第10話 皆での旅行2 【猿渡】【工藤】【柴田】
【猿渡】視点
雪と秋穂がじゃれ合っている。
ふと真司が視界に入ると樹・静夏の方を見ている。
多分、静夏のことを見ているのであろう。
真司に対しては負目がある。
付き合い始めたばかりの2人を俺の我儘に巻き込んでしまった。
それに、静夏とは高校卒業時に・・・だが、その事は俺からは絶対に言えない、言える筈がないのだ。
あの時は静夏の勢いに負けてしまったが、今あの行為が毒の様に俺を苦しめる。
バレれば雪すら失う。
「みんな~いくよ~雀食べに!!」
いつの間にか静夏も加わり女性陣で次の目的を決めた様である。
静夏の元気な声を合図に皆で移動し始めた。
それを眺めていると雪が「ほら行くよ~」と声を掛けてきた。
「おう、行こう!!」
元気よく声を返し皆に合流する。
よく『藪蛇』と言うが藪を突いた俺は1匹の蛇だけで済むのだろうか?何匹もの蛇、蛇以上に恐ろしいもの・・・今考えても仕方ない。
みんなの楽しい気分に水を差さない様俺も今を楽しもう。
【工藤】視点
その後、雀の丸焼きを食べ、他の観光名所を巡り宿泊先のホテル戻ってきた。
みんな楽しかった様で先ほどまでの旅の思い出を語り合っている。
勿論、私も楽しかったし、その話の輪に加わっているのだが、1つ気になる点がある。
それは、仁の何時も以上のテンションだ。
仁は失敗したり何か気落ちする出来事があると、逆にテンションを上げてしゃべったり行動する。
イケメン陽キャラでチャラ男の様にも見えるが、頼まれると「まかせろ」と言ってしまったり、周りの空気を読んで行動し、人に気遣う様な全然チャラくない人なのだ。
それに、決めたことは失敗しても良いからと初志貫徹する頑固者でもある。
高校時代に「退かぬ、媚びぬ、省みぬ!!俺に後退はない!あるのは前進勝利のみ!!」とか行き成り言い出したので「何それ」て言ったら「ラ〇ウの名言を組み合わせてみた」とか言い出した。
「裸の王様がそんなこと言ったの?知らないんだけど・・・」と聞き返すと、「いや・・・北斗だよ」と言われ、「あ~昔の漫画ね。何処で読んだの?」と聞くと「親父のコレクション」と言っていたことを思い出した。
その影響下は知らないけれど、何時もポジティブと言えばポジティブだが、今は無理してテンションを上げているのではないか心配だ。
心配しながらもそんな過去の思い出に思い出し笑いをしてニヤついて仁を見ると、仁が声を掛けてきた。
「雪、ニヤニヤしながら何故俺を見てる?」
「今のテンション見てて裸の王様思い出した」
「裸の王様?俺って裸族ではないし騙されてもいないぞ?」
「北斗」
「いや・・・忘れてくれ・・・俺の黒歴史を・・・」
「分ったわ。今は忘れてあげる。それと、少し話せる2人だけで・・・」
疑似恋人の秋穂に確認を取り少し皆と離れ、2人で話すこととなった。
【柴田】視点
仁くん・秋穂が二人っきりで話すとのことでそれぞれ本当の恋人との時間に一時しようと言うことで、樹と私も二人っきりで話すこととなった。
「何だか二人だけで話すの久しぶりだよな」
「そうだね~仁君と二人もそんなに多くないけどね」
「君付けなんだ」
「呼び捨てするのは樹だけ、それだけは譲れないの!!」
「俺は普通に呼び捨てするぞ」
「私の価値観だから強制しないし、好きに呼んで良いと思うよ」
「ゲーム後も定着しそうな気がするけど?」
「それはその時考えればいいし、嫌なら戻せばいいだけじゃない?」
他愛もない会話が久しぶりな感じがして満たされていく。
こんなにも樹を愛おしく思えるのはSGの御陰?
まだ始まったばかりで一巡もしていないのに速く元の関係に戻りたい衝動に駆られる。
そんなことを考えていると樹が仁君とのSGについて聞いてきた。
「それで仁君とはどんな感じかな?」
「揶揄わない!!特に何もないよ~」
「へ~そうなんだ~」
「そっちこそシズーとは如何なの?」
「俺はシズーとか呼ばんぞ・・・まぁ、同盟を持ち掛けられた」
「そう・・なんだ・・・」
私だけ仁君との同盟を隠した形となったことに心がチクリとしてしまった。
今から私も言おうとしたタイミングで、樹は同盟について話し始めた。
「断ったよ」
「断ったんだ・・・」
「内容は静夏のプライベートなことも含むから俺の口からは言えないけど、断った」
私だけ同盟を受けてしまったことに更にチクリとした痛みではない心のざわつきを感じながら樹を見る。
『同盟を持ち掛けられて、しかも受けたことは言えない』と言う考えと、『樹に全てを話してしまう』と言う考えが鬩ぎ合いその場では如何すべきか判断出来なかった。
これは裏切りなのだろうか?GS終了後に樹にこの事を話すと「ゲームだから駆け引きの1つ」と言いそうに感じるが、今は言う事が怖い。
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