第14話 重荷 【仁】【静夏】

【仁】視点

今日から静夏と疑似とは言え恋人となる。

静夏とは高校時代からの友達ではあるが、二人で行動することは殆ど無かった。

雪と付き合う前に一度告白を受けたが断りを入れたが、彼女は「仁君が恋人を作るまではチャンスありだと思ってるから諦めないよ」と言い放った。

高校時代には昼休みによく俺のクラスまで顔を出し、「仁君のご機嫌伺いに参りました!!」と明るく声をかけて来た。

結局は彼女の付き添いで来ていた雪を俺が好きになり雪と付き合い始めたことで、静夏との関係は変わっていった。

恋人の友達て立場となった静夏はではあるが、高校卒業時に「仁君を諦めて次に踏み出す切欠が欲しい」だっただろうか?過去との決別がうまく出来なかった昔の俺を思い出し「いいよ」と答えてしまった。

そして、静夏を抱いた。

後悔しても仕方ないことかもしれない、しかし、今の俺を苦しめる。


「仁君今日からよろしくね!!」

「こちらこそよろしくな。変わらず君付けなんだな」

「え~ジンジンて呼んでいいの?」

「文字増えてるし、そこは呼び捨てで仁で良くない?」

「樹っちにも言われた~好きに言っていいて言ったのに~それにシズーと呼んで欲しいって言ったら「OK!静夏!」て言って呼び捨て・・・酷くない?」

「酷くはないし、俺も静夏で!!」

「仕方ないな~」


他愛のない会話をしながら静夏の様子をうかがう。

機嫌は良さそうではあるが目元に少しクマがあり寝不足なのだろうか?


「最初に話しておきたいことがある」

「う~ん、多分、高校の卒業式の後のこと?」

「よく判ったな」

「今の状況と仁君が真剣な顔で言って来たから多分あのことかな~と思っただけだよ」

「そうか・・・」

「そうだよ・・・心配しなくても誰にも言うつもりはないの」

「口止めしようとしていた俺の事は卑怯に思わないのか?」

「思わないよ~私から誘った訳だし、私も真司とかユッキーとかには絶対バレたくないし・・・」

「すまん」

「謝ることじゃないよ~これは仁君と私だけの秘密ってことで!!」


絶対はないと思っているが、静夏からあのことは話さないだろうと思っていたが、明確に言葉として聞くと安心するものである。

人間はしないと言ってしたり、言わないと言っていってしまったりすることは多々ある。

しかし、静夏の言葉は何故か信用できた。


【静夏】視点

私は最近寝不足だ。

真司の事、仁君の事、樹っちに言われたこと、ユッキーへの負目・・・

考えることが多過ぎて頭がオーバーフローしているのだろう。

仁君と高校の卒業時のことで話した。

言われるまでもなく誰にも言うつもりはない。

『仁君と二人だけの秘密』って私にとってのパワーワードなのだ。

でも最近は少し・・・

真司、ユッキーには絶対知られたくないし、他の人にも勿論知られたくない。


「ところでさ~私も話したいことがあったんだ」

「なんだ?」

「SGを何でしようと思ったの?」

「今は・・・まだ言えない・・・」

「静夏こそ何で乗ってきた?真司とは付き合い始めたばかりで大事な時期だろ?」

「それを提案者が言うかな~」

「それは、すまん・・・でも、断る選択肢はあったぞ?」

「その場のノリ?」

「・・・そうか」


結局、仁君の本当の狙いを聞くことは出来なかった。

私も「その場のノリ?」とか言って誤魔化してしまった。

『あなたの事がまだ好きみたいで諦められなかった』と言えれば良かったのだろうが、『真司への想い』と『仁君からまた断られるだろう』ことが頭に過り言い出せなかった。

私は弱い人間だと今この時痛感している。

大事な思い出の筈が重荷と感じる自分が嫌になる。

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