラに解析させてもらいたいんだが!」
早口でイルトとエアに問い詰める、小柄でひょうきんなカウボーイハットの人間の男。
「そいつは
「よろしく!」
「そして……」
鋼汽は大袈裟にもう一人の仲間へ手を向ける。
「私はヨハネ。 ユルルングル号のコントロールを担当しています。 あなたと同じアンドロイドですね」
聞こえてきた音声は女性タイプのものだったが、イルトと比べると無機質で、パイロットスーツの様なアンドロイド独自のボディが晒されている事からイルトとは別系統のアンドロイドである事がわかる。
「さて、話とは何だ?」
エンドが会話を切り出す。
瞬間、エンドはイルトとエアにウインクをして合図する。 どうやら顔見知りの自分が話を進めていくというつもりらしい。 イルトとエアは意を汲み、互いに手を握る。
「先程、少女達に厄介をかけた奴らがいたろう。 気になって改めて身を洗った所、宇宙政府からのスパイだった。
大方、宇宙海賊の評判を貶める為と宇宙海賊になったから何をしてもいいという気持ちの拡大があったのだろう。 改めてあんな奴らを仲間にしてしまった故の、俺の不手際をここで詫びる」
「お、おう……」
深々と頭を下げるキャプテン・アルファルド。 意外だった潔さにイルトは少し驚いた。
「それと僕達の手を借りたいのと何の関係がある?」
エンドが言葉を放ち、アルファルドは応えるように顔を上げる。
「ただでさえ外銀河怪獣の活発化で浮き足立つ世の中だ。 宇宙政府は権力を拡大しようと血眼になっている。
そんな中、宇宙海賊は大きな標的になっている。 取り締まる事で力を顕示しようとしているのだ。 それに対して宇宙海賊は連合を結成し事態を乗り越えようとしている」
「……お前は、連まないのだろうな」
「そうだ。 俺達は自由だ。 誰にも属さない。 俺達の旗を掲げ、俺達の進みたい道を進む。 連む奴らは好きにすれば良い。 それはお前も知っているだろう……」
アルファルドとエンド、鋼汽とヨハネ達の間に少し懐かしさを混ぜた緊迫感が漂った。 四人は揃って宇宙を見る。
宇宙海賊虹の蛇とエンドの戦いの日々が、脳裏をよぎった。
『僕はお前達を認めない……自分のエゴだけで生きているお前達を!』
『エゴではない! これは俺達の信念、俺達の旗だ!』
アルファルドとの出会いの思い出。 互いに若く、譲れない信念の為に戦った記憶。
『お前に何がわかる! 自由に、無責任に生きている貴様に、僕の背負っている責任がわかるものか!』
『背負うものなら、オイラにもあんだよ……オイラ達はユルルングル号と自由じゃない全ての野郎の為に星を渡る! それが整備長としての信念だ!』
鋼汽を見直した記憶。 宇宙海賊の信念を理解した思い出。
『エンドさん。 命とは、何ですか? 私にも、ありますか?』
『ヨハネ君が人形だなんて、僕達が言わせない……!』
ヨハネと、宇宙海賊と通じ合えた記憶。 互いに許せない者と出会い、共闘した思い出。
『これが宇宙海賊の、虹の蛇の信念だ! 俺達は俺達の自由を生きる!』
『自由を生きる素晴らしさ……そうだ、それがわかるから、侵害するきさまらは許せない!』
信念を確立した記憶。 それぞれの生きる、戦う理由が固まった思い出。
「それが僕達の力を借りたいのと、何が関係しているんだ?」
アルファルドは目を少し伏せ、気を直してからイルトを見据え言った。
「俺達と共に宇宙海賊連合の会議に出て欲しい。 護衛を頼みたい」
「何!?」
イルトとエアが驚き大声を出す。
「本当はエンドだけに頼むつもりだったが、お前達もフィロソフィアス乗りだろう。 力を借りたい。 報酬として銀河路図を貸す」
「……エンドさん、その銀河路図って何なんですか?」
エアが恐る恐る声を出す。
「かつて、宇宙政府が発足して間もない頃。 宇宙政府の創立を記念した銀河系横断鉄道がこの宇宙全体に敷かれる予定だった。 しかし、外銀河怪獣が現れその嵐と炎の脅威で工事は不可能になり、加えて創立に大きな影響を与えていた地球人の種族レベルでの失踪により計画は頓挫し、それと共に宇宙政府の権威も堕ちた。
この宇宙に生きる者が散らばり尽くす前の、最後の地図。 それが正式名称
俺達虹の蛇は、消えた地球、太陽系の謎について探求していた。 そして遂に消えた太陽系が示された銀河路図のオリジナルを手に入れた。 宇宙政府としてもこれの重要さは理解している。 俺達の手から取り戻したいだろう。
宇宙政府を蹴散らしながら地球へ向かっても良いが至難の道になる。
そこでエンド、お前を思い出した。 お前は地球を探していたな。
そこに地球を目指すお前達も揃っていた。 丁度良い、お前達に託そうと思った」
「何故……?」
「お前、胸と頭に地球人の臓器があるだろう?」
「!!??」
率直にハッキリ言い当てられた。 動揺を隠せない。
「直感だ。 俺にも流れている地球人の血の共鳴か、理屈は解らないが確かに感じた。
お前達は旅をしていると言ったな。 なら、見せてやりたい。 この世界の
その上で銀河路図を渡す。 お前達がどんな旅をするのか、見極める」
そこまで言うと、一息つく様にアルファルドは手元のワインを口に運んだ。
変わって鋼汽とヨハネが言葉を紡ぐ。
「地球へ行く事は、地球人の血を継ぐ俺達の夢だった。 しかしこの宇宙に生きる者達の自由を蝕む宇宙政府を野放しにはできない。 俺達が宇宙政府とやりあってる間にお前達には地球に行って、確かめて欲しい。 地球人は生きてるのか、地球は
……その上で、お前達だけの何かを感じ得ればいい」
「結論。 私達の要求は銀河路図を報酬として貸す代わりに、私達と共に宇宙海賊連合会議の場に出て護衛をして頂きたいのです。 その後の流れとしては、私達が宇宙政府の目を引いている間に地球へ向かってください」
イルトとエアは息を飲んだ。 正確にはイルトはアンドロイドなので息はしていないが。
宇宙海賊達の言葉と表情は真剣そのものであった、一言一句の重みが違うのをその眼差しと態度から感じた。
イルトは竦み、エアは困惑する。 状況を進める為か宇宙海賊たちはエンドに視線を移した。
エンドは一瞬俯いた後、顔を凛々しく引き締め直して、一歩、前に出た。
そんなこんなの面合せから数日後。 ユルルングル号は宇宙海賊連合の会議所である惑星シーボーズへ向かっていた。
結論として話はイルト達が承諾する形で纏まった。 地球へ行く道筋ができるのは良い。 それに、キャプテン・アルファルドの言う世界の現在というのがイルトとエアは知りたいと思った。
整然とした応接室よりアイガイオンやギュグエースと近いこの格納庫を拠点とした三人。
作業員達が止めどなく動き、スペースマシンや機械の可動音と独特の匂いのする作業場で昼食休憩を取っていた。 アルファルド達は客扱いをしようとしたが、体を動かしてる方が考えが纏まるとイルト達から頼んだのだった。
イルトとエアが隣り合い、その対面にエンドがいるという位置取り。 宇宙サービスエリアで買っていた茶とパンを手にしている。
「……今さっき、作業員の方々の手伝いしながらキャプテン・アルファルドについて聞いて回ってきましたけど……やっぱり慕われてますね」
そう言いながら髪をかきあげるイルト。 数日間の手伝いが激務だったのか、淡い青い作業着は更に汚れて淡さを失っていた。
「ここ数日間、危険は感じませんでした。 船員の方々も気を引き締めている印象です」
エアはイルトの隣で茶を飲んでいる。 イルトと共にDスターで生活していた時期があるので航行の手伝いも苦ではないが、彼女が持つ独特の雰囲気から姫扱いをされていたのでイルトほど汚れていない。 寧ろイルトがしごかれているのだろう。
「そういえば、エンドさんは宇宙海賊の皆さんと付き合いがあるんですよね……? どんな関係だったのですか?」
ふと、エアが問うた。 イルトもエアもずっと気にしていたが、聞くタイミングを逃していたのだ。
エンドは一呼吸置いて語り出す。
「……前に、僕が白鳥財閥というグループを持っていた事は話したかな……」
「はい」
「確か宇宙サービスエリアでさらっと聞いたような」
「その頃、僕は彼ら宇宙海賊と出会い、衝突の末に和解して一緒にとある敵と戦っていたんだ。 その頃の仲間なんだよ」
「へぇ、とある敵っていうのは?」
それを聞くと、表情の具合がより苦くなってきた。
「あまり話したくない過去なのですか?」
「……話すよ。 良い機会だからね。 聞いて欲しい。 僕の過去と罪、そして悩みを。
僕達の戦いの日々の事を」
エンドはそう言うと姿勢を正し、イルトとエアを見据えた。 その瞳は、アルファルドと似ていた。 戦いを経験した戦士の瞳だった。 凛々しい顔が悲壮な雰囲気に傾いていた。
「敵の名は、宇宙制覇の足掛かりとしてこの銀河統一を目論んだ者達、デスモ帝国だ。
奴らは圧倒的な兵器の質と量、そして他生命体を見下す傲慢さを持っていた。 自分達以外は奴隷か改造して銀河怪獣にする。 自分達以外は存在させてもらっているかのような考えを国民全員が持っていた……」
『これよりこの惑星はデスモ帝国の植民地となる、全ての民は平伏せよ!』
『デスモ帝国人、デスモ系惑星に住んでいる生命体以外は下等種属! デスモ帝国への隷属だけが繁栄の道だ!』
「僕の父も、デスモ帝国人だった。 しかし、父はある日太陽系消滅によって希少種になっていた地球人の生き残りを捕獲した。 そしてその地球人……僕の母に恋をしたんだ。 程なくして母と駆け落ちる事を決意した。 帝国の御神体であったギューゲースをギュグエースに強奪・改造し、当時僕を身籠もっていた母と共に別の惑星系へワープさせた。
その後、僕は育ち母の死をきっかけにデスモ帝国と戦い始めた。 仲間に恵まれ、宇宙海賊と出会い、幾多の戦いを経験した。 そして遂にデスモ帝国を倒した」
「おお!」
「でも、それでこの話は終わりじゃないのでしょう?」
「そう。 ……最後の敵、デスモ帝王は領地としていた星々の全てと融合し、恐るべき力を発揮した。
倒すには、融合した星ごと消滅させるしかなかった。
父の死を犠牲にして、僕はデスモ帝王を消滅させた。
……僕は悪とはいえ、そこに生きている人々を、世界を殺したんだ……」
『やれエンド! これが私の最後の息子への手向けだ!』
『しかしそれでは父さんが、スピリットデスモに取り込まれた全ての星が!』
『取り込まれた時点で彼らの命は消されている! 私の命も、デスモ帝国への反旗を翻した時からお前と母さんのために捨てたものだ! やれえええええええっ!』
『父さん……うわぁぁぁぁぁぁぁっ!』
「デスモ帝国の傲慢は、絶対に許せなかった」
拳を握り、座った姿勢は更に塞ぎ込む。 その一言でデスモ帝国への怒りが感じ取れる。
「しかし財閥を離れ、仲間と離れ一人になった今、改めて思ってしまうんだ。 僕は正しい事をしたのか……。
こうして思い返して未だに迷っている。 こんな僕が、君達と一緒にいて良いのか……」
そう言ってエンドの話は終わった。 誰も言葉が出せなかった。
エンドの過去の覚悟が重たいものである事が、口調の圧から理解できたからだ。 それを慰める事も、叱る事も、今のイルトとエアには人生経験が足りなかった。 アルファルドの言う浅いとは、こういう事だったのかと、イルトは痛感した。
そんな重たい沈黙を、厳格な声が切り裂いた。
「正しいかどうかを決めるのは、これからを生きる俺達だ」
声の方を振り向くと、そこにはキャプテン・アルファルドが立っていた。
「悩んでも悔やんでも過去には戻れない。 俺達が存在できるのは
「アルファルド……」
「丁度俺達と別れた頃にデスモ帝国との決戦をしていたというのは聞いていた。 そこまで思い詰めていたとはな……」
ツカツカとエンドの元へ近づくアルファルド。 服の襟首根っこを掴み上げた。
「俺達は、あの戦いで色んな奴を失った。 お前の母、父、友。 俺の仲間。 それでも俺達は生きていくんだ。 仲間の死んだ過去を、意味のないものにしない為に。
それが、生き残った奴のやるべき事だろう……!」
エンドを掴み睨みつけて凄む。
エンドは圧倒されていたが、暫くすると少し微笑み、スックと立ってアルファルドの手を跳ね除け、シャツを着直して凛々しく目を大きく開いた。
「そうだな……
悩んでいても、正しいかどうかはわからない。
なら今日を生きるしかない、例え罪を背負ったとしても……!」
「フッ……目が戻ったな。 あの頃の、青臭いくらいに活発で凛々しかったエンドに」
「ありがとう、アルファルド」
「礼には及ばん。 それよりこいつらに向き合ってやれ」
アルファルドがそう言うと、イルトとエアはエンドの方を向き直って立っていた。
「イルト君、エア君、僕は……」
言い始めると、イルトは静止するように手を出す。 エンドから聞いた戦いの日々、目の前でのアルファルドとの雰囲気。 それらを理解した上で言いたい事があった。
「僕達は……まだこの宇宙の事を何も知らないんです。
エンドさん達の戦いの事、聞かなきゃあった事すら知らなかったし、そもそも宇宙海賊や宇宙政府の事だってDスターで聞いてた話と全然違う。
「だから、教えてください。 一緒に旅をして。
私達はもっと知りたいんです。 自分達のことも、この世界のことも」
「……イルト君、エア君……」
エンドは頷き、イルトとエアと固い握手をした。 その瞳には、涙が滲んでいた。
「良い目だ。 真実に探し立ち向かおうとする戦いをする者の目をしている」
「アルファルドさん……」
「イルト、エア。 お前達に何かを感じた事、間違いじゃないと信じている。 これからの旅、お前達はお前達の
「「はい!!」」
二人は強く返事した。 その言葉に応えるように、自分の胸に刻み込むように。
「ワープドライブ終了!」
「惑星シーボーズへ到着!」
紆余曲折があり、いよいよ目的地へ着いた宇宙海賊と旅の一行。
しかし、そこに待っていたのは。
「惑星シーボーズが……!?」
眼前に広がったのは既に宇宙海賊と宇宙政府のスペースマシンの戦闘が始まっていた惑星シーボーズであった。 もう戦闘は終盤だろうか。 抵抗していたのであろう宇宙海賊らしき陣営は無惨にも地に伏せ、血と残骸が広がっていた。
ユルルングル号を待っていたのだろう。 必死の抵抗をしたのだろう。 激しい戦闘の後が惑星シーボーズの地と宇宙空間に広がっていた。
ただそれは、もはや一方的な虐殺になっていた。 逃げようとする星の者に艦隊からの掃射が降り、宇宙海賊のスペースマシンは執拗に刺し殺されている。
「やべえなあアルファルドどうする!?」
鋼汽が艦内無線越しに叫ぶ。
アルファルドは声に怒気を入れ、強く叫ぶ。
「俺達宇宙海賊は世界にとって悪党。 弾圧され制圧されるものだ。 理不尽は超えていくものだ。 それにとやかく言う筋合いはない。
しかしこの虐殺模様は看過できない!」
「アルファルド!」「「アルファルドさん!」」
三者の声が響く。
「やりましょう!」
「これがやり過ぎなのくらいわかる! こんなの見せられて黙ってるなんてできねえっすよ!」
エアとイルトが叫ぶ。
「敵は多いが僕らなら勝てる! やろう!」
エンドは冷静に、然し正義の怒りを燃やして叫ぶ。
「解っている……行くぞ! 宇宙政府の部隊を撃退する!」
宇宙政府のスペースマシンが迫る。
対するのは二体のフィロソフィアスと宇宙海賊船ユルルングル号。
多勢に無勢と知らぬ者が見れば言うだろう。 然し、彼らは強かった。 フィロソフィアス・アイガイオンとギュグエースの力もだが、行き過ぎた正義に対する反逆の怒りが心を突き動かしていた。
「狙うな、散らせられれば良い! レーザー砲掃射!」
ユルルングル号が弾幕を張る。 次々と艦隊は撃破され、守衛スペースマシンの攻撃も超力バリアで弾かれる。
ただでさえ強いユルルングル号に、今回は二体のフィロソフィアスがついていた。
「せやあっ!」
ギュグエースが肩の装飾品を抜き、無機物創造機能で変形させて槍に変え敵スペースマシンを薙ぎ倒す。
「まだ来ます、上から数は十!」
アイガイオンが敵スペースマシンをちぎっては投げ、蹴散らしていく。
そんな無双が続くと、やがて宇宙政府の部隊は一塊になった。
「何をする気だ!?」
「高エネルギー反応です!」
「この反応! 奴ら擬似スーパーノヴァ弾を使う気だぜアルファルドォ!」
「如何致しますか?」
「……勿論、迎え撃つ……!!!」
「ならば、アイガイオンはユルルングル号に捕まれ! アルファルド、僕らを次元位置アンカーで留めてくれ! あれをアイガイオンと共にやる!」
「あれか……やってみせろ!」
「あれって何です!?」
「必殺技だ! フィロソフィアス・ハイパーノヴァ! 搭乗者の精神エネルギーを直接重力波動にして放射する! 今の僕らの勢いの付いた意思の力なら、敵の攻撃を塗り潰して打ち勝てる筈だ!」
「!? ……信じます!」
「やろう、イルト!!」
二体のフィロソフィアスがボロボロになった惑星シーボーズを背に、アンカーで固定したユルルングルに捕まりエネルギーをチャージする。
「ぐおおおおおおおっ!」
「わぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「踏ん張れ二人とも! 限界まで溜めて、下半身に力を入れて、気合の塊を胸で押し出す感覚だ!
行くぞおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
同タイミングで宇宙政府部隊の旗艦から擬似スーパーノヴァ弾が発射される! しかし!!!
「アイガイオン!」
「ギュグエース!」
「ハイパーーーッ! ノヴァァァァァァァァァッッッ!!!」
凄まじい光がその宇宙周辺に広がる。 閃光が収まった後、眼前には打ち負けボロボロになった宇宙政府の部隊があった。
「ぜえ……ぜえ……よっしゃあ! 一昨日きやがれ!」
「なんとか……なったんですか……?」
「撤退していく……どうやら何とかなった様だね。 お疲れ様、二人とも」
「へへ……エンドさん」
「ん?」
「これからは俺達も、仲間ですよ。
……肩、貸してくれませんか?」
「……! ああ!!」
(そうだ。 知りたいと言う信念を元に自由に生きろ。 それがお前達の旅になる……)
こうして、惑星シーボーズへの寄り道は終わった。
宇宙海賊虹の蛇は、形だけでも宇宙海賊連合の旗をここに立て、宇宙政府に対立する事を誓う為に数日ほど停泊するらしい。
イルト、エア、エンドは銀河路図を受け取り、その場を後にした。 宇宙海賊達の世界を邪魔してはいけないと思った。
この出会いによって、彼らの意志は強く大きく変わった。 外銀河怪獣や宇宙政府のような理不尽が来ても仲間と強く生き戦う事。 それを旅人の誓いとして立てた。
そうして、三人は地球への旅に向かっていくのだった……。
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