第7話 同盟と共感 【猿渡】【柴田】
「同盟を組まないか?」
「同盟?何のために?」
猿渡くんは私(秋穂)にそう告げて来た。
「まぁ何となくだが分かるだろ?」
「曖昧な言葉で同盟とか成立するの?明確に何の目的でとするから成立するんじゃないの?」
「なるほど・・・」
「まぁ分かるけど・・・樹と雪美さんについてで合ってるかな?」
「合っていると言えば合ってる。明確に言えば、最終的に今の恋人関係が維持できるようにてところかな」
「それだと私にメリット無いけど、そこはどうなの?同盟にはお互いのメリットが無いと組む意味は無いと思うわ」
「メリットか・・・本当に無いと思ってる?」
「私は裏切らない、樹も裏切らない。関係維持なら問題ないわ」
「裏切りの定義は人それぞれ。雪と樹は幼馴染で俺たちより歴史が長い。」
「だから?」
「雪は俺の勢いに負けて付き合い始めた、樹はどうなの?」
樹は雪美さんに告白しなかったことというより、「何もしなかった」ことに後悔があり執着しているのは何となく分かる。
でも、感情に流されることはあり得るし、樹と私の双方の裏切りの定義とは何か?
私が考え込んで黙っていると、猿渡君はそのまま話を続けた。
「俺の予想だけど、樹は雪のことが好きだった。だけど諦めた。」
その通りである。
直接、樹から聞いた私は知っている。
更に猿渡君は話を続けた。
「疑似と言えど関係が近くなる。単純接触効果て知ってる?」
「接触する機会が多いと好感度が上がるて感じだったかしら?」
「そう、今回のSGは正にそれ」
「猿渡君は何がしたいの?」
「俺は雪の「未練」を知りたい。」
「未練?雪美さんの方から樹の元を離れたんだよ?」
「だからこその未練だと思う。俺が雪に告白しなければ現状は無かった。もし仮に俺と雪が付き合わなかったら雪の横には誰がいたか・・・分かるだろ?」
確かに分かる。
間違いなく樹の横には雪美さんが居て、私と樹の今の関係は無かったと断言できる。
でも、過去に戻ることはできない。
猿渡君にとって藪を突いて蛇を出す行為に何の意味があるのだろうか?
「俺は雪が樹と昔みたいな関係に戻っても、尚、俺を選んでくれる結果が欲しいのかもしれない。」
「今、猿渡君と雪美さんが恋人であることが結果ではないの?」
「雪には未練無く全てを俺に向けて欲しいんだ」
共感できる。
私も『樹はまだ雪美さんのことが好きで、過去を引き摺っていないのか?』との疑念は全く無い訳ではない。
理性で抑え込んで感情に蓋をしているだけではないか?そして、その感情は熟成され蓋を抉じ開けるのではないか?そんなことをふと考えてしまうことはある。
『恋人に自分だけを見て欲しい』と言う誰でも思うであろう感情だが、『幼馴染』というファクターが入ると更にそれは加速し増大する。
「分かったわ。同盟を組みましょう。」
この同盟が良い方・悪い方、何方に傾くかも分からないが、この時、猿渡君との同盟は必要不可欠の様に感じた。
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