第13話 石庭にて 【仁】【雪美】
【仁】視点
雪と二人になるのは久しぶりな気がしてしまう。
それだけ今まで一緒に居たことに気が付いた。
「それじゃあ行こうか」
「先ずは龍安寺で石庭観ないとね!!」
「『禅と石庭』だっけ?」
「そうだよ~」
「でも何故に龍安寺?」
「石庭と言えば龍安寺てイメージない?」
「あ~~確かに、俺も石庭って聞かれたら龍安寺答える」
「でしょ~エリザベス女王も絶賛したんだよ~」
「へ~それは凄いのか?」
「凄いと思うよ~ビバ!枯山水!!」
「ビバって古くない?」
「古いかな?」
「まぁいいか~枯山水って何だっけ?」
「水を用いないで岩とか砂とかで世界観を表現する様式美!!」
雪との他愛のない会話が今まで以上に楽しい。
付き合い始めた頃に感じた高揚感も感じるし、付き合いが長くなり生まれる安心感がありそして何より愛おしい。
ただ、SGにより雪を試すようなことをしようとしている罪悪感の様な何かも感じる。
この感情はSG終了と共に消えてなくなるのだろうか?
まだ始まったばかりだというのにこんなに俺は女々しい感情があったのかと最近驚く。
「この庭を一つの世界に見立てて山や川や水の流れを表現する、正に小宇宙なんだよ!!」
「中々の持論だな~」
「庭を作った人は創造主に成ったような全能感を感じたんじゃないかな~」
「ロマンチックだな」
「そそ、そのロマンを皆に自慢したくて自己表現しているのが庭」
「じゃあ、禅とは?」
「難しいね~あくまで私の見解だよ~禅とは自己の開放」
「自己の開放?」
「そそ、禅問答って答えって明確じゃなくて幾つもあり、人それぞれで答え違ったりするよね?」
「そうなん?」
「禅問答って考えるより感じろ的なことが大切らしいんだけど、考えるって色々なことを考慮して答えを出すってことだから何かに囚われているかもしれない。」
「確かに人の意見に左右されるとか?」
「それもあるね~じゃあ感じるって何?て思うと私は直感だと思う」
「直感・・・」
「自分が素直に感じたことかな~でもね、直感って人それぞれで生き方とか立場とか色々なもので変わるんだよね~だから自分の心の中を解放して己を見つめ直す」
「己を見つめ直す・・・」
「でも見つめ直すためには自分を考える必要がある」
「考える?」
「ほら禅問答でしょ?」
雪が言わんとしていることは何となく分かるような気がするが、何と言えばいいのだろう説明できない。
『己を見詰直す』ことは今の俺に一番必要なことなのかもしれない。
【雪美】視点
自分語りをしているようで非常に恥ずかしい。
でも、そんな私の話を合いの手を入れながら聞いてくれる仁を愛おしく感じる。
仁は何かに迷っているのかもしれない。
「己を見詰直す為には考える・・・」と小さく囁き思案している。
昨日までのハイテンションはやはり何かあったのかもしれない。
落ち着いたら教えてくれるだろうからそれまで待つこととした。
「聞いてなかったけど仁のテーマって何?」
「発表会をお楽しみに!!」
「え~私だけテーマ教えてるって恋人的にどうよ?」
「いやいや、自分から叫んでただろ」
「叫んでたね~何かあの時降りて来て叫ばずには居られなかったんだよ!!」
「降りて来たって・・・偶に雪は奇行に走るよな」
「酷いな~インスピレーションが湧いて来てテンションMAXに成っちゃうだけじゃん!」
「付き合い始めた頃は御淑やかな美人だと思ってなのに・・・」
「え~御淑やかでしょ!!フムフム~美人美人!仁ちゃんは分ってるね~」
やっと何時もの仁が戻って来た様で冗談を言い合い二人とも笑顔が絶えない。
仁に悩み顔は似合わない、何時もニコニコと笑ってキラキライケメンスマイルを振り撒いているのがお似合いである。
楽しい時間は過ぎ去り、旅行を終え皆帰途へと着いた。
来週よりパートナー交換、組合せは樹・雪美、仁・静夏、真司・秋穂となる。
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