第一章 聞こえ始めた薬恋歌③
夜風が
代わり
いつもの憎悪が
薬術師は初めて見たが、彼らは
「喜べ、ライラ。名を教えた人間はあんたが初めてだ」
二度と会うこともないだろう少女と、しかしもう一度会ってしまった時。誤って殺してしまわぬよう名を
今夜はひどく静かだ。二度とありえぬと思っていた、もはや思い出すことすら
月が大きく位置を変えた
身体中をこれでもかと
月明かりでも妖人の瞳は夜目が
「ねえ、わたくし今日が誕生日なの。皆が盛大に祝ってくれたわ。おまえも祝ってちょうだい」
レイルは視線を向けず月を見上げている。王女は額にかっと青筋を走らせた。母親である
「命令よ! 口づけて、祝辞を述べなさい!」
王女の首筋にぶら下がっている、
命令を受ければ逆らえない。どれだけ
しかしレイルは、魂石を通した命令以外は決して応じなかった。
「おめでとうございます、マリアンヌ様」
白い
王女はいつも通り、今日あったことを話し始める。
どこの女が
そんな、どうでもいい情報ばかりが膿んでいく。ここには新たに生まれるものなどありはしない。元々あるものが
「アコディー
贈り物についての評価は、レイルにとってどうでもいいことの筆頭だった。どうせその日の気分で評価が変わるのだ。それは彼女が語る物事の全てにおいて言えることだったが。
「でも、全体としては最悪だったわ。お母様はお父様が新しく
急に
「薬術師?」
答えたレイルに王女は驚いた顔を向けたが、すぐに気紛れかと興味を失い、勝手に
「二人とも
額に青筋が走る。その様は悋気に
「みっともなく走りながら
泣いたか。レイルは心の内で笑った。
妖人が奴隷にされていて泣ける人間がどれだけいるだろう。レイルの前でなく、約束通り
今にも泣きだしそうな目元は
信じられないものを見たと、自慢の顔をぽかんと
「おまえ、笑えたの……?」
すぐに
「何よ! わたくしの声が聞こえないというの!」
「さあ、どうする」
「人間は本当に、群れで殺し合うのが好きな生き物だな」
しかし、マリアンヌには
「王女様、お下がりください!」
折り重なって床に
それらを
足が
衛兵達が必死になって
ここはどこより安全な城の
マリアンヌは、幸せでなければならない日なのだ。
「いやぁ!」
転がるように部屋の中へ戻り、薄ら笑いを
「あいつらを殺してぇ!」
悲鳴と共に命じ、震えながら
妖人を所有した際、持ち主は必ず自身を殺さぬよう命じる。だから
息と悲鳴が
扉を
「助けて」
引き
この美しい妖人は、
告げていなかった。
己の魂石を、美しい指が
「俺が、お前の
月光を背負ったしなやかな一礼は、目の肥えた王女が見ても、世界で一番美しかった。
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