第9話 皆での旅行 【海鳥】【葉山】【犬塚】
【海鳥】視点
今日から全員で旅行を計画していた。
SG開始から5日程経過しているが、期間前から計画していたので変更なしで旅行へ来た訳だが、ここで問題となるのが行動時の組合せである。
全員での行動は問題ないが、本当の恋人同士でプランを設計していた部分が問題となった。
「一日二日の問題だし、予定通りので良くない?」
「「「「「賛成!!」」」」」
「算数多数で可決されました!!」
仁の提案に全会一致で可決された。
旅行先は京都である。
俺達の所属するサークルは『歴史研究会』と言う一見真面目で硬そうに聞こえるサークル名であるが、1年に1回の研究発表以外は基本自由と言う緩い活動だ。
しかし、研究内容はガチを求められる。
発表はGW前に行われる。
4年生時は就活で忙しいことから時期が早い段階に設定されているらしい。
1年生は期間的に聞くだけ・質問するだけ、2年生は初めての発表となりある程度の甘さは許される、3・4年生は真剣に挑まないとサークル内でフルボッコにされる為、現地調査の名目でこの時期に旅行して実際の研究テーマを見聞する者も多いらしい。
ご多分に漏れず、我らも現地調査兼春休みの旅行へ来ているのだ。
俺の研究テーマは『仏像と信仰』である。
秋穂は「樹が仏像がテーマなら私も近いモノにするか~」と言って『仏と愛』とか何じゃそりゃテーマにしていた。
他にも『禅と石庭』というテーマを掲げ、「石庭と言えば龍安寺だよね~」と言っている幼馴染もいたな~・・・
テーマから俺や秋穂は何処に行っても問題無いが、他のメンバーの研究テーマから歴史薫る京都に決定した経緯がある。
「それじゃ行こうか、雪美さん、荷物あれば持とうか?」
「真司さんありがとう」
全員行動の時はSG継続とのことで、犬塚・工藤ペアが現地への移動準備で話していたが、お互い下の名前で呼び合っていて皆が驚いていた。
「お!いいね~俺たちも下の名前で呼び合うか!秋穂!!」
「・・・期間中は了承・・・」
秋穂・仁ペアも下の名前呼びで行く事とした様である。
「じゃあ~私達も下の名前呼びでよろしく~!樹っち!!」
「え?文字数増えてるし、樹だけで良くね?」
「え~樹っちてゴロが可愛いじゃん!!」
「それで俺は何て呼べばいいの?」
「え~と・・・シズーで!!」
「OK!静夏!!」
全員が下の名前呼び合うこととなった。
初日は普通に旅行することとなった。
京都と言えば「伏見稲荷」と言うことで先ずは伏見稲荷へ行くこととなった。
「清水寺」「金閣寺」と2名ほど違うことを言った人物もいたが、人により意見が違うのは仕方ない。
伏見稲荷大社、宇迦之御霊大神(うかのみたまのたいしん)が中央に他4柱の神様が祭られている。
長いので宇迦神とするが、この神様は国生みで有名なイザナギ・イザナミの2柱の神がお腹が減って気力が無くなった時に何か食べたいと思ったら生まれた穀物の神で、五穀豊穣の女神として知られる。
豊穣とは特に五穀の中でも重要な稲が成るからイナリらしい、駄洒落か!!
稲荷ってお狐様じゃないの?と思うだろう。
宇迦神はまたの名前を御饌津神(みけつかみ)とも言う。
大昔の関西方面ではキツネをケツネと呼んでいたらしい。
ケツネのネを外しゴロから三狐神(みけつかみ)と字を宛てられることもある。
そんなこんなで宇迦神の使いとして狐が用いられることから稲荷と言えばお狐様なのだ。
また、キツネはネズミを食べる→ネズミが居なくなれば穀物が荒らされない→狐は穀物を守っているとの三段活用から狐単体でも五穀豊穣を言われる。
詳しくはネットでも調べてくれ。
そんな伏見稲荷は千本鳥居が有名で、朱色のトンネルと呼ばれる連続した鳥居が有名である。
連続した朱色の鳥居を潜り抜けることにより、通る→願いが通る→心願成就と謂われている。
皆、何を願い通り抜けているのだろうか?
俺は、旅の安全と研究の完成を願っておこう。
【葉山】視点
「樹っちは何を願ったの?」
「旅の安全と研究の完成?」
「何故に疑問形?」
「特に心願て程の重い願いてことも無いからかな~それで、静夏は何を願ったの?」
「願いは言ったら叶わないんだよ?知らなかった?」
「え?旅は安全じゃなくなり、研究は未完成?」
「樹っち!やっちまったね!!」
「マジか~」と肩を落としてワザと落ち込んだ振りをしてふざけている樹っちを見ながら先ほどの質問の答えを考える。
恋愛成就を願った私は誰の顔を思い描いたのだろうか?
神社とかお参りすると昔から恋愛成就を願う、所謂、恋愛脳である私。
犬っちとの恋愛成就?それとも・・・
最近、樹っちに言われた『二兎追う者は何も得ず』と言う諺を繰り返し繰り返し考えてしまう。
今、私はその二匹の兎を追いかけているのではないか?と・・・
【犬塚】視点
千本鳥居を皆で潜り抜けワイワイとお互いの疑似恋人同士で語り合っている。
心の中で『本来なら静夏と楽しく旅行する青春の1ページが書かれるはずだったのに』など考えながら、つい、静夏の方に目を向けると、一瞬、顔を歪める彼女が目に入った。
ほんの一瞬だったが凄く気になるのは何故だろう。
「ねえ皆、雀の丸焼き食べようよ。」
工藤・・・雪美さんが皆に提案してきた。
まだ下の名前呼びに成れないが、少しずつ慣らしていこうか、SG以降に必要とは思えんが・・・
「え~?イナリ寿司じゃなく?」
「雀の丸焼きが有名らしいよ~」
「何故に雀?」
「キツネに油揚げって結構最近で、大昔はキツネの好物って雀の丸焼きだったから?」
「ホント?」
「知らんけど」
「知らんのかい!!」
「でも有名らしいよ~」
柴田さんと雪美さんがコントの様な掛け合いをしている。
再度、静夏の方を見ると樹と楽しそうに会話している姿が映った。
さっきの一瞬の出来事は俺の見間違いだったのだろう。
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