第一章 物騒なプロポーズは突然に①
一人は、三十代半ばと
そしてもう一人は、鎧を
「レド、奥の神殿に例の聖女がいるのだな」
「そのはずでございます」
どうやら隻眼の騎士が主人で、赤髪の騎士が従者らしい。
赤髪の騎士は、隻眼の騎士のことを「ヴォルフ様」と呼んだ。
「神殿には聖なる結界が
「
ヴォルフは従者の提案を最後まで聞かずに
けれど、従者は想定内と言わんばかりの落ち着いた表情で、急いで主人を追いかける
「まったく……。死に急ぎすぎですよ。死ねないというのに」
そう独り言をつぶやくと、従者はやれやれと
● ● ●
(みなさん、こんにちは。私はフェルマータ。なぜ私が泣いているかって? ええ。今日、私は二十歳の誕生日&命日を
だから、手作りのホールケーキをボッチ食いである。もう死ぬんだから、太ったって血糖値が上がったってかまいはしない。かまいはしないのだが──。
「願わくは、この
フェルマータは元守護聖女とは思えぬ乱暴な
守護聖女とは、ナギア王国のゾタ教会に属する女性の最上級神職のことだ。守護神ゾタから
そしてフェルマータは【銀の王子】こと、ケビン・ナギアス王子の守護を務めていた。と同時に、彼にその
つまり、トップオブ勝ち組。女の頂点。次期
だがしかし──。
フェルマータは、ケビンの
フェルマータのことを「僕の
(だから、心の底から【死神】から守りたいと思ったのに)
ナギア王国は、三百年前から魔なる存在【死神】に
呪いの種類は
王国は【死神】と眷属たちとの戦いの中で、武力や
フェルマータは、そんな【死神】に出くわしてしまったのだ。
ちょうど三年前。フェルマータの十七歳の誕生日。ケビンとのお
思い出すことも
紅の
あぁ、これが【死神】かと直感したフェルマータは、必死に彼をボートから
あの直後のケビンは「
事件後、フェルマータは【死神】学者の
王子を救った
そして今は森の聖域に引き
「何が愛しの蜂蜜ちゃんよ……! 愛なんてなかったじゃない」
フェルマータは、
三年間、ずっとずっと
自分を見捨てたケビンを。国を。
あのクズどもを私は許さない。けど、何もできやしない……と。
(神様あんたは悪魔かよ!)
「どうせ同じ呪いを受けるなら、不老不死の呪いがよかった。こんな短い人生、あんまりだわ!」
ケーキをぺろりと平らげ、フェルマータは祭壇の上の
命さえあれば、私はなんだってできるのに──と。
その時だった。
それまで静かだった神殿の
森の動物の足音ではない。
「
フェルマータは、
この森の神殿はフェルマータの聖なる結界でゴリゴリに覆われており、
けれど、足音の主は平然と近づいてきた。
黒い髪。右目を覆う
「貴様が呪われた聖女だな」
低く響く男の声に、フェルマータは
「どうやって神殿に入って来たのよ。結界は?」
「気合いで突破した」
「
「
獣のような
フェルマータが逃げ出すか
「聖女。俺の妻となり、俺の呪いを解き、俺を殺せ」
「へ?」
男の言っていることが理解できず、思わず声が裏返ってしまった。
(何言ってんだこいつ!?)
いろんな意味でヤバい
答えはもちろん決まっている。
フェルマータはぶんぶんと首を大きく横に振ると、「私、死ぬ予定が入っているのでお断りします!」と言い放ち、
(
フェルマータは謎の男から逃げるため、神殿を飛び出し、森の中へと
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます